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五話

 男の乾燥した唇が、グニャと曲がり、下卑た笑い声が店内を包む。

 目を細め、狙いの定まらぬ銃口と焦点を、必死で押さえつける。

「なに、そう恐い顔すんなって。忘れちまったんかい? ほらオレだって、元防衛庁の」

 そういえば、どこかで見た顔である。今まで余裕が無く、心音を押し留めるのが精一杯だったが、ようやく顔を見るだけの落ち着きを取り戻せた。

 徐々に興奮していた脳も冷め、記憶の糸を辿っていく。

 一年、二年、三年前。ようやく、それらしい面影を見つけたが、頭の方が違う気がする。

「へえ。アンタ髪剃ったの? 確か、殺人犯に発砲して殺したんだっけ? <元>長官殿」

 普通、防衛庁がそこまでする事は無いのだが、コイツにいたっては別である。拳銃は常時、腰に下げられ、目が合って逃げようものなら、対空ミサイルの如く追いかける。

 警察より、たちが悪くて粘着質である。昔は良く<世話>になった覚えもある。

 そろそろ、理性の方も回復してきているようである。

「なんだ、覚えてるじゃねぇか。てめぇの両手に縄括るまでは、引退するつもりは無かったんだぜ?」

 それは、どうも。とは言わず、構えていた左手を下ろし、血の流れ出ている右肩を抑える。だが、一度出始めた血は止まることなく、脇水のように溢れ出ている

 手の先から、冷たくなっていくのが分かる。さすがに布で巻くだけじゃ、今回は無理か。

 しかし、その出血に伴い、逆に冷静な思考が一気に蘇る。そうやっている内にも、呼吸の回数が増え、何かが脳の中を蝕んでいる。

 おそらく、発砲した軍人の一人が弾の先に、薄めたアコニチンを溶かして、固めたのだろう。だとすれば、肩の中にある限り、血が止まる事も無いだろうし、呼吸も戻らない。

喉の奥から、息を吐き出して、懐から取り出したリボルバーのシリンダーに、貫通弾を篭め、自分の右肩に押し当てる。あまり、こういう事はしない方なのだが。

 もう、何度目かも数えていないが、また店内に銃の悲鳴が響き渡った――痛い。

 鎖骨が砕けた音がした――痛い。床に二つ、銃弾が転がり落ちる――痛い、痛い!

