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3章 裏切り者

「何のようだ。急ぎの用事じゃなかったら後にしてくれないか?」

 扉を開けて門兵のインテルさんが入ってきた。

「すいません。こちらも隊長が急いで、ギルドマスターを呼んでくるようにと言われています。失礼します」

 パイルクさんはため息をついた。

「わかった。どうした」

「まだ遠いんですが、街の北方面に妙な影が見え始め、マスターの助力がほしいとのことです」

 パイルクさんは、目を細める。

「このタイミングか。最近魔物がでているのと関係があるのか?」

 パイルクさんは顎に軽く手をやり考える。

「分かった行こう。ジクハ」

 しっかりとした呼ばれたジクハさんはすっと立ち上がった。

「街の避難誘導を頼めるか?」

「分かりました。どこに集めますか?」

「まだ規模が分からん、どこでも行けるように中心に集めといてくれ」

「はい!オル君、手伝ってくれるか?」

 ジクハさんはこちらを見た。規模がどの程度のものか分からない。戦力は少しでも多いほうが良いだろう。

「もちろんです」

「オル。ギルドに入ってないのに何度もすまないな。助かる」

 足早にパイルクさんは、インテルさんと北の門に向かった。

「あれ、シルフィさんは?」

 さっきまでこの部屋にいたシルフィさんはがいつの間にかいなくなっていた。

「彼女だったら、マスターより早く出ていったよ。彼女、マスターより人の振り分けが的確で早いんだよ」

 ジクハさんは扉を見つめる。

「俺達も行くぞ」


 ダイヤリルの北に妙な影が出た頃、街の裏通りにダルクは立っていた。

「そろそろか」

 ダルクは扉を開けて、中に入っていく。中には何もない。ダルクは一つの部屋に入ると、部屋の真ん中に膝を突いた。

 コンコンと床を叩くとパカッと床が開いた。ダルクは奥にあるボタンを押した。

 奥の壁が開き、地下に進む階段が現れた。ダルクは入口にあるランタンに火を付け、迷わず奥に進んでいく。

 奥には小さい石造りの部屋があり、中心に台座があった。

「ギルドの人達も俺がダイヤリルにいるとは思わないだろうな」

 台座に綺麗に置いてある黒い石を取る。

「よし、よく混ざっている」

 ダルクは口元を緩める。

「まさかこの街の魔力が魔物の魔力を定着させるとはな」

 ダルクは自分の胸の間に黒い玉を当てると、黒い玉はスゥっと体に入っていく。

「体にも馴染んでいく。いい感じだ」

 ダルクは部屋を後にした。

 

 僕達はギルドの入口に着くと、複数人がギルドのカウンターにいた。その中心にはシルフィさんがいる。

「言っただろう。彼女は優秀だって」

 ジクハさんも、彼女の方に向かう。僕も横に並んだ。僕達に気づいたシルフィさんはこちらを見る。

「今、現ギルドにいるメンバーで避難の分担をしているところです。マスターの指示どおり中心に集めます。二人一組で行動を」

 シルフィさんは机に広げている地図を元に、次々に配置をしていく。診療所にはディミがいるはずだ。アイツの事だから心配はないだろうが。大丈夫だろうか?

「次は、診療所方面か」

 シルフィさんはぐるっとメンバーを見渡した。指示されたメンバーはすぐさま行動を始め、今は半分くらいになっている。

「ジクハさんと、オル君行ってくれる?」

 診療所方面は確かに気になっていたが、シルフィさんが僕に指示出してくれたことに驚いた。

「ディミちゃんが気になるんでしょう」

 シルフィさんが優しく頬えんだが、すぐさま仕事の時の顔に戻り、あと四人に一緒に行くように指示をする。

「ここの指示は、ジクハさんお願いできる?」

「分かった。みんな行こう」

 僕達は診療所に向かい走り出した。街の中はいつもの温かい空気とは違い、何が起こっているのか理解できず右往左往している人が多く、街の人達は不安そうな表情を浮かべていた。

