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竜と神のヴェスティギア【過去編同時連載中】  作者: 絢乃
第二話

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 翌朝、ベッドの上で目を覚ましたルティウスの隣には、案の定レヴィが横になっていた。けれど昨晩のように抱き締められてはおらず、動けないという事もない。起こさないようそっとベッドから降りようとした直後には、何故か腕を掴まれて引き留められたけれど。

「……起きてたのかよ?」

「お前の魔力が動いたから私も目覚めた」

「……魔力の繋がりって、便利そうでなんだか不便だな」

 軽口を叩き合いながらも身支度を済ませ、フィデスに言われた通り夜明け前には準備を終えた。まだ薄暗い家の外に出てみると、既に元気一杯のフィデスが笑顔で待ち構えていた。

「おっはよ~。寝坊しなかったね?」

「依頼されてるしな。遅れる訳にはいかないだろ」

「偉い!よーし、それじゃ早速いこっか~」

 そして三人は家を後にし、鬱蒼とした森の中へと入っていく。どこへ向かうにも森を抜けなければ辿り着けないこの場所は、やはり暮らすには不便ではないのか?と疑問を抱くが、ルティウスにはそれよりもまず問うべき事があった。肝心の行き先をまだ聞かされていない。

「そういえば調査って言ってたけど、どこに向かうんだ?」

 護衛を必要とするからにはある程度の危険は予想しているが、目的地が不明なままではその予想も大して役には立たない。

「ルティ君、この近くにクレーターがあるのは知ってる?」

「クレーター…?」

「大昔に災害があってね。国が丸ごと一つ消滅したんだよ。その跡地の調査さ」

「……そんな場所が?」

 初めて知る内容の話に、ルティウスは目を見開く。

 帝国から遠くない位置に、広範囲に渡って草木の育たない謎の荒廃地域がある事は知っていた。それがかつて国があった場所だと、知る者は現代にほとんど居ないだろう。

 神であるレヴィなら知っているのだろうが、封印された後の事であれば知らないかもしれない。訊いてみようかと視線を向けるが、その表情を目の当たりにして口を噤んだ。


 まだ陽が昇り切らない薄闇の中、背筋が凍りそうな程に冷たい目をしていた。

 感情が見えない、暗く冷ややかな瞳。

 わざわざ問わずともレヴィが何かを知っている事は明白に思えた。


「…それで?護衛って事は、何かヤバい奴がそこに居るかもしれないって事か?」

「ん~、そんなに危ないのは居ないと思うんだけどね?ただ、長い時間が経っても魔力が乱れっ放しでさ~。今どんな状態になってるのかもよく分からないんだよね~」

 与えられた情報の曖昧さに苦笑が浮かぶ。仮に魔物が大量発生でもしていれば数で囲まれる可能性も有り、想像を絶する強敵が待ち受けている可能性も有り得る。

 だがレヴィが魔力の繋がりを得て魔法を使えるようになっていた事は幸いしている。ルティウス自身が保有する魔力の続く限り、攻撃魔法による殲滅や援護に期待も出来るかもしれない。

 けれど懸念が生じる。当地は魔力が乱れていると説明があった。かつて魔法の勉強をしていた頃、魔力の乱れは魔法の発動や人間の身体に影響を及ぼす事があると教わっている。そんな場所へ軽々しく近付いても平気なのだろうか?と。

「なぁ、その…俺は詳しくないんだけどさ、魔力が乱れてるって、どんな感じなんだ?俺達が近付いても問題ないのか?」

「ん~……普通の人間だと、身体の中の魔力も乱されちゃってヤバい事になるかもね~?」

「そんな場所…本当に行くのか?」

「我々なら問題は無いだろう」

 出発してから一度も話さず沈黙していたレヴィがようやく口を開く。彼の言葉を疑う訳では無いが、どうして大丈夫と言い切れるのかだけは知りたかった。

 意図を問うように見上げていると、視線に気付いたレヴィが微笑んでから付け足す。その表情に先程までの冷たさは無い。

「加護を得ている者ならば、魔力の乱れ程度でどうにかなる事は無い」

 簡潔だが、分かりやすい説明に安堵する。

 ルティウスは十五歳の時に、帝国の儀式で正統なる水神の加護を受けている。レヴィは加護を与える側であり、そもそも影響などあるはずもない存在。じゃあフィデスは?と考えるが、そんな場所の調査に赴くのだから何かしらの神の加護を持っていると思っても良いのだろう…この時は、まだ簡単に考えていた。

 森を抜けてからしばらくは、何もない平原を日の出と共に進んだ。まるで来た道を戻るかのように見覚えのある景色を眺めながら、広い地平を北上して行く。しかし道中で、ぱたりと道が途切れている事に気付いた。

 既に周囲は明るくなっているにも関わらず、人の通った痕跡すら見つけられない。いよいよ目的地に近いのだと、正確な場所を知らないルティウスでも察してしまう程。

 前方を歩いていたフィデスの隣に並び、いつでも抜剣出来るよう鞘に手を掛け辺りを警戒する。

「魔物の気配はあるか?」

 すぐ後ろに居るレヴィへ向けて問う。探知魔法を使えない訳では無いが、いざと言う時のために魔力は温存しておきたかった。レヴィならば、魔法がなくとも水脈の揺らぎから感知出来るだろう。

「…何も居ないな」

 ちらりと周囲へ視線を流すレヴィが、僅かな魔を置いてから答えた。彼が居ないと言うのだから、本当に何も居ないのだろう。僅かに警戒を緩めようとした時、フィデスが口を開いた。


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