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竜と神のヴェスティギア  作者: 絢乃
第十話

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 一方その頃。

 ヴェネトス公国より遥か南方に位置する島国、フラーマ王国。

 炎の神を祀るその国は、長きに渡る日照りと干ばつで民が苦しみ喘ぎ、耐えかねた人々が他国へと流出する事態に見舞われていた。

 そんなフラーマ王国を守護する主神、炎の竜神イグニアの元には、珍しい客が訪れていた。

「なぁ、テメーが言ってた例の小僧だろ?火脈に干渉しやがったのは⋯」

「多分、ね」

 イグニアの前で微笑みを浮かべるのは、ヴェネトス公国を守護する風の竜神アール。

「本当に驚いたよ⋯風脈に触れただけでもすごいのに、扱いの難しい火脈にまで干渉できるなんてね」

「呑気な事言ってんなよ」

 アールの言葉通り、炎の根源たる火脈は、水脈や地脈よりもさらに深い大地の底を走る根。力を引き出すには炎の加護と、類い稀なる才能、そして大地そのものを割るレベルの魔力量を必要とする。属性の違いを抜きにしても、アールですら到底出来る芸当ではない。

「レヴィの子⋯だったか?」

「そうだね。僕の考えが合っているなら、だけど⋯」

「ついに、始まっちまうのか?」

 人型のアールより一回り以上も大きく屈強な体格をしたイグニア。その背には紅蓮の四翼、赤竜たる証が携えられている。

 見た目以上の思慮深さも持ち合わせたその神は、守護する国の状況改善を相談するべく、知に長けたアールを呼び付けていた。けれど話していたのは国の事ではなく、一人の少年と、その傍に付き添う同胞の事ばかり。

 だが風と炎、二柱の神が案じるのは、世界よりももっと大切な、仲間でもある水の竜の事。

「僕達は⋯レヴィのために何をしてあげられるんだろうね⋯」

「何も出来ねえだろ⋯あれは、あいつの『たった一つの願い』なんだからよ⋯」


 彼らは知っている。

 悲しみを背負う水の竜が抱く、本当の願いを。

 それを叶えさせる事が、どれだけの悲劇になるのかも。


「とりあえずよ、相談に呼び付けといてアレだが、テメーは国に戻れよ」

「⋯そうだね」

「向かってんだろ?あいつらが⋯」

「そうみたいだよ。ウェンティを通じて、報告は受けてるからね」

 答えながら碧色の四翼を羽搏かせたアールはふわりとその場に浮き上がり、風の魔力を纏わせていく。

「イグニア⋯」

「⋯あん?」

 自分の国へ帰るための転移魔法を発動させる前にと、アールは同胞へと問う。

「あの子は⋯レヴィを救える力を、得られるのかな?」

「⋯ま、期待はしてみてもいいんじゃねえか?」

「フィデスもあの子を信じてるみたいだからね⋯きっと、そうなんだろうな」

 二柱の神は知っている。

 もう一柱の同胞フィデスの、その本質を。

 再生と防衛を司る土の竜神。彼女に託された役目は⋯選別と案内。

 彼女が認めたのであれば、それはレヴィの願いを叶え、彼を救える存在に足るという事。


「そうだ、話を聞いてくれたお礼にさ、ヴェネトスからも少し支援してあげられるよう、ウェンティ達に話してみるよ」

「おーう、頼むわ⋯ったく、何だってこんなに土地が渇いちまうんだ?千年前は、こんな事無かったのによ⋯」

 それは神だからこその自虐。過程も結果も、原因も知っていて、その上で今の彼らには何も出来ない。

「ははっ、言えてる。まぁ、こっちも似たようなものだからね」

 全てが狂い始めたのは、大切な仲間を封印しなければならなくなった、あの時から。

 強い風が吹き荒れ、直後にアールの姿は淡い輝きを残して消え去った。

 独りになったイグニアは、その気配を辿るように空へと視線を向ける。

「レヴィ⋯⋯テメーはいつだって、自分勝手な奴だよ⋯」

 炎と水⋯その相反する属性を司る竜達の関係は、今も昔も変わらず好敵手であり、かけがえの無い仲間だった⋯──。


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