八話
カーテン越しの淡い月の光が、瞼を通して映る。
今日は随分、長く寝ていた気がする。私は身を起こして、ドアの方へと足を向けた。
ふと、ドアの向こうに誰かの気配を感じて、身体に緊張の糸を張り巡らせ、警戒する。
まだ、気配は消えない。向こうに悟られないよう、ドアのノブをゆっくりと回す。
隙間が開き、吹き込む風が頬を撫でる。目の前には白い壁が……下か。
「ミケちゃんの……鬼、アクマ」
恨み言を唱えている重症を負ったヨルが居る……良く此処まで死なずに来たものだ。
「ごめんね。ストーカーや覗き対策に罠張ってるから」
「普通、そう言う人は中に入って来ないよぉ」
居るから、罠作っている訳なんだけど。まあ、最近では随分減っている。
――それでも、ヨルは動く余力はありそうだし。少し増やしておくのも良いかな。
「いま、とんでもない事考えたでしょ」
もうちょっと、致命傷になる罠でも良いかもしれない。
と。不意にヨルの方から、花に似た仄かな甘い香りが届いた。昨日の鼻に優しくない香水とは違う。
この子なりの気遣いなのだろう。とは言え、それでも私以外の臭いがあると言うのは、面白くない。
そういえば、昨日からシャワーも浴びていない。水のほうは通っているだろうか。
「ヨル。お風呂入る?」
言って振り向くと、ヨルの目は開かれ、嬉しそうに口元が緩められていた。
「言っとくけど、私は一緒に入らないからね」
途端、ヨルが落胆の表情を見せて肩を落とす。やっぱり、期待してたか。
むぅ。と頬を膨らませながら、険しい顔付きで此方を見つめる。
「そんな顔してもダメ。服は適当に物色して良いから」
結局、渋々といった感じでヨルは風呂場へと歩いていった。
水道は開放されたらしく、しばらくして風呂桶に勢いよく落ちる水音が届く。
私は、肩に落ちてくる赤い糸を後で括った。窓から差す、月の明かりが妙に暗く感じる。
月明かりの下、群れる人ごみの中、二つの影が並び伸びていた。
それは、何の違和感も無いカップルだったろう。乱雑に切られた黒い髪と褐色の肌をした大柄な男と、それの横に離れずに付いてくるセミロングの黒髪を携えた少女。周りのカップルと大差は無かった。
男が肩に担いでいる身の丈ほどの細い布袋も、少女の腰に携えた拳銃も、特に浮いている訳では無い。ただ異質な雰囲気だけは、隠し切れてはいなかった。まるで、草食獣の群れの中にいる肉食獣。無数に生えた苔の中にいる、曼珠沙華といったところであろうか。
鉄の擦れ合う音が辺りに響き、ピタリと二つの影が止まった。
「ちゃんと、言葉の方は覚えていらっしゃってますわね?」
鈴を転がしたような、高飛車な声が人波に広がる。
「もちろん大丈夫ヨ。昨日も『おイセ参り』行ってきたヨ」
それを追う様に、訛りの入った日本語が低く地面を伝う。
声を聞いた少女の表情が渋り、暗闇に軽い溜息が吐き出される。
「イセ参りは、ニホンの心て聞いてるヨ。コレでばっちりやワ 」
確かに、付け焼刃のような伊勢弁が混じって入るが、日本の心とは違うであろう。
少女の表情が一層に曇り、止めていた足の爪先で軽くアスファルトを叩いた。
「なんで標準語を習わないの?」
「これ一番合ってたんヨ。標準語とても難して、辛いヨ」
言いながら、彼は長袋を降ろして、道脇にある花壇の縁に腰を下ろした。
口には、へにゃリと曲がった雑草の茎を咥えている。どうも、色々と曲解して覚えているらしく、服装もノースリーブの服の上に、小さめのジャンパーを羽織り、七分丈の綿パンツを履いている。少女のタンクトップと短く切られたジーパンも異質ではあるのだが。
そう言う意味で、二人は多角方から冷たい視線を浴びせられていた。
この街で、夜間に薄着で歩き回る人間は、一人も居ないと言っても良い。