 悲鳴を押し殺し、抉られた肩の部分に手を当てる。

「ちょ……大――丈夫? 今、厨房で包帯と凍り貰って来るから、待ってて」

 そう言って、ヨルが速やかに正しい対処法を取っていく。

 あとの二人は、展開の速さに付いて行けず、立ち竦んでいるだけ。

 やはり、コイツを持ち帰って正解だったと思う。

「ほう。アイツが新しい相棒か」

「別に、そんなんじゃないわ。ちょっとした、面白い拾い物よ」

 厨房の方が、何やら賑やかになってきている。

もうちょっと、隠密行動が出来たら優秀なんだけど。まあ、そんな文句は言えない。

 私は、血の流れが止まる感覚を感じながら、ゆっくりと瞼を降ろす。

だが、「あいつの事だがな」と、いきなり、話を切り出され、覚醒せざるを得なくなる。

 その低く、調律の合わない音楽を聞き取る為、耳を澄ます。

「米軍と防衛庁が組んで、追い掛け回してやがる。捕まえた者には、ン千万の大金が入るんだとか。どちらにせよ、オレには興味のねぇ事だ。匿うなり何なり、しとけ」

 手放す手もあるがな、と付け加え、その馬鹿でかい口にタバコを咥えた。

「ついでに、それとは別件で。今回の虫騒動の事なんだがね」

「何か知っているの?」

 つい、声が大きくなり、威圧しているかのように、瞳孔も自然と細くなる。

 二年前に行って、そのまま放置してはいたが、あそこは特Aランク危険指定地域と言う訳でもない。蓑虫に規制された人間も、襲ってくる事は無いし、放射線も少ない。

 だが、今日はまるで別物だった。特Aと肩を並べるほどの、危険地域かもしれない。

 自然と出来る物では無いし、できるはずは無い――何故なら。

 何故なら、彼らと私達は<共存>しているのだから。

「政府の裏からの情報だが、どうもチャイニーズの男が黒幕らしい。だが、深入りはすんじゃねえぞ。やけに臭い情報が散乱してる野郎だからな」

 一瞥して、包帯と氷嚢を取って帰って来たヨルを出迎える。

 そして、氷嚢を受け取り、傷口に当てた。ヒヤリとした感触が皮膚を伝う。

 今までと比べて、痛みは軽い。十数秒ほど当てたところで、片手で包帯を巻いていく。

「あ、僕がやるから。休んでて良いよ」

 そう言って、私が巻いている途中の包帯を横取り、慣れた手つきで、私の肩に包帯を巻いていく。

「とりあえず、近づかない方が身の為だな。と、言いたいんだがね。どうも、ここいら周辺を住処にしてるらしくてな。どうだね? うちなら身の安全は保障できるぞ」

「断る」

 即答。そして、向こうに反論の余地を与えぬように畳み掛ける。

「此処のスタイルが、身に染み付いちゃったのよ。銃の不携帯なんて勘弁」

 向こうが、完全に口を閉ざした所で、ヨルの方も処置を終えた。

 随分と手際がいい。何度も自分で手当をしている私から見ても、無駄が無い。

 やはり、この子を連れてきて良かったと思う。

「ああ、そうそう。あの街に行ったんなら、コレ飲んどけ。ちっとは、収まるだろうよ」

 そう言って、青と白い粉が入った、透明な袋が投げられる。鎮痛剤か?

 いや、違う。どちらかと言うと、殺鼠薬のような臭いが袋越しに漂う。

 これ、飲んでも大丈夫なんだろうか。手にとって、鼻に近づける。

 ……今度は塩素の臭い。これは、絶対に有害な薬だ。自分の脳が警鐘を鳴らしている。

 とりあえず封を切り、粉を少し舐めてみる。

 それと同時に、鼻へ刺激臭が届き、胃の中から、先ほど食べたモノが逆流しそうになる。

 涙目になった両目で、渡してきた張本人を睨みつける。

「知らないのか? あの虫、この街にも居るぞ。かなり衰退してるがな。そりゃ、殺虫薬だ。なに、人体には影響ない」

 やっぱり、危険なものじゃないか。

 言葉には出来ず、舌に乗った粉を唾で溶かして、胃に送り込む。

 後味が最悪で、舌が麻痺しているようである。まだ、薬が残っているようで、氷水を受け取り、コップ一杯の水を全て、口を濯ぐ為に使い果たした。だが、いまだに変な味が残っている。いっそのこと、酒を煽ってしまえば収まるだろうか。

 再び、思考が壊れ始めていく。

「此処に居る限りは、成長はしない。だが、特定の地域で成長し、宿主が気付かない間に、肉を食いながら蛹になる。遂には成虫になって、人格が別のものに移り変わる」

 それは、良く知っている。だから、それの起こっていないヨルが珍しくて、接触した。

「ま、そんな事より、肩を治す方が先だ。良い医者を紹介しようか?」

 確かに。右腕の感覚が全く無い上に、血が手の先へ集まり、爆発しそうだ。

 本当に、気持ち悪い。毒は抜けたというのに、呼吸も戻らない。

 ヨルが心配そうに、上から覗き込む。その頬を左手で撫で、微笑む。

 そう言えば、今日は人に触りすぎたかな。左腕も下がり、小さな息が漏れる。

「お願い――するわ。でも、やぶ医者は勘弁」

「居住区内のC区に、病院構えてるから行ってみろ。やぶじゃねぇから、安心しな」

 そう言って、診察券を一枚手渡された。

 せめて、送っていってくれても、良いだろうに。私は重い瞼を閉じた。


途切れ途切れの意識の中、聞きなれない声が響く。

 頭が重く感じ、喉の奥と舌の上が痺れている。ヨルと二人の気配は感じるが、瞼が上がらず、視界には入って来ない。よくシロが、車を貸したものだ。倉谷もいつもなら、帰ってしまうはずである。まあ、あれだけ血を流したのだから、心配されるのは当たり前か。

