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竜と神のヴェスティギア  作者: 絢乃
第十話

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 レヴィが剣を振る姿を見たのが、最後の記憶。

 その後の事はどこか夢現な感じで、生きているのかどうかも分からなくて、少しだけ怖かった。

 あのまま気を失って、きっとレヴィがすごく心配してるだろうって、ずっと頭の中では考えている。だけど身体が動かないどころか、全身が痛くて、内臓が焼けたみたいにジリジリして、ただただ苦しくて…。

 ゼフィラから聞いたのは、俺が呪いの種子に浸食されているという事実。助かるには、俺自身が呪いの元を…あの黒い花を焼く必要があると言われて、正直悩んだ。

 だけど諦めたくなかった。俺に何かあれば、レヴィが悲しむしめちゃくちゃ怒る。怒られるのは別に良いけど、悲しませるのは嫌だったから。

 それなのに立っていられなくなって、自分の不甲斐なさに怒りさえ沸いた。

 起きなきゃ…立ち上がらなきゃ…レヴィに、大丈夫だって伝えなきゃ…。

 だけど声は出せない。それに身体の中で何かが暴れていて…。目を開ける事も、きっと伸ばされただろう彼の手を握り返す事も出来なかった。

 そんな時に俺の意識は、少しだけ浮上した。外の気配が分かって安堵したけれど、同時に俺の身体は焼けるような痛みを放った。

「⋯っ、う⋯ぁ⋯⋯ぁぁ!」

 また水の中に落ちたようで、冷たいと感じるのに、身体の中が熱い。まるで内臓を食い破られるかのような痛みを感じて、また意識が飛びそうになっていた。

 直後、俺の喉を冷たい何かが通り抜けた。

 身体の中に沁み込んでいくそれが何だったのかは分からない。喉は冷たいのに、すぐ傍から感じる吐息は熱くて、少しだけ混乱していた。


──⋯負けるな──


 優しい声が、聞こえた気がした。

 レヴィ…そう呼んでやりたいのに、口は動かない。何かに塞がれていたようで、だけどすぐに離れていった後、僅かに温もりが残っている事に気付いた。

 俺、もしかして…?

 混乱が加速する頭の中で答えを探すのと同時に、身体の奥から感じていた痛みが消えていくのが分かる。

 また、助けられたんだな、俺。

 ちゃんとお礼、言わなきゃな…。

 その前に、俺に何したんだ?って、問い詰めないと…──。


***


 空気の冷たさに身震いして、沈んでいた意識がようやく浮上していく。気を失う直前までどうしていたかは、朧げにしか覚えていない。

 けれど不安は何も感じない。頭の下から感じる温もりが、すぐそばに彼がいるという現実を教えてくれるから。

「目が覚めたか」

 すぐ頭上から聞こえてきた声に、ゆっくりと瞼を押し上げる。微睡みから覚めたルティウスの視界には、いつもと変わらない表情で見下ろしてくるレヴィの姿があった。

 その位置関係からまた膝枕をされているのだと理解し、軽い溜め息が零れてしまう。

「俺、どうなってたんだ…?」

 状況を尋ねながらも起き上がろうとする。だが身体に力は入らず、再びレヴィの膝へ頭を預ける事になってしまった。

「急に動くな」

「…何で、こんなに身体重いんだろ…」

「覚えていないか?」

 大きな白い手が、ルティウスの緋色の髪をそっと撫でる。けれどその手は温かいのに、ほんの少しだけ震えていた。

「呪いを受けた事は…?」

「…覚えてる」

「お前が黒い花を焼いた事は?」

「それも、覚えてる」

「その先は…?」

「………微妙」

 はっきり記憶に残っているのは、自分を守るために剣を握るレヴィの背中。その先は全てが夢のように朧げだった。

「それよりもさ…」

「…ん?」

「ここ……どこ?」

 身体が動かないため、視線だけを周囲へ向ける。少しだけ薄暗くて、空気が冷えていて⋯その風景はどこか見覚えのあるもの。

「なんかさ、似てない?」

「⋯⋯そう、思うか?」

 ルティウスが抱いたのは、ここがレヴィと初めて出会ったあの地底の泉に似ているという感覚。言葉にせずとも察したのか、レヴィも否とは言わずに柔らかく笑い、そして視線を遠くへと向けた。

「ここはかつて、私が⋯あの場所に似せて造ったものだからな」

「⋯造った?」

 そういえばこいつは神だったな⋯と、レヴィの一言を受けて今更のように思い出す。過保護に世話を焼こうとする姿ばかりを見ていたせいで、彼が神の一柱である事を忘れそうになっていた。

「似ていると感じたのも不思議ではない。アールに頼まれて聖域を造る時に思い浮かべたのは、私が封印されている、お前と出会ったあの地底湖だったからな」

 金色の瞳は、過去を懐かしむように細められている。

 そしてルティウスもまた、すぐ側で淡い輝きを放っている泉へと視線を向ける。

「⋯なんかさ、状況も似てない?」

「そうか?」

「だってそうだろ?俺が気を失ってて、目を覚ましたらあんたが居て⋯こんな感じの薄暗い場所で、泉が光ってて⋯⋯」

 ただ違うのは、あの時よりも自分の身体が動かない事と、レヴィに対する信頼の大きさ。

 そして気付く。レヴィがいつも羽織っているローブの、白い上着が自分に掛けられていた事に。

「これもさ⋯あの時もこうやって、俺に掛けてくれてたよな?」

「そうだったな」

 そして違うのは、露出しているレヴィの左肩に、傷痕が増えている事。

 あの時から少しずつ変わっている。だけど変わらないものもある。


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