暑いと言いながらも、しっかりと手首足首まで隠し、人によっては色眼鏡をかけている者も居る。それが流行なのかといえば、そうではない。この街で肌を露出すると言う事は、死へと繋がるものであり、特殊な体質でなければ平気な顔で動き回れはしない。
一般に紫外線とも赤外線とも噂されているが、それも軽度な物で人間に害は無い。
それが分からない為、一部の住人から『虫』と呼ばれる。小さな子供達にも、そう言って厚着をするように促したり、昼間に外に出さぬようにしている。御伽噺のような物。
大人達は、そう考えているのだろう。自分達の身体に異変が起きていると分かっている者は、町の人口の半分にも満たない。下手をすれば、三分の一より少し上くらいだろうか。
艦の良い子供達なら、既に気付いているのである。自分達の内側には、存在してはいけない物が巣食っている。それは一章の親友であり、天敵であると勘付いているのだ。
だが、それでも昼間に外に出るものは少ない。習慣と言うのもあるが。
遊び相手が居ないというのが主な原因であろう。
「しっかし。昼間と違って、人の量が凄いんやネ」
「まあ。それは、そうでしょうね。これが、この街のルールですから」
そう言って、彼女は自販機に硬貨を入れ、ココアの下にあるボタンを押す。
「ちゃんと目的は覚えているかしら? 貴方の出身がばれたら、袋叩きよ」
少女は取り出し口から缶を取り出し、プルタブを開ける。
その音は湯気と共に人ごみへと掻き消えた。
「記録ディスクの強奪ネ? しっかと覚えてるヨ」
「そう。絶対に忘れないでくださいね」
缶の口に息を吹きかけながら、少女は呟く。
そして一口、口で転がすようにココアを含んだ。こくりという音を立て喉が動く
「いつ飲んでも、美味しいわね」
「オタイは甘い水より、普通の水が好きネ。喉、とても潤してくれルよ」
どうして。と、少女の唇が音を紡ぐ。
「アンタ。オタイに最初会った時、一杯の水くれたヨ。あれ、とても美味しかたヨ」
その微かな音に、男も反応し応える。
「ホントにそれだけで、私に付いてきてくれてるのなら、感謝しなければいけませんね」
「嘘ちがう。とても嬉しかタ。だから、一緒に居るヨ」
無表情のまま、言葉を響かせる少女の音を男は無垢な笑みで受け止める。
月の下で、聞こえることのない小さな鉄の音が響きあった。
水音が消え、忙しい足音と共にドアが開かれる。
およそ五分。あまりに速すぎでは無いだろうか、と。私は額に人差し指を置いた。
「カラスの行水……それより早くない?」
「んー。ちゃんと洗ったんだけどね」
そう言ってヨルは頭に乗せているバスタオルで、髪の毛の水分を取っていく。
途中、あの香水の臭いが鼻の前を通り過ぎる。やはり洗いきれていない。私は溜息混じりにヨルの腕を握り、部屋の入り口へと連れて行く。キョトンとした顔が髪の間から覗けた。
「駄目よ。洗い直しするから、こっち」
言った途端、ヨルの顔色が変わる。駄々をこねる子供……ではなく、喜びの表情。大体考えている事は分かる。その目は潤むでもなく、輝きを帯びていて、まるで獲物を見つけたネコの様である。
それを見ないようにしながら、ドアを開け廊下へ出る。今まで意識もしなかったが、香水のキツイ匂いではなく、檜の香りが漂っていた――ああ、そう言えば木造の廊下だったんだ。
鼻歌でも歌いそうな、ヨルの横顔を横目で見ながら、廊下の突き当りを右に曲がり、現われたドアを開け放ち、先ほどまで湯が流れていた部屋へと足を踏み入れる。好い加減に湿り気があり、それに重なり冷め始めた湯の温かみが顔を包み込む。全く、本当に身体を洗ったんだろうか。
私は引き出しからタオルを取り出し、何度か折って細長く帯状にした。
そして、有頂天となっているヨルの目元にそれを押し当てる。微かな悲鳴が上がるが気にしない。
その帯の両端を後で結び、完了。