 ヨルも、よく付き合ってくれている。それにしても、身体が動かし難い。

「大丈夫? 止血はしたから、もう問題は無いわ。あと、右腕の神経を取り替えてるから、動かないでね」

 やはり聞きなれない、だが良く聞くと、少し誰かの声に似ている気がする。

 ――ああ、身体が動かないのは、麻酔を打っているからかな。

 それにしても、<擬似神経>を扱えるとは、対した人である。声からして女性なのに。

 ちなみに擬似神経と言うのは、タンパク質を糸状にした上に、脳の伝達を受け取れるよう、作り上げられたものである。教科書で見た事があるが、なんだか気味が悪かった。

 まるで自分の身体から、心だけが引き抜かれた状態で、見えない手術が行われていく。

 早く解放して欲しい気持ちと、早く直したいという気持ちが、五分五分。

「はい、終わり。代金は後払いでいいから」

 早い。練達の医者でさえ、三時間は掛かる手術を十分も掛からずに終わらせてしまった。

 腕利きの医者どころでは無い。全く、一体幾ら金を取られるのか、分かったもんじゃない。右腕を上に上げてみると、しっかりと動き、違和感も無い。

 目を開き、傷が開いていた部分を診る。しっかりと、人工皮膚が貼られ、元通りである。

 何と言うことだろう。コレだけの手術が出来るなら、巨大な病院の一つでも持てそうだ。

「ミケ。あとで車の修理代を請求するからな。姉貴には礼言っとけよ?」

 シロの声が耳へ届く。やはり、覚えていたのか。さて、どうしたものか。

 ――ん……姉? コイツ、お姉さん居たんだ。

 いや、そうじゃなくて、これだけ凄い腕を姉に持っているのに、なんで黙ってた?

