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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あの子のおかげで生きている。

作者: mope

えいこはクズである。

なぎさこは異常者である。

そんな両者は相容れない。彼女が私を愛していたとしても、結ばれることは無い。金をいくら積まれようが堕ちやしない、靡いたら私は終わりだから。

そんな彼女は私に依存している。

あの子は私の言うことをなんでもきいてくれる。

あれを取ってきて、これやっといて、代わりにあの子に伝えて、これ払っておいて、それちょうだい、とにかくなんでもきいてくれる。どうしてこんな関係が成り立つかと言うと、私はあの子に頼り切り、あの子は私に依存しているからだ。そんな私たちは恋人どうし。お互いの利害が一致しているから同棲もしている。今日も私はあの子を頼る。

「ねぇなぎこ、今日私夜飲んでくるから遅くなる。」

そう言いながら、ベランダでタバコに火をつける。

「わかった。いくら欲しい?」

こいつ、上門渚子(じょうもんなぎさこ)それが、私の頼る人の名前。見た目は良い、スタイルはまぁまぁ、センスは良い、普通にいい女。ただこいつは私に依存している。それだけがこいつの欠点。何をするにしても私が必要みたいにずっと私といる。

「ん〜3万。迎え欲しい時は言うわ〜」

「わかった。行ってらっしゃい。」

いつもこう、私が何をしようが無関心なように「わかった」とだけ言う。なんかもうちょっと、こいつには心配とかないのかな、男と飲みに行ってたらどうするんだか。

「あ、そうだ。私、明日ちょっと居ないんだよね。

ごめんだけどご飯とか作り置き要るなら言ってね。」

「え?」

思わず口からタバコが落ちた。

「うわっ危ないよ。タバコ吸う時は特に火に気をつけてって言ったじゃん。約束守れなきゃなしだよ?」

「ごめん。」

驚いた。驚愕した。開いた口が塞がらなかった。どんなに色々な言葉を使っても表せないくらい、私は信じられなかった。なぎこが私を置いてどこかに行くということが。なぎこはコスメや服を買いに行く時も、どこかに行きたいと言う時も、1秒でも長く私と一緒にいたいと言わんばかりに、ずっと私といる。だから私は信じられなかった。

「え……珍しいじゃん。あんたが1人で出かけるなんて。」

「うん、ちょっと入り用でさ。ごめんね。」

そう言ってなぎこは軽く手を合わせ、少し申し訳なさそうに会釈した。

どうせ私も明日飲み会の後だから、帰ってくるのはお昼とかになるだろうし。私が帰ってくる頃にはなぎこもいるから、何も気にすることないのに。なぎこなんだから、私のこと大好きななぎこなんだから何の心配もないのに。少し心臓がキュッとなっていやだ。

「ねぇ、なぎこ。」

「ん〜?何?」

「明日それについて行ってもいい?」

「え…。」

何その困った顔。なんでそんな顔したの?いつも私がそんなこと口走ったら。今すぐキスするのかってくらい顔を近づけて、両手をぎゅっと握ってきて「ほんと?!」って言ってくるのに。私、流石にあいつのこと蔑ろにしすぎたのかな。やだな、私の金づるであり、生活の一部であるなぎこ。居なくなるのかな。どうしよう、居なくなったら。家賃、払えない。

「うーん。ごめん、二つ返事でOKって言いたいんだけど。ちょっと考えさせて。」

考えるなんて、こいつの口から始めて聞いた。

「考えるなんて珍しいじゃん。いつも私がついていくなんて言ったら、天井に頭つきそうなくらい跳ねて喜ぶのに。」

「うん、内心すごく嬉しいし、今すぐにハグしたいんだけど...今回はちょっと、クミがいると困っちゃうんだよね。」

困るって何?困るのは私の方だ。お前が居なくなったら私の生活に支障が出る。バイトしてないし、親の金も全部使い込んでるし、なぎこ以外に信用出来る人間はいない。なぎこが居なくなったら私、どうすればいいんだろう。わかんないや。