「みーちゃん。ひどーい。僕が君の裸を見れるのを期待してるとでも思ってるのっ!」
「はいはい。さっさと、服脱ぎなさい」
「胸が小さいからって、気にする事は無いよ! 昔の人は言っていたよ。胸は一人で育つもんじゃあない。二人で育てるものだ、とね!」
手で掴んでいた桶をヨルの顔面に投げつけると、その声は静まった……やっと沈んだか。
さっさと湯船に湯を張り、上着を脱ぐ。布が擦れる音が、自分の耳に届いた。ヨルはまだ再起不能らしく、横で白い目隠しをしたまま横たわっている。まあ、その内起きるとは思うけれど。
それを後に、身に付けている物を全て脱ぎ、大きめのタオルで体全体を覆った。その直後、倒れていたヨルがふらりと立ち上がった。かと思うと、突然その口から嗚咽を漏らし始めた。
「うう。僕は基本的に攻めなのに。生殺しは無いんじゃ」
最後まで聞かず、今度はその頭に新品のシャンプーを投げつけた。うん、コントロール良好。
結局、そのやり取りは数回行われ、数十分の末、ようやくヨルの衣服も剥ぎ取る事に成功した。
少し温くなってしまった湯船にヨルを浸し、シャワーの温度を調整する。
使い過ぎてしまうかもしれないが、この際仕方ない。
「ヨル。洗うから出てきて」
「目隠ししてると、転んじゃいそうだから、外して欲しいな――」
言い終わる前に腕を引っ張り、湯船から引きずり出す。
うーと呻く声と共に水音が聞こえ、小柄な身体が外へと這い出てくる。茶色の髪を通過し、日焼けのしていない、白い肩をを伝い数滴の水が滴り落ちる。細身の身体だから、女だと偽ってもバレる事は無いのだろう。さすがに胸は平らである為、そこを見られれば、男である事が分かってしまうが。
それにしても、日本人としては肌が白い。もしかしたら、クォーターなのかもしれない。
そんなことを思いながら、彼の柔肌をボディーソープを含ませたスポンジで洗い流していく。
前の方は自分で洗ってもらう事にして、香水の匂いがついている髪は手を抜いてはダメだ。
愛用している無香料のシャンプーを手の平に乗せ、水分を含んでいる髪に擦りつけ、泡立てる。
しつこく残る香水の香りは、どれだけ泡を絡ませても取れそうに無いが、あと何度か洗えさえすれば、少しでも落とせるかもしれない。と、溜めておいた桶の湯をヨルの真上から被せる。
小さな悲鳴と抗議の声があがるが、それを無視して二回目のシャンプー。最初よりは匂いが薄まっているが、まだ不快な匂いを帯びている髪を少し乱暴に擦り合わせ、匂いを消していく。
使っていた香水は大した事が無かったらしく、それだけで完全に匂いは無くなってしまった。
そして、泡立った髪に向け、シャワーを浴びせていく。始めこそ抵抗していたヨルも今は気持ち良さそうに、間延びした声を上げながら、熱い湯を全身に浴びていた。
全て洗い終わり、シャワールームから脱衣室へと足を戻す。
「あれ。ミケちゃんは体洗わないんだ?」
「そんなに毎日洗うのも、水道代が勿体無いから」
ふーん。と言う納得したような短い声が聞こえた。
バスタオルで肌の水気を取り、ついで髪を適当に乾かしていく。横では、目隠しをしたままのヨルが遣り辛そうにバスタオルで右腕の水滴を拭っている。早めに服を着てやるとしようかな。
下着に足を通し、笑いを堪えながら、大きめのワイシャツを着てジーパンを履いた。
そして、ヨルの視界を塞いでいる白い布を剥ぎ取ったのだが、その目に映っていたのは困惑。
「あれ? 髪の色、黒になってる」
その事か。普通に染めているだけだから、水で流してしまうと簡単に色が落ちてしまう。
本職の人に染めてもらってもよいのだが、そうなると金が嵩張ってしまい大変だ。
籠から、黒いジャージの上下と男物の下着を取り出して、ヨルに手渡すと無言でそれを身に付けていくが、ジャージに頭を通した所で、はたりと動きを止めて、此方をまじまじと見始める。
