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竜と神のヴェスティギア  作者: 絢乃
第十二話

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 一方その頃、アムニス山脈のどこかにて。

 深夜に人知れず宿を離れ、頭を冷やすべく一人になる事を選んだルティウスは⋯⋯──。


「⋯やっべ、ここ⋯⋯どこだろう?」


 峠へ向かうつもりが、何故か洞窟の中をさ迷っている。

 どこで道を間違えたのか、暗い夜道ではそれさえも分からなかった。

 レヴィ達にどれほどの心配を掛けているかも知らないルティウスだが、それ以上に未知の土地での迷子という現状に、心細い想いを抱いていた。

 時折、端に寄って腰を下ろし休憩はしている。けれど夜通し歩き続けたルティウスの疲労は、かなりのものになっていた。

 探されないように、目印になりかねない聖石は置いてきた。水脈を辿れるレヴィなら執念で見つけ出してしまいそうだが、しばらくの猶予はあるだろう。

 

 レヴィにとって、自分は誰かの代わりかもしれない。


 その答えに至ってしまった不器用な子供故の反抗。それは家出へと繋がり、現在の迷子という災難に続く。

「⋯レヴィ、呆れてるだろうな」

 座り込み壁に凭れ掛かって、ぽつりと呟く。剥き出しの岸壁はごつごつとしていて、寄りかかったルティウスの背中に僅かな痛みを与えていた。

「誰なんだよ、アリアって…」

 寝言で呟くほど心の中に強く根付いた存在。それほどまでに大事な人が居ただろう事は、かつて見た夢の光景や時折見せる表情、そしてレヴィ自身が語った『モアの聖女』という人物に繋がっているのだと朧げに察する。

 話を聞いた時は、それほど深く思い詰めはしなかった。

 頭の中では理解していても、心は納得していない。

「俺にあんな事したのも……俺が、その人の代わりだから…」

 ルティウスにとってはあまりにも重大事だった、純情を奪われた事件。自分の命を救う為にした事だと分かっているが、それさえも『救えなかった誰かの代わり』かもしれない…その考えに至り、未熟な心は混乱の極地に陥ってしまった。

 それは多感な年頃ならではの、複雑な感情。親を知らない誰かに取られた…そんな子供のような気持ちが家出という行動に移させていた。

 とは言え、どことも知れない洞窟の中でじっとしている訳にもいかない。進んでいけば、きっとどこかには辿り着く。無謀でしかない単独行動が迷子に至らせたが、ルティウスにも奥の手が無いわけではない。

「…こんな事に力を使ったら、めちゃくちゃ怒られるんだろうなぁ…」

 世界そのものの力、根源。

 上手く風の力だけを引き出せれば、目指している出口へと風の流れを生み、導いてくれるかもしれない、そんな淡い期待を抱いていたから。

「とりあえず…やってみるか…!」

 座り込んだまま、ルティウスは目を閉じる。意識を集中させ、風の流れを読むようにその手を翳した。同時に全身を碧色の魔力が包む込んでいく。

 やがて無風だったはずの洞窟内に、穏やかな風が吹き始める。陽の当たらない場所のせいか冷え切っている空気が流れ、目指すべき場所を指し示すかのようにある一方向へと向かっていった。

「…あっち、かな?」

 風は、さらに洞窟の奥へと吹いている。これ以上入り込んでしまって大丈夫だろうか…。そんな不安もあったが、ここで立ち止まっていては、追い掛けてくるかもしれないレヴィにいずれ追いつかれる。

 過保護な竜神は必ず追いかけてくる、何故か確信を持ててしまうせいで、ルティウスは疲れているはずの身体を奮い立たせて、風が導く先へと歩き出していく。


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