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竜と神のヴェスティギア  作者: 絢乃
第九話

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0092

 レヴィの献身によって自分を取り戻したルティウスは、今いる場所を知るべく周囲へと視線を巡らせていた。

 一体ここはどこなのだろうか。小高い丘である事だけは分かるが、眼下に広がる森林は広く、戦場だった西ベラニスの風景はどこにも見当たらない。

「どうした?」

「いや、あのさ……」

「ん?」

「ここ⋯どこ?」

 きょろきょろと視線をさ迷わせているルティウスに気付いたレヴィが尋ねる。しかし少年の口から発せられた一言への返答に困ってしまう。ルティウスをあの場から遠ざける事しか考えていなかったレヴィには、この場所がどこなのかは分かっていない。

「さあな」

「えぇ~…」

 とは言え、レヴィならばきっと現在地を把握する事は難しくないだろう。水脈を辿れるレヴィは、その気になればここに居ないリーベルやフィデスの位置も掴めるだろうから。

「西ベラニスに、みんなまだ居るのかな?」

「いや⋯既に移動している」

 意識を遠くへ向けて、レヴィはその気配の位置を探った。

 魔法の才に乏しいと公言していたリーベルはともかく、フィデスの魔力は至極掴みやすい。あの二人が別行動を取る理由はなく、そもそもレヴィはフィデスに命じていた。リーベルを連れて来いと。

「合流、出来そう?」

「容易い事だ」

 自信たっぷりに宣言するレヴィは穏やかに笑っている。

「直ぐに向かいたいか?」

「そう、だね⋯多分、心配かけてるだろうし⋯」

 彼の意思を尊重したいが、レヴィは心の奥底で躊躇していた。居所を掴んでいるフィデスの特殊な魔力の気配⋯そのすぐ側には、あの女⋯ゼフィラが纏っていた風の竜の魔力も感じられたから。

「⋯レヴィ?」

 既にリーベルとフィデスによって彼女の素性が明かされている事を知らないレヴィは、その瞳に警戒の色を滲ませている。

 フィデスの魔力に視線を向けているレヴィを見上げて、ルティウスは少しだけ不安そうにその名を呼ぶ。

「何だ?」

 声を掛ければ、その視線は直ぐさま柔らかいものに変わる。返事をしながら見つてくめる眼差しは、とても優しくて温かい。

「何か、気になってるんだろ?」

「⋯⋯そうだな」

「ゼフィラの事⋯?」

 肯定してしまっても良いはずだった。レヴィがよく知るあのフィデスという竜は、ふざけているようで鋭く、真実を見抜く目は長けている。そんなフィデスが同行を許しているのならば、ルティウスにとっても害はないと判断したという証明。

 けれどレヴィは、疑心暗鬼になっていた。何度かルティウスを失いかけたせいで、恐れるようになっている。

「⋯会ってしまっても、平気か?」

 誓いの言葉を与え続けてようやく取り戻したルティウスが、再び心を壊さないか⋯その懸念がレヴィを躊躇わせる。

 ゼフィラという存在そのものに、過去の惨劇を重ねてしまわないか⋯そうした不安がレヴィにはあった。

「⋯大丈夫。俺は大丈夫だよ」

 レヴィが何を案じているのか、朧げにもルティウスは察している。だからこそ迷いなく返した。大丈夫だと思える、その理由を。

「俺だけだったら、また思い出して怖くなるかもしれないけどさ⋯レヴィが、一緒に居てくれるだろ?」

「ルティ⋯」

 少しだけ照れ臭そうに告げる少年の頬は、ほんの少しだけ赤くなっている。頼り方も甘え方もろくに知らなかった少年の、少しの成長。それはレヴィにとっての、安心にも繋がっていた。

 普段よりも少しだけ乱暴にルティウスの頭を撫でてから、レヴィはその場に立ち上がる。大きなその背に携えた竜の四翼は、わざとらしく音を立てて躍動している。

「⋯ならば、さっさと合流するぞ」

 伸ばされた白い手を握って、ルティウスもその場に立ち上がる。同時に引き寄せられ、その腕は少年の細い腰へと回されている。いつもの横抱きとは違う体勢だが、直ぐにもこの場所から飛び立つのだとルティウスに悟らせた。

「いつもこうでいいのに⋯」

「抱えてしまった方が、運びやすいだけだ」

「本当に?」

 レヴィの左腕が、強くルティウスの腰を抱き寄せる。直後、翼が大きな音を立てて動き、強く地面を蹴るとそのまま空中へと舞い上がった。 

「やっぱり空は⋯まだちょっと怖いかも⋯!」

「ならばしがみついておけ」

 言われるがままレヴィの首元に抱きつくルティウスは、遠ざかる地面を見下ろして湧き上がる本音を呟いた。

「運ばれた方が良かったかも⋯」

 吹き付ける上空の風は冷たかったが、寒さに弱いはずのルティウスはもう、寒いと感じていなかった。それがレヴィの腕のせいなのか、服に掛けられた耐寒魔法の効果なのかは、分からなかったけれど。


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