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竜と神のヴェスティギア【過去編同時連載中】  作者: 絢乃
第八話

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0085

 その頃、船上から二人の戦い様を見守るルティウスは、いつかのように瞳を輝かせていた。

「やっぱりあの二人、強いなぁ」

 初めてリーベルとレヴィの手合わせを目の当たりにした時にも感じた、強烈な憧憬。自分も強くなりたいと二人に師事を願い出たあの日を思い出し、ろくに動かない身体にも拘らず戦場へ向かいたいと思い始めていた。

「ホーント、レヴィもそうだけど、やっぱりオジサンも強いよねぇ」

 へりに肘をついて、完全なる見物人となっているフィデスも感嘆の声を漏らす。

 しかしルティウスは少しだけ訝しんでいた。首元の聖石は一度も光らず、レヴィが一切の魔法を使っていない事が分かったから。

「なぁ、フィデス」

「ん~?」

 護衛として残った退屈そうなフィデスへ、ルティウスはそれを問う。

「レヴィ、魔法使ってないみたいだけど…」

「…そりゃね、こんなところでレヴィの魔法はダメだよ」

 肘を付いたまま、だが少しだけ真剣な顔をして、戦場を眺める緋色の瞳は過去を思い返すように少しだけ細められる。

「レヴィの魔法はね、本来は超高火力の範囲魔法ばっかりなんだ」

「…そうなの?」

 意外に思いつつも、だが今までに知ったレヴィの過去を思えば、どこか納得もしてしまう。

「ほら、モアの消滅がいい例でしょ」

「…うん」

「レヴィが魔法じゃなく槍だけで戦ってるのは、あの魔物の群れの向こうに人間が居るからだよ」

 フィデスの言葉に、ルティウスは息を飲んだ。

 かつてレヴィが、一瞬にしてモアという大国を消滅させた惨劇。今のレヴィにそれほどの力を振るう事は出来ないとしても、彼の魔法が周りを巻き込まないはずはない。

「レヴィらしい、な」

「ほーんとね!どこまでも優しいんだよ、レヴィは!」

 視線をフィデスから外し、再び狩り場と化している戦場へと向ける。リーベルの動きを阻害する事も無く、槍の一閃だけで常に複数の魔物を、表情を変えず返り血一つすら浴びずに屠っていく。

 そしてリーベルも同じく、長剣という武器のリーチを生かし大型から小型まで全てを一刀のもとに両断していた。

 現場は魔物の死骸と血で溢れる地獄の様相を呈している。しかしそれでも、ルティウスの瞳は輝いている。

「ねえ、もう少し…あっちに行っちゃ駄目か?」

「えぇ~?」

 強さに憧れる少年はフィデスへと訴えかける。しかし船酔いによる体調不良が戻っていない事は、顔色を見ればすぐに分かった。

「…レヴィに怒られても知らないよ~?」

「大丈夫だよ、レヴィならきっと」

 フィデスの許可を得るよりも早く、まだ少しふらつく足取りで結界の外へと出て行ってしまう。

「もう、本当に知らないからね?」

 笑いながら、だが器用に結界の位置をルティウスの移動に合わせて動かし、無邪気な少年の後を追った。


 そしてレヴィとリーベルは、魔物の群れを蹴散らしながらもようやく自警団員達の元へと辿り着く。

「おーう、お前ら無事かぁ?」

「えっ、リーベル団長?」

「何でこんなとこに居るんスかぁ?」

 疲労困憊の様子を見せている団員の数名が、リーベルの登場で驚くとともに、絶望の表情をぱっと明るくしていく。

「それよりも掃除が先だろ!おら、ヘバってんじゃねえぞ!」

 話は後とばかりに、疲弊した団員達を庇うように前へと出るリーベル。その隣に並ぶ、人智を超えた美貌を持つ男の存在に、疲れ切っていたはずの自警団員は間の抜けた表情を浮かべて見惚れていた。

「…しかし、多いな」

 疲れている訳ではない。だがここまでの魔物の群れの発生は、永きを生きる竜であっても経験が無い。何かしらの異常がこの地で起きているのは間違いないと、戦いながらもレヴィは考えていた。

「そ、だから自警団の主戦力は、みんなこっちに回すしかなかったんだよ」

 未だに終わりの見えない乱戦が続くのは、眼前の光景を見れば明らかだった。今も獰猛な目をして牙を剥く魔物の群れが、レヴィ達を囲むように存在している。

 勝負の最中ではあったが、いい加減面倒に感じていた。

「リーベル、こちら側の人間は、ここに居る者共で全てか?」

 魔法の使用は控えていた。それは人間を巻き込まないためでもあるが、一番の理由はルティウス。範囲魔法を使うにはそれなりの魔力を必要とする。封印によって自身の魔力が無に等しい今、それほどの魔法を放つには魔力を供給するルティウスへの負担が大きくなりかねない。船酔いで体調の優れないあの少年に、そんな無理を強いるわけにはいかない。

 だがこのまま近接戦闘のみで殲滅を続けても、終わりは遠い。

「おいお前ら、避難し損ねた人はどっかに居たりするか?」

 到着したばかりのリーベルは、詳細な現状を把握しきれていない。魔物の襲来と共に応戦していただろう自警団員へと問うが、答えは否だった。

「団長も知ってるでしょう?ここを訪れる人なんてそうそう居やしないって!」

「どうにかあちこち回りましたけどね、宿にも誰も残ってねえっす!」

 返答は、レヴィの問いを肯定するもの。そしてレヴィが、魔法を使っても問題ないという合図にも等しかった。

「リーベル、そこの者共を、一か所に集めろ」

 冷たい声で言い放ち、同時にレヴィは近くにいるルティウスの気配を辿る。


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