「なんで、男物の下着があるの?」
ヨルから、少し睨むような視線が向けられる。
「随分前に住んでたからね。お節介男が」
記憶の端から、ある一人の男の顔が掘り出される。目の前に居る、少年のような顔付きで、いつも笑っている印象しか思い浮かばない。もちろん、締まった表情もするのだろうが、私の記憶には笑っている顔しか掘り起こされないのである。まるで、私の記憶では無いかのような錯覚さえ覚える。
と、そう言う風に思っていてもヨルには伝わらない。
彼は拗ねたように、目を空ろにしながらブツブツと何かを呟いていた。
「ま。過去の事だから、私もそう言う感情は無かったみたいだしね」
そう言った瞬間、ヨルの顔から怪訝な表情は吹き飛び、いつもの少年のような無邪気な笑みが現れる。納得してもらえて、本当に良かった。これから、ずっと睨まれるのはゴメンである。
ヨルが全てを着終わったところで、脱衣室の入り口の戸を開ける。温度が高いためか、そこまで寒さは感じない。欠伸をして、棚の上に置いていたイーグルを手に取る。仕事には必需品、と。
ヨルが私に続き、風呂場から出たところで綺麗な音色の鈴が鳴り響く。誰か、来たのだろうか。
数秒も経たない内にドアを叩く音が。さすがに前のように火器を持ったサラリーマンが立っていると言う事は……あるかもしれない。念のためイーグルの残弾数を数えて、撃鉄を上げておく。
「おーい。居ねえのか? バーカあーほ」
聞き慣れた声が、微かに耳に届いた。居ないと確信したらしく、好き勝手なことを喚き散らしている。どうやら、イーグルの出番が予想以上に早くなったようである。早足で玄関へと向かう。
そんなことも知らない、ドアの向こうの主は未だに罵詈雑言を浴びせている。後ろでは、ヨルが苦笑を漏らしながら様子を伺っている。何度か目か分からないが、またドアが叩かれた。
それを引き金に、私はノブを回してドアを蹴り開ける。妙な悲鳴と共に、目の前にいつもの様に無精髭を生やして、長い髪を後ろで括っている倉谷の姿が現れた。その顔には驚愕の表情が。
だが、それよりも倉谷の後ろ。背後ではなく、もっとずっと後の方……見られてる。
「おー初夜でヤるとは思わなかった。さすがさすが」
「倉谷、どけ」
「恥ずかしがらなくても良いさ。なに、一人前の女になったってだけだ……ろ?」
倉谷の肩を掴み、横へ突き飛ばすと同時に無音の衝撃が足元に突き刺さる。
どうやら、先手は向こうが取ったようである。イーグルを構える前に、二撃目が頬を掠めて壁へと突き刺さる。舌打ちをし、弾が飛んできた方向にイーグルの銃口を向ける。勿論、相手の補足など出来ていない。だが、向こうが見えているなら、もしかしたら警戒して撃つのを止めるかもしれない。
だが、その賭けは三撃目により、無意味なものとなった。今の状況で分かる事は、向こうが此方の状況を把握できていないか。もしくは、此方から狙撃は出来ないと分かっている。と、言う事だけ。
後者なら、最悪な状況である。それだけは、どうしても止して欲しい。
しかし、その微かな希望ですら完全に掻き消える。四撃目は今までより正確に、私の顔を狙ってきた。前方から来る気配を感じて、咄嗟に横に逃げた為、頬を掠めただけで済んだのだが、次は確実に狙ってくるだろう。私が避けられない角度から、避けられないほどの不正確さと速さで。
――そうなる前に。
私はグリップを握り締め、軸足だけに力を篭めて引き金を引いた。普通なら、成人の男でも気を抜けば、膝から崩れそうになる衝撃である。当然、小柄の私の体は衝撃に耐え切れず、軸足を残して反転する。それでも、身体は崩さない。イーグルを握っている右手の甲で、ドアの端を叩いた。
カチリとスイッチが入り、ドアフレームの上から備え付けていた小さな拳銃が落下し、それを左手で受け取る。そして、相手に背を向けたところで、左手の銃の引き金を引いた。銃声が響き渡る。