 顔を右に向けると、やはり心配そうに此方を見ているヨルの顔が映る。

 その整った髪を、完全に治った右手でクシャクシャと撫でて、微笑んだ。

 ヨルの方は、片目を瞑りながら擽ったそうにしている。

「私は大丈夫だから。さて、帰りましょうか」

 ん。という短い返事と、小さな笑みで答える。

「あ、この講座の方に適当に、お金入れといてくれたら良いですので。お大事に」

 やけにアバウトな振込み方法だ。

しかし、こっちの方が、逆に言えば振り込む人が、多いのかもしれない。

 馬鹿でかい金を請求されるより、こんな風に請求すれば意外と得意様が増えそうである。

「ありがとう。また、怪我を負ったら、来させて貰うわ」

 簡単に感謝して、ベッドから降りる。

 立ち眩みも無く、気分も良い。どうやら、アレルギーの方も治ったようだ。

 とはいえ、何時間ぶりかに身体を起こしたのだから、脳の方まで覚醒していない。

 自然と小さく欠伸が出て、霞んでいる目の端から、涙が零れる。

 あの薬の苦味は、舌から消え去り、口の中がサッパリして、心地が良い。

 カーテンの向こう側から、光が漏れている所を見ると、どうやら早朝のようだ。

 いつも、夜に行動している私としては、今が眠くなる時なのに。

 どうやら倉谷の方は、既に長椅子の上で眠ってしまったらしく、起きる気配が無い。

 ――まあ、コイツなら居るだけでも、マシな方か。

 そう思い苦笑しながら、再びヨルの方に視線を戻した。さっきは気付かなかったが、手には薬の袋。そう、あの時の凄く苦い薬が掴まれている。

「ヨル……それ」

「ん? あのオジサンが、僕も飲んどけって。甘くて美味しかったよ」

 私だけ、味覚がおかしかったのだろうか。

「あとね。中国マフィアと防衛庁と国会を敵に回すんなら、腕一本無くすくらいの勢いで居ろって、言ってたよ」

 命一つの間違いだろ。さすがに三組織が一斉に、狙ってきたら一瞬で灰に成りそうだ。

 ――とりあえず、喧嘩を売らない限りは、無効も動かないだろうし。

 ふと、室内を見渡す。医療の本や、医者になるための参考書が、ずらりと並べられている。まだ、医者にはなって居ないのか。なんて勿体無い、仕事をしているのだろう。

 中には、非売品の物も他の安物に混じって、陳列されている。

 華やかに飾られた部屋より、こういう雰囲気の方が私は好きだ。

 そうやって居る間にも、時間は過ぎていく。壁に掛かった時計は、既に七時を示していた。少し、長居し過ぎたようである。私は、着せ変えてもらったらしい服の香りを確かめながら、机に置いてあった、自分の荷物を手にとり、ドアの前へと近づいた。