「ねぇどうしたの?クミ?体調でも悪い?ほら、タバコ落としてるよ?」

「あ………ごめん。ぼーっとしちゃって。」

「そう?大丈夫ならいいんだけど、体調悪かったら言ってね、看病してあげるから。」

体調悪いわけが無い、タバコを1本まるまる綺麗に吸えるくらい元気なはず。でもなんだろう、私の肺にカスが詰まって喉に逆流しそうな嫌な感じ、少し…苦しい。

「あっそうだ!クミ3万だっけ?ここ、置いとくね〜」

そう言って彼女は、財布から3万を抜き、机に優しく置く。正直飲み会なんてどうでも良くなっている。理由は考えなくてもわかるくらい明白で、一刻も早くこの異常を正常に戻さなければ、私の金ヅルは他の男に取られてしまう。

でも今は落ち着いて飲み会に行く準備をしよう。自分で言ったように、あいつは私に依存している。だから取られるなんてことは、万に一つもあり得ないのである。

「あぃーあざー」

素っ気なく、金をもらうことに何も疑問を持たなくなっている。そんな自分を異常だなんて誰も言わない、私の周りには私と同じような人間ばかりだ。


「生3つください。」

「あいよ!!生3つ入りましたー!!!!」

店員の声が周りにかき消されることなく全員に共有される。私たちの注文に対して誰も気にしない。

「ねぇ聞いてよぉ。今回の彼氏がさぁ別の学部のくそブスな女と浮気してたんだよ?ありえないよね?私という彼女がいながら浮気するなんてありえないよ。そんな私魅力なかったのかなぁ?ねぇ〜えいこさぁん?聞いてる〜?」

「うるさいよぉ。私も今悩んでるんだからさ〜耳に響く声でなんか言わないでよォ。」

いつも通りのウザイ彼氏の話、いつも通りのなんでも素直に言う口の悪い子。

なぎこの金で飲む時はいつもこの子達と飲んでいる。

「ギャハハハハハハハハハ」

「ギャハハハハハハハハハ」

「ギャハハハハハハハハハ」

悩んでる時、こういうとこに来るもんじゃない。

お気楽な脳みそがどうしても気に障る。うるさいうるさい、くだらないことばっかり、彼氏が、男が、目線が、きもいきもいきもいきもい、ちょっとかっこいい、そればかり。何も得るものは無い会話だな。それがいい時もあるけど今じゃない。どうしよう。このままだと金ヅルが、なぎこが他の男に取られる。何か、何か対策をしなきゃいけないのにこの脳なし共の飲み会に参加なんかしちゃって、バカだなぁ私。