 それでも、ギルドの人間や街の警備の人が指示をしていて、徐々に動き始めていた。

 診療所に着いて扉を開くと、中の人達は慌ただしく動いていた。

 ジクハさんが近くにいた人に声をかける。

「どういう状況ですか?」

「あ、冒険者の方ですね。先程警備の人が中央に避難するようにと、知らせがあったので準備をしているところです」

 診療所の人はオロオロと、落ち着かない様子だ。

「避難としか言われてなくて、何が起こったんですか?」

 どうやら不安を煽るため、詳しいことは伝えていないようだ。

「大丈夫ですよ。念の為の処置です。そんなに不安にならないでください」

 ジクハさんが優しく声をかける。

「俺達も手伝います。指示してください」

「はい。そしたら病室の人たちの手伝いをしてください」

 診療所の人がいくつかの病棟を指さし、僕達は三班に分かれて病室に入った。僕達が入った部屋は冒険者が多いのかある程度準備が終わっていた。

「お、ジクハなんかあったのか?」

 ギルドで見かけた事のある冒険者の人が、松葉杖をつき近づいてきた。ジクハさんは簡単に説明した。

「状況は分かった。俺達は大丈夫だ。ほかを当たってくれ」

 僕とジクハさんは部屋を出て、横の病室に入ろうとすると後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

「オル〜。何かあったの〜」

「ディミ、ここにいてくれて良かった」

 ディミは動きやすい格好をしていた。

「何があったのか僕も分からないんだ、一旦中央に避難するように言われているから、ディミも避難しよう」

「分かった〜」

 話していると病室から何人か出てきた。

「これで全員みたいだな。思ったより少ないな。この人達は俺達が護衛しよう。行こうオル君」

 僕達は診療所を後にした。


 オル達が病院を後にした頃、パイルクは街の外に見える影を見つめていた。

「少しずつ、増えているな」

 パイルクが眉を潜める。パイルクが着いた頃、見た感じは百人ほどだった。それが今では百五十人くらいになっている。いや、単純に人ではない。魔物のような者に乗っているのもいる。

「どういうつもりだ?」

 なぜ留まっているのか、パイルクは首を傾げる。

「こちらから攻めますか?」

 守衛隊の隊長がパイルクに質問する。パイルクは無駄に血を流したくないと考えていた。

「いや、まだ待機だ。相手の出方が分からない」

 その時、後ろの方から爆発音が聞こえた。しかも数カ所からパイルクは街の方を振り向いた。街から複数の煙が上り始めた。


「どうなってるの?」

 ディミが火の手が上がった方を、見上げて呟いた。

「何が起こっているか分からない。急ごう」

 ジクハさんは周りの様子を見て、みんな落ち着いているのが分かると進み出した。

「どうしました?」

 僕はさっき話した松葉杖の冒険者の男が、立ち止まっているのに気づいて声を掛けた。

「始まったなと思ってね」

 冒険者の男は松葉杖を掲げた。

「オル君、様子がおかしい。構えて」

 松葉杖か輝き出して、地面がぼこりぼこりと盛り上がり、そこから狼が現れた。

「お前も、ダルクと同じか」

 冒険者は勢いよく松葉杖を振り下ろすと一瞬で、棍棒に変わった。男は両足でしっかりと棍棒を構える。

「あぁ、俺もあの方と思いは同じだ」

 ジクハさんは背中から小さい盾を取り出し両手に構える。

「ジクハさん、この間と盾が」

「街中だとでかいと邪魔だからな。こっちのほうが動きやすいんだ。オル君も魔法を」

 僕は頷き腰から剣の柄を取り出す。

「火は己の一部、火は自ら生まれ、そして広がっていく。フレイムソード」

 柄から火の剣が生まれ、僕は構える。

「俺達で食い止める。みんなは先に行ってくれ」

 ジクハさんは叫んだ。

「分かった。後は任せた」

 冒険者の一人が叫んだ。

「まぁ、逃げても無駄かな。さぁ、どこが安全かな?」

 追いかけようともせず、人を馬鹿にしたように笑う男は、ゆっくりと棍棒を構えた。

「来るぞ」

 僕とジクハさんは身構えた。

読んでいただきありがとうございます。

突然として現れた影、そして各所から登る煙、平和な街に何が起こったのか?

避難を誘導していた冒険者の裏切り、オルは剣を構えます。

全5章、最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。

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