結果として、その銃弾は当る事は無かった。当然と言えば、当然である。長距離ライフルで狙い撃ちされ、その距離を拳銃で辿る等と言うのは無茶でしか在り得ない。だが、狙撃はそれで終わった。
肩の荷が下りて、ようやく喉の奥から溜め息が吐き出される。
「おーすげ。『ツインバイト』なんて数年ぶりに見たぜ」
「何それ? アンタ達が勝手に付けただけでしょ」
そう言って、一つ弾が減ってしまった拳銃をヨルに投げ渡す。
「早く支度して、行くわよ」
まだ、終わってはいない。今は動いてこないが、息を潜めている。篭城戦はこちらが不利だ。
そう思い、ヨルの手を引っ張り、その場から走り去る。
階段を数段飛ばしで駆け下り、月に見下ろされながら、人の波を掻き分ける。
此処では、まだ見つけられる心配がある。何とかして、大通りまで出なければいけない。
心臓の鼓動が早まり、小刻みに吐き出される息のペースも短くなる。大通りに出ようとした直後、背後から再びあの視線を感じた。どうやら、此処らが戦場になりそうである。あんまり、被害を出したくは無かったのだけれど。今更、言っても仕方ない。私は再びイーグルの撃鉄を上げた。
彼は一息吐き、ライフルの撃鉄を上げた。手馴れてはいないようで、少し銃口が下がっている。
狙っているのは、一つのビル。まさか、テロでもしようというのだろうか。
しかし、その割には連れが少女一人しか居らず。どうも、不自然なのである。
そして、遂に彼の指が思い引き金を引いた。だが、銃声やガラスの割れる音も響いては来ない。
街もいたって平穏で、タクシーの運転手が無銭乗車した女客に文句を良い、乱暴を働く風景が見受けられる。そう、彼が引き金を引いたところで、何も変わりはしなかったのである。
それでも、彼の指はライフルから離れていなかった。それどころか、再び引き金を引く。
また、無音の発砲。勿論、何の変化も無く、彼の表情も変わらない。
そして、先程と全く同じ感覚で三発目。何も起こらない事が分かると、意外と楽しい。
日常で銃を見る事は良くあるが、大体は撃ち終わると悲鳴や血が飛び交うのである。
だが、彼の『シャドウハンティング』は誰も殺してもいないし、血も出ない。そんなことを考えている間に、四発目の銃弾が解き放たれた。銃口はブレず一方向だけを狙い、表情を変えない彼の雰囲気は見ているだけでも酔ってしまいそうである。しかしながら、四発目は平穏に終わらなかった。
何も無い場所から、一発の銃弾が音を立てずに彼が立っている屋上の柵の下に突き刺さる。
思わず、細かい悲鳴を上げてしまった。見つかってしまっただろうか? いや大丈夫。
自分に言い聞かせ、うつ伏せになりながら、その場から立ち去ろうとした。
「日本のネズミ。とても賢い聞いタ。でも、オタイより馬鹿ネ」
振り向く事すら出来ずに、皮が内臓が骨が全て破れていく音が聞こえた。
背中から、胸を大きな板で貫かれたような感覚。喉奥から、鉄の味をした液体が込み上げて来るのが分かった。息が出来なくなり、息を吐こうとすると赤い泡が口の下から零れでる。
胸から突き出ているのは、鉄を平たくして大刀の様にした凶器だった。その刃先を伝うようにして、真紅の綺麗な液体がコンクリートに染みていくのが目に映る。舌が痺れてきた。
「殺したのでは無いでしょうね?」
「そんな事しないヨ。デモ……このままにしておくの、良くないネ」
その会話を最後に、私の意識は完全に切れてしまった。
随分遅くなってしまいましたが、八話更新。
待ってた方。本当に有難うございます。
ゴールデンウィ―クには9連休が頂ける予定なので、その時に挽回していきたいと思います。
どうも、今回も最後まで読んで下さいまして、有難うございます