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竜と神のヴェスティギア  作者: 絢乃
第十二話

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 扉が閉じられ、今は無力な竜神だけが残された部屋の中。

 聞かれて困る者は誰も居ない。だからこそ、フィデスは遠慮も容赦もなく、レヴィへと問える。

「レヴィはさ、ルティ君の事をどういうふうに見てるのさ?」

「⋯⋯⋯⋯」

「まさか、ちょっと似てるからって、アリアちゃんを重ねてたりしないよね?」

 それはレヴィの傷に触れるかもしれない一言。

 微動だにせずじっと聖石を見つめていたレヴィは、その名を聞くだけでほんの僅かに反応を示した。

「⋯それは、無い」

「本当に?」

「⋯⋯⋯⋯」

 付き合いの長いフィデスだからこそ、気付いていた。

 ベラニスの領主邸で、女装したルティウスの姿を見た時、フィデスもまた驚いたのだ。

 少年でありながら、その容姿はかつてレヴィが喪ったアリアという女性に、とても良く似ていたから。

「本当に無いって、あの子に誓える?」

「⋯⋯⋯⋯」

 レヴィは、やはり返事をしなかった。

 否定のしようもなく、レヴィ自身に心当たりもあったから。


 ルティウスの言葉に、仕草に、彼女の面影が見え隠れしていた。

 気付いていながら、それでも目を逸らした。そこに居るのはアリアではなく、ルティウスだと己に言い聞かせて。 

 そうした想いが、自分の知らない内に伝わってしまったのだとしたら⋯──。


「ルティ君はすごく繊細で、ボクらが思ってるよりも鋭い子なんだよ。それはレヴィが一番知ってるんじゃないの?」

 今こうしてレヴィを責めたところで、何も解決はしない。それはフィデスにも分かっていたが、指摘せずにはいられなかった。

「⋯⋯ねぇ、レヴィ!聞いてんの?」

「⋯⋯⋯待て」

 まともな返事もせず、ただ残された聖石を見つめ続けるだけだったレヴィだが、唐突にフィデスを遮る。

 ルティウスが居なくなった事で動揺し、狼狽えているか落ち込んでいるとばかり思ったが、よく見れば金色の瞳は揺らいでおらず、心が全く折れていないのだと気付く。

「⋯⋯見つけた」

「⋯⋯⋯えっ?」

 ただじっとしていただけで、レヴィはレヴィなりにルティウス捜索のため、辛うじて使える力を行使していた。

 ルティウスの魔力を借りられなくとも、水の竜神であるレヴィには水脈の揺らぎを辿る力がある。聖石を通じて幾度も繋げた魔力⋯その色の痕跡をずっと探し続けていた。

 そしてアムニス山の麓という現在地もまた、レヴィの力となる。かつての自分が造り出した聖なる水源は、そこを起点としてこの大陸の全土へ水脈の根を張り巡らせている。そうした無数の根の一つ一つを辿り、あの少年の魔力が通り過ぎた場所を調べ続けていた。

 居場所の目処はついた。その事実は、じっとしていたレヴィを立ち上がらせる。

「⋯お前の指摘は尤もだ、フィデス」

 聖石を握り締めるレヴィは、古き友の言葉を真っ直ぐに受け止めていた。

「何度か⋯⋯ルティにアリアの面影を見た。彼女が遺した何かがルティにはある、と。それに気付いた上で、私はルティ自身を見ている」

「⋯⋯やっぱり気付いてたんだね?」

「当然だろう」

 レヴィが隠し続けている過去の傷。それをあの子に知らせる事は、重荷になるだろうと考えて伏せていた。だが隠した事でルティウスが、向けられる想いの正体と己の存在理由に疑念を抱いたのだとしたら⋯。

「居場所はおおよそ掴んだ。必ず見つけ出す⋯」

 ゼフィラの風でさえ見つけられなかったルティウスの痕跡。けれどレヴィは根気強く探した。

 慣れない土地での子供の家出。そう遠くまで行けるはずもない事は明白で、事実としてルティウスの反応は街からそう遠くない、山脈の奥地から感じ取れた。

「⋯⋯見つけたらさ、話すの?昔のコト」

「話す。そうしなければ、ルティは納得しないだろう」

 自身の過去の傷など、今ある大切なものを喪う絶望に比べれば大した痛みでもない。それであの子の不安と疑念を取り払えるのならば安いものだ。


 そしてレヴィは、ルティウスを探すために動き出す。

 魔力を借りられない今、いつものように翼を出す事も叶わない。人と同じように、地を這って探すしかない。そんな中で、土の竜神であるフィデスの力は不可欠なもの。

「お前も来るのだろう、フィデス」

「あったり前じゃん!あの子を放っておくなんて、出来るワケないんだよ!」

「目星は付けている。向かいながら、指示した位置の地脈を辿れ」

 レヴィと同様に、度々ルティウスと魔力を繋げていたフィデスなら、さらに居場所を絞れるだろう。

「よっし!見つけて⋯ちょっと家出のお説教しないとだね!」

「⋯あぁ。皆に心配かけた事は、きつく言ってやらねば⋯⋯」

 出遅れた竜神達もまた、ルティウスを探すべく宿の部屋を後にする。

 ロビーへと降りて、ゼフィラの伝言通り受付にいる案内人へ声を掛けてから、外へと出る二柱の神。

「で、ルティ君はどっちの方?山脈側?」

「あぁ。山の奥に、ルティの魔力の痕跡を見つけている」

「よっし、探すぞぉ!」

 町に二つしかない出入口の門。その山側へと向かうレヴィとフィデスが、同じ答えに辿り着いていた仲間達と合流するのは、それからしばらく後の事だった。


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