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竜と神のヴェスティギア  作者: 絢乃
第一話

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11/155

0011

「はぁーー、よかったぁ……」

 まだ完全に安心出来る状況ではないが、それでも無事であろうという情報は素直に喜ばしい。

 アミクスの無事を確かめられたのなら、次に成すべき事は決まっている。

「あとは、ここからどうやって出るかだよなぁ……ここがどこなのかも分からないからなぁ」

 洞窟の天井を仰いだまま呟くルティウスの声に、レヴィはまたもや重要な情報をさらりと伝えてしまう。

「ここは……人間には辿り着けないほど深い、地底だ」

 不明だった現在位置、答えはあまりにもあっさりと知れた。

「地底……?」

「そこの泉も地底湖のようなものだ」

 レヴィによれば、ここは水脈が交わる地点。だからこそ水脈を伝い、流されるようにして訪れる事が出来たのだろうと、予測を話してくれた。

 流されてきたのなら遡ればいい…それが河川ならば可能だったかもしれないが、水脈となると容易な話ではなくなってくる。同じ魔法を使えればまた別の地点へ飛ぶ事も出来たかもしれないが、術式そのものすら知らないルティウスには不可能でしかなかった。

「外に出たいのか?」

「……出たいけど、俺じゃあの魔法は使えないから無理だよなぁ、って」

「私は使えるぞ」

「んっ?」

 脳内で脱出方法を模索していたルティウスへ、もう何度目か分からない衝撃発言が届けられる。寝転んでいた地面から飛び起きてレヴィに向かい合い、言葉の真意を確かめた。

「使えるのか……?って、そうか……アミィも水神の力を借りてとか言ってたから、水神であるレヴィなら……?」

 魔法の使用可否を尋ねたと思いきや、ブツブツと独り言に耽るルティウス。多くを語らずとも、僅かなヒントから自身で考え答えを導き出す、それがこの少年の性格なのだろう。そんなルティウスにどこか懐かしさを覚え、レヴィは気付かれないよう微かに笑っていた。

「使えるが、今の私では魔力が足りないな」 

 本来なら、水脈を辿るだけなら造作もない事。けれど力の半分も取り戻せていない状態では、魔法を制御するための魔力が圧倒的に足りていない。制御が出来なければ、転送させたところで意図した場所に出る事も不可能になる。

「ルティの魔力を借りられれば、或いは……」

 先の、守り手との戦闘の際にも気付いていた。剣を構えた直後から、無意識に常時展開型の魔法を幾つも使い続けていた事。維持するだけで魔力を枯渇させかねない戦い方をしていながら、それでも魔法が途切れる様子は見受けられなかった。その事から、ルティウスが内包している魔力は膨大であろうと予測が出来る。それだけの魔力量があれば、地上に出るだけの転送ならば事足りるだろう。

「俺の魔力?そんなに大きくないと思うけど……」

「……やはり無自覚か」

 溜息を吐きながら告げるも、ルティウスは理解していないようだ。

「それなりの魔力を使う。まだ先の戦いで消耗した分が回復していないだろう。外へ出るのは回復してからの方が良い」

「……え?あれ、俺が気を失ってたのって、そんなに短かったのか?」

「ほんの数時間程度だ」

「いや、結構長いな」

 圧倒的に自分より博識であるはずのレヴィが言うのだから、今は回復に務めるのが最善なのだろうと、他愛のない会話を繰り返しながらも考え至る。

 一目見ただけでは冷たい印象を受ける容姿をしているが、話してみると優しさに溢れているのだと解る。どうして封印されてしまったのかは謎だが、きっと何か事情があったのだろうと自分に言い聞かせた。

 そして脳裏を過ぎったのは、一つのささやかな願い。

 彼も一緒に、外へ行く事は出来ないのだろうかと。

「なぁ、レヴィ…」

 言われた通りもう暫く身体を休ませ、魔力の回復を待つ事にしたルティウスは、レヴィへと尋ねる。

「あんたもここから、一緒に出られるのか?」

「…………何故?」

 質問に疑問を返されてしまい、しばらくの沈黙が訪れる。

「いや、レヴィも居てくれた方が、何かと助かる気がして」

 神という存在に縋る気は無い。その力を利用しようという気もない。ただ、一緒なら楽しそうだと思えた。

「先程も言ったが、今の私にはろくに魔法を使うだけの力すら戻っていない。お前の助けにはなれない」

「でも俺の魔力があれば、使えるんだよな?」

「………………」

 ほのかな優越感が心を満たしている。神を言い負かした!という気持ちから自然と笑みが浮かび、反対にレヴィは反論する言葉を失い、どこか悔しげな視線をルティウスへと送る。

「それに今の返事はさ、出ようと思えば一緒に出られるって意味だろう?」

「そうだが……二人の転送となると、ルティの魔力の負担が増える」

「でもレヴィなら、上手く制御してくれるよな?」

「…………出来ないとでも?」

 何とも人間くさい神だなと、落ち着いたはずの笑いが沸々と込み上げてくる。吹き出しそうになるのをどうにか抑えて、ルティウスは改めてレヴィへ向き直る。

「じゃあ決まりだ。レヴィも一緒に行こう!」


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