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竜と神のヴェスティギア【過去編同時連載中】  作者: 絢乃
第七話

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 土の竜神フィデスの力を以てしても修復し切れなかった中庭は、まるで戦場跡の如き様相を呈していた。

「おい、何なんだこの有様は⋯」

 翌朝、起きてきたリーベルが凄惨な光景を見て素直な感想を述べる。しかし事を起こした本人は、現在も意識を失ったまま目を覚ましていない。

「えっとね~⋯すごく説明しにくいんだけどね~?」

 朝まで庭の修復に全力を尽くしていたフィデスは、リーベルから問い詰められて狼狽えている。ルティウスがしでかした事だとは口が裂けても言えない。

「まぁ、庭はゆっくり直せば問題ありませんから」

 家主であるテラピアが寛大にも言うが、リーベルは納得していない。ちょっとした手合わせで地面に穴を開けたレベルの状態ではなかったからだ。

「⋯で?どうせレヴィかルティウスあたりの仕業なんだろ?あいつらはどうしたんだ?」

「⋯それがねぇ」

 言えるはずもない。

 魔力を暴走させ意識を失ったまま目を覚まさないなど、ルティウスを誰よりも案じている叔父に、伝えられる訳がなかった。


「ルティ⋯⋯」

 そしてルティウスの傍には、レヴィが付いている。

 魔力の暴走が収まった頃には、半竜の姿は元の人のものへと戻っていた。それどころか、聖石を通じて引き出せる魔力が著しく減少し半竜の姿を継続する事も難しかったから。

「戻ってこい、ルティ」

 かつて見た事のある現象のため、レヴィは度々声を掛けている。その呼び声が届くかどうかはルティウス次第と知っていても、呼ばずにはいられない。

 レヴィの創り出した魔力の槍…それを楔として、ルティウスの魔力を司る核を一時的に封じた。そうしなければ肉体が保たずに壊れてしまっていたから。

 拘束する際にフィデスによって穿たれた傷も既に完治している。あとはルティウスの意識が戻れば解決だが、一番難しいのがそこだった。

 本来の力さえ使えれば、ルティウスの魔力に直接干渉し意識を引き揚げる事も出来た。しかし現状の自身の魔力だけでは、それだけの事を成すための制御は難しい。

「もっと早く西へ向かっていれば良かったな⋯」

 ここにアールさえ居れば⋯と、居ない者の力を求めてしまう無力な己に嫌気がさす。慈愛に溢れ、竜神の中で最も博識な風の竜ならば、おそらく引き揚げに力を貸してくれただろう。

 しかしそれでも、後悔は尽きない。


 もっと注意深くルティウスを見ておけば良かった。この子の心が脆い事は知っていて、けれど信じようとした結果招いたのがこの惨事。もっと早く気付けていれば、こんな事態は避けられたはずだ。

 精神と魔力は密接に関係している。怒りで乱れた心では、ルティウスが持つ膨大過ぎる魔力を御せるはずもない。それ以前に、ルティウスは本心を隠していた。甘え方も頼り方も知らない不器用な子供故の暴走は、溜め込んだ想いを吐き出せずに爆発したも同然なのだから。

「ルティ、本当にお前は、我慢をし過ぎだ」

 未だ目を覚まさないルティウスの小さな手を握り締めて、何度も声を掛ける。

 戻って来たら今度こそ、全てを暴き出そう。包み隠さず本心を打ち明けさせる⋯過保護な竜神は強く決意していた。


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