 と、後から声が掛かる。

「女の子なんだから、身体は大事にしなきゃダメよ?」

 なんとも、医者らしい台詞に苦笑する。

「はいはい」

 軽く返事をして、ドアノブを回した。光が差込み、目に当る。

 ん――これだから、朝は苦手だ。しかも、これから働かなければ、いけないというのに。

 目の前に広がっていたのは、見た事もない風景。

 とりあえず、周りの店の看板から見て、私が住んでいるアパートがある地区の、二つ隣くらいであろうか、歩いて帰るには、少し距離がある。バスは……三十分後。

 ――仕方ない、それまで待っていよう。

 ベンチしかないバス停。人通りも無く、閑散としている。

 こんな雰囲気も、好きではあるが、隣に居るヨルが気になって、どうも落ち着かない。

 こういう時は、十分が一時間にも思えてしまう――どうせなら寝てしまおうか。

 道路の向こう側に、自販機が見え、自分の喉が鳴るのが分かった。

 そういえば、昨日の夜から飲み物を一適も、口にしていない。

「ヨル。何か飲みたいものある?」

「あ――ホットチョコ」

「胸焼けするから嫌。もう少し、飲みやすいやつを選んでよ」

 ポケットの中には、硬貨が数枚しか入っておらず、ジュース一本が限界だろう。

 横では、ヨルがムッとした顔で、此方を見ている。

「じゃあ、ミルクココアとか、お汁粉とかもダメ?」

「ダメ。熱くても良いから、味の薄いやつにして。舌が壊れちゃうし」

 そう言うと、ヨルは少し考えてから、紅茶と言う結論に達した。

 紅茶なら、味付けの薄いものなら、普通に喉に通す事が出来るだろうし。

 私はベンチから腰を上げ、自販機の方へ向かう。

 それを見るや、今まで深く腰をおろして、周りを眺めていたヨルも、私に付いてくる。

 周りから見たら、姉妹と思われるだろうか、それとも年の離れた友達か。

 ヨルの方から、微かに甘い匂いが漂う。少し薄めたであろう、香水だろうか。

 こういう、あまり男っぽくないのが、逆に可愛く感じるのかもしれない。

 だが、大人になるまでには、ちゃんと男っぽくした方が良いとは思う。

 そんな事を思って、歩いている内に、自販機へとぶつかる――が、しかし。

「紅茶……ないね」

 しかも、殆どが売り切れて、残っているのは、ココアと汁粉……最悪だ。

「仕方ない、か。ココアで良いわね? バス来るまでに、全部飲んでよね」

 そう言って、ココアの缶の下にあるボタンを押す。ガタリと言う音を立て、下のボックスへと中身が入った缶が一つ、落下した。それを取り出し、ヨルへと渡す。

 手の平に熱い感触が残り、横からはプルタブを開く音と、甘ったるい匂いが漂ってくる。

 コレが苦手で溜まらないんだけど……今は我慢しよう。

 それにしても、よくあんな甘ったるい飲み物が、普通に飲めるものである。

「ん――ミケちゃんも少し飲む?」

 どうやら、その視線を逆に取ったのか、その白い両手で熱い缶を包み、私に差し出す。

「ううん。甘いの苦手だから、ヨルが全部飲んじゃって」

 そう言って、柔らかく拒絶する。

 と、ようやく道の奥の方から、バスが来るのが確認出来た。

 あと、五分もしないうちに、此方に来るだろう。私は、ココアを飲み終わったヨルの右手を掴み、急いで道の反対側へと渡る。

 どんどん近づいてくるエンジン音。予定の時間より、少し早いくらいだ。

「意外と早かったね。ミケちゃん」

「……ええ、そうね」

 名前の呼び方は、もう気にしないことにした。

 目の前でバスが止まり、空気音と共に自動ドアが開く。

 行く方向を確認し、その階段を上る。運転手は無愛想で、挨拶はしない。

 まあ、そう言うことは良くあるので、私は気にしないし、ヨルの方もバスの方に興味がある様で、空いている後の席へと、真っ直ぐ早歩きで移動していた。

 ――そういえば、ヨルの事をあまり聞いていない気がする。

 一度聞いてみようか、そう思いながら、ヨルの座った席に腰を下ろした。

 二度目の空気音。そして、車内が微かに揺れ、四つのタイヤが前へと転がる。

 景色が徐々にではあるが、移り変わる。シロの実家が視界から消え、小さなコンビニが、続いて大きめのデパート。その間に、砂だけの空き地。とても暇な景色だった。

 しかし、ヨルは楽しそうに外を見ながら、鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気を纏っている。

 周りには、学校へ行く男子構成が数人と、スーツを来た撫で肩のサラリーマンだけ。

 それらを乗せ、バスは真っ直ぐ進んで行く。真っ直ぐ、前へ……前へ?

 前方に在ったのは曲がり角、だがバスはスピードを落とさず、尚速度を上げている。

 コレはおかしい。急いで、運転席へと向かい、目を瞑った運転手の肩を揺さぶる。

 だが、帽子が床に落ちただけで、起き様とはしない。いや、もう目覚めはしないだろう。

 後頭部には穴が開き、例の虫が巣食っていた。まだ、成長しきってはいない! 私は装填しなおした、イーグルの銃口を運転手の側頭部に当て、引き金を引く。運転手の頭から、無数の虫が散らばって、床に緑色の絵の具のような液体を零していく。車内がどよめいた。

 その騒ぎには耳を傾けず、運転手の足元を見る。アクセルに足を乗せたまま、膠着しており、退けるのは一苦労である。おそらく、私たちが乗るまでは、虫が操っていたのだろう。いや、その後に居るチャイニーズが。と言うのが、正しいかもしれない。

 とりあえず、サイドブレーキを引き、エンストさせ停めようとする。

 しかし、サイドブレーキも上へと上がらず、また速度をグングン上げていく。

「貴方達、死にたくなかったら、早く窓から飛び降りて! そうすれば、まだ生きてられる可能性が高いわ」

 途端に、車内が慌しくなる。無理も無い、普通に出勤、登校していたのに、こんな妙な事件に巻き込まれたのだから。だが、今はそれすらも振り切ってしまわなければいけない。

 生憎、私もこんな所で死のうとは思わない。精一杯の声を振り絞り、叫ぶ。

 そして、横に居たヨルの手を引っ張り、横の窓ガラスを突き破って、道路へ身を投げる。

 まったく、これで寿命が縮んだよ。勘弁してもらいたい。



仕事が間があったからね。遅くなっちゃったんです。

本当です。

別にネタが出てこなかったって、訳じゃないよ。

本当に。

もう会社なんてやめたい。

嘘です。ごめんなさい

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