2章 敵の目的
「オル君、相談って何だい?」
ギルドで併設している食堂で、仕事終わりのジクハさんを見つけ時間を作ってもらった。
「疲れているのにすいません」
「仕事も終わったところだし、別に構わないよ」
ジクハさんは以前着ていた鎧は着ておらず、シャツとズボンと楽そうな格好をしていたが、所々に傷後が残りいくつも戦ってきたのが良くわかった。
「怪我の方はもう大丈夫なんですか?」
ダルクさんとの戦いで相当な傷を負っていたはずだが、もう仕事に復帰している。体は大丈夫なのだろうか?
「あぁ、ポーションと魔法で治してもらったんだ。費用もダルクの事があったからギルドが結構出してくれてな。以前より元気なくらいだ」
ジクハさんは拳を軽く握り、腕の筋肉を盛り上がらせる。
「で、相談って?」
いざ、言葉にしようとすると、なんて言ったら良いか分からない。ジクハさんは魔法を使わないから、どう説明しようか迷ってしまう。
「ジクハさんは盾を使う時、どういった気持ちで使っていますか?」
ジクハさんは質問の内容に、ピンときていないようだった。
「ジクハさんは魔法の仕組みは知っていますか?」
「あぁ、ざっくりとは知っている」
さすが冒険者だ。僕の村では、ほとんどの人が魔法は名前くらいしか知らない。
「魔法にはイメージが大事なんですが、僕の新しい盾の魔法の事で悩んでて」
「あの時、使っていた火の盾かい?」
「はい。うまく盾のイメージがつかなくて、作るのに時間がかかるんです。盾を普段使われている人に聞いたら、イメージのヒントに繋がるかなと思って」
ジクハさんは腕を組んで、困った顔をする。
「魔法を使うイメージねぇ。俺には全くわからないがそれでもいいのかい?」
「はい。よろしくお願いします」
「俺はみんなを守りたいと思って、いつも盾を使っているよ。それ以外にないかな」
ジクハさんは指をパチンと鳴らした。
「ダルクと戦ったあの時、オル君はどういう気持ちでいたんだい?」
「あの時はジクハさんを守ろうとして、必死でした」
「つまり、俺と同じだったと」
ジクハさんはゆっくりと頷いた。
「で、今は?どんな気持ちで、だそうとしているんだい?」
僕は今どんな気持ちで、魔法をだそうとしているか頭を巡らせる。
「あの時のように、しっかりと人を守れるように出そうとしています」
「人って誰をだい?」
そう言われて言葉に詰まった。一体誰を守る?
「あの時は俺を守ろうとして、今は漠然と守ろうとしてないかい?」
その通りだった。ジクハさんの真っ直ぐな視線が、僕を突き刺した。それも一瞬だった。すぐさまジクハさんは口元を和らげた。
「なにかヒントになったかな?」
自分の気持ちを、理解していなかった事を気づかせてくれた。ヒントどころではなかった。
「はい。ありがとうございます」
ジクハさんは何度も頷いた。
「お、珍しい組み合わせだな?」
奥から、野太い声が聞こえてきた。
「マスター。お疲れ様です」
「パイルクさん。こんにちは」
ドシドシと音を立てて、ギルドマスターのパイルクさんがやってきた。
「何をしてたんだ?」
僕はジクハさんに聞いていた事を、パイルクさんに伝えた。
「さすが、あいつの弟子だな。良い弟子を育ててるな」
ガハハと笑うパイルクさん。
「パイルクさんは先生を昔から知ってるんですよね?」
「まぁな。新人の頃から知ってるな」
「先生ってどんな仕事をしていたんですか?」
パイルクさんは不思議そうな顔をする。
「なんだ。聞いていないのか?」
僕は頷いた。
「あぁ、俺も気になりますね。俺も顔は何度か見たことある程度で、噂しか知らないんですよね」
ジクハさんも身を乗り出してきた。
「そうか」
パイルクさんはどかっと椅子に座る。
「あいつはいろいろやってきたからな。護衛、洞窟の探索、モンスター討伐、弟子の育成なんかかな。何が聞きたい?」
ジクハさんが手を上げた。
「国の将軍にって噂も聞いたんですが、あれはホントですか?」
パイルクさんは苦笑いをする。
「あぁ、あれな。あれは正確には話があったかな。あれはあれで大変みたいだったぞ」
国の将軍って先生はどれだけ貢献したのだろう。僕が思っているよりとんでもない人のようだ。
「そんな先生が、どうして僕の村に来たんですか?」
パイルクさんは顎をさすった。
「うん」
パイルクさんの声が急に低くなり、緊張感が伝わった。
「ガントフォレストの事件は知っているか?」
確か巨大な魔物で、何人もの冒険者が命を落としたとシルフィさんに聞いた。
「あいつの弟子もあの事件で死んでな。弟子のユークはこのギルドのムードメーカーになっていたんだが、ギルドもしばらく静かなものだったよ」
「あの時はみんな元気なかったですね」
ジクハさんも天井を見上げる。
「ヴィンセントは自分がちゃんと鍛えてやれずに、死んだんだと自己嫌悪になってしまってな。俺が村に行くことを進めたんだ」
「ギルドマスターが?」
パイルクさんが頷いた。
「判断は正解だったんだと。オル、お前をみて思うよ」
パイルクさんは優しい表情をする。
「今、思い返せば、ユークはダルクとも仲が良かったな」
ジクハさんが目を細める。
「確かに、あの頃から力がほしいって、言いだし始めた気がします」
パイルクさんは肩を落とした。
「そうか、早く気づいてやれればよかったのにな」
「マスターこんな所にいた!」
扉の方からシルフィさんの声が聞こえてきた。なんだか深刻そうな張り詰めた声をしている。
「どうした?」
「ヴィンから手紙が来たんですよ」
カツカツカツと早歩きで近づいてくる。
「ヴィンセントからか、内容は?」
ヴィンって先生の事か、一瞬誰か分からなかった。
「ダルクの一連の事件の真相がわかったそうです」
パイルクさんは眉をぴくっと上げ、僕達を見渡した。
「よし、おまえらも一応関係者だな。場所を移そう」
僕は行っていいものかと思ってジクハさんを見てみると、気にするなという表情をしてくれた。僕達はマスターの部屋に移動した。
「よし話してくれ」
「はい・・・」
シルフィさんは先生の手紙の内容を説明してくれた。一連の事件は魔力を集め、その魔力で任意の動物を魔物にする実験だったようだ。そして僕達の村、リッカルも実験場の一つであったみたいだ。仲間も複数人いるらしい。
パイルクさんは顎を触った。
「ふむ。何の為にあいつはしたんだ?」
「それはまだ、調査中との事でした。ただし最後に分かった事が、実験は最終段階に入ったとの事です」
そこで扉を叩く音がした。
読んでいただきありがとうございます。
ジクハの「誰を守るのか」という質問に、オルはどんな答えを出すのか?
師匠の過去を知ったオルの心情は?物語は進み出します。
全5章、最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。
ご意見・ご感想お待ちしています。