いっそこいつら聞いてみるか?バカにされて終わるだけだとしても、一瞬くらいは取り合って貰えそう。

「ねぇ、き、聞いて欲しいんだけどさ」

「ん?なにー?」

緊張して目線を合わせられない。

「私とシェアハウスしてるなぎこっているじゃん?」

「んぁ〜あのいつもえいこが金ヅルってよんでる?」

まだ2割も飲んでいないビールグラスを震える手で握りながら喋る。

「そうそう、そのなぎこ。そのなぎこがさ、私離れ?してきてさ、どうにかして私離れ辞めさせたいんだけどなんか案ない?」

言った、言ってしまった。酒のせいだ、空気のせいだ。何言われたってもう知らない、なぎこのせいにしてやる。

「アハハハハハ何それ、ありえな、なぎこがあんたに愛想つくわけないじゃん。」

「は?」

「だって’あの’なぎこだよ?気に入った人を見つけたら、地の底まで追いかけて愛を投げつける化け物。それがあんたの飼ってるなぎこでしょ?」

「ちょっと〜、えいこは買われてる側でしょ〜?貢がれてんだからさ〜」

「アハハハハ、それもそっか〜アハハハハ」

やっぱり、意味なかった。知っていることを言われただけだ。それを踏まえた上で「案があるか」って聞いたのに、、、

あーめんどくさ。

ジョッキのビールを全て飲みほした。喉に刺激物がすんなりと通って、頭がぼんやりする。ばかみたいな飲みもの。

「おーいいのみっぷりじゃん」

「もいっぱいいく?」

「いこーいこーどんどんのもー」

「アハハハハアハハハ」

「アハハハハアハハハ」

「ギャハハハハハハハ」


頭が痛い。

何してたんだっけ?なぎこから金もらって、飲みに行って、なんだっけ?すごい恥ずかしいこと言った気がする。まぁいいや、そんなことより頭痛い。吐いてこよ

『ヴェロロロロロロロヴォエ』

『ジャー』

というかなんで家にいるんだろ。見知った天井すぎて疑問すら浮かばなかった。全くもって思い出したくないけど。多分、友人A、Bが連れ帰ったんだろうな。

「さて、スッキリしたし吸うか」

私の定位置は決まっている。ベランダに出て、すぐの所に、椅子と灰皿が置いてある。椅子に座らずにベランダの手すりに肘を置いて、紙タバコに火をつける。それが私の吸い方、タバコの銘柄とかは気にしたことがない。なぜなら吸っている理由が「かっこいいから」でしかないからだ。

『フゥー』

朝の風が吹いて煙が部屋に流れ込む。もう秋になる。おもむろにスマホを見る。現在時刻、7:32分

それとおびただしい量の着信履歴が目に映る。画面を開かなくてももうわかる。あいつだろう。遅くなると言っても、いつもなぎこは12時以降に鬼電をかけてくる。話さなければ離さないで居なくなった途端に、毎秒電話とメッセージが飛んでくる。複数アカウントを使って私のSNSのDMにまで送ってくる。なので私は出かける時は金と報告を欠かさない。

『プルルルルルルルブルルルルルルルプルルルルルルルプルルルルルルル』

なぎこからだ。私が帰ってきていることを知っているのに、私がベランダで吸っていることも知っているのに、今、私の目線の先で目が合っていることも知っているのに、わざわざ電話をしてくる鬱陶しさ、やっぱり私はこいつを愛せない。

「はいはい、何?愛の言葉ならいらないよ。」

「AちゃんとBさんから聞いたよ?がぶ飲みしてぶっ倒れたんだって?ダメだよそんなに飲んじゃ、ただでさえそんなにお酒強くないんだから 。」

「うるさいよ。私は昨日、お前のせいで飲みたい気分だったの。責任はお前が取れ。」

「え、私何かした?そういえばAちゃんもなんか言ってた。「えいこがあんたの事で悩んでたよ」って、私何かした?!直せるとこだったら全力で直すから、遠慮なく言って!!」

あぁいつもの日常だ。なぎこはいつも通りうるさい。それに対して私は、いつも通り興味のないフリをする。好意は決してバレてはいけない。なぎこは金の切れ目が縁の切れ目であるから。

「いつも通りウザイよ、お前は。」

『ガチャ』

「私はウザくないよ!えいちゃんが執拗に私を嫌ってるだけだよ!!」

「当たり前だろ、お前は私の銀行だって何度言えばわかるんだよ!」

「金だけの関係か、、、悪くない。」

「何興奮してんだ変態が。」

部屋に変態が2人、何も起きず、歪んでいる。

「あっ、ねぇえいちゃん!!ちょっとこっち来てよ。」

「なんだよ。」

私は知っていた。この時期になぎこが私から離れる時、その理由を。だからこれはただの茶番だ、惚気とも言えよう。いつもいつもこの時期になると私は悩む、誰だって自分が好かれていないという事実に気がつくのは辛いものだから。だから私は、、、、

「今年も、生まれてきてくれてありがとう。Happy birthday えいちゃん。これからもずーっと一緒だよ?」

「お前の金が無くなった時に私は消えるよ。」

だから私はこの子に依存している。



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