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ギルドは規約と書類でできている

// 城壁都市アーヴェン。夕刻、冒険者ギルド。


(扉を開けると、喧騒と酒と革の匂い。掲示板には依頼がびっしり)


レオン「ただいま戻った。サラマンダーの件、報告と……新人の登録を」

受付嬢カリン「お帰りなさいレオンさん。えっと、新人……?」


(全長2mの金属生命体が背後で直立)


店内「…………(静寂)」→「(ざわ……)」→「(酒こぼす音)」


ミリア(小声)「落ち着いて。――“私が召喚しました”。ね?」

ガロス(小声)「言い切ったな」

バルド爺「神妙な顔をするのじゃぞ、信憑性が増す」


アイちゃん「私は戦闘用アンドロイド、型式番号TAC-EX9――」

レオン「名称は後で。まず登録を」


カリン「は、はい……では登録用紙を。お名前、種族、年齢、職能、連絡先、得意分野……」


アイちゃん「正式名称は『Tactical Android Centurion—Experimental 9』。文字数は――」

カリン「16文字以内でお願いします!」

アイちゃん「では“アイ”」

ミリア「“ちゃん”つけとこ。“アイちゃん”」

カリン「可愛い……(ペン走る)」


カリン「次、種族は……」

レオン「ゴーレムで」

アイちゃん「人造ですが魔力駆動ではありません」

ミリア「“ゴーレム(その他)”で!」

カリン「“(その他)”便利……」


カリン「年齢は?」

アイちゃん「製造から5年4ヶ月、起動時間累計29,431時間」

カリン「……数字で言われても……人間の年齢にすると?」

バルド爺「成人でよい。中身が固い」

カリン「了解、成人扱いで」


カリン「職能は?」

レオン「戦闘支援・偵察・解析」

アイちゃん「+浄水と井戸掘り」

カリン「最後の二つが生活に刺さる……はい、記入」


// 顔写真(魔導印)の撮影へ


カリン「では魔導印を――こちらを見てください。3、2、1……ぱしゃ」

(白飛び)

カリン「ま、真っ白!?」

アイちゃん「照明を通常値に戻します」

(肩ライトOFF→再撮影)

カリン「……赤目(センサー光)が怖い……もう一枚! はい、にこっ――あ、にこっは無理ですね」


// 登録完了。だが――


カリン「それと……ご説明が。新人加入に伴い、パーティランクは規約により一時的に“C”へ降格となります」

ミリア「うわぁぁぁ! 言われたとおり……!」

ガロス「BからCかよ! なんでだ!」

カリン「新人の安全と教育のため、監督責任の観点から――」

バルド爺「最近の若い規約は細かいのう……まあ、一理ある」


アイちゃん「先ほど道中でミリアが述べた内容と一致。理解済みです」

レオン「ほんとに覚えてたのか……」


アイちゃん「目標を更新:最短でBに復帰。その後、Sランクへ」

カリン「え、えっと、そのためには――C級3件以上の達成と、評価A以上の実績が――」

アイちゃん「条件を確認。プロセス短縮の余地あり」

レオン「やめて、制度改革に踏み込まないで」


// 手数料と身分証の確認


カリン「登録手数料は銀貨2枚、身分証の提示を……」

レオン「僕の保証で。連帯責任は僕が取る」

カリン「レオンさんの信用度なら可、です。――はい、ギルドカードをどうぞ」


(小さな金属札が配られる。魔力で名前が浮かぶ)


ガロス「お、俺のは擦り傷だらけで渋いな!」

ミリア「私の“ミリアちゃん”になってる! “ちゃん”勝手に付けたの誰!」

カリン「……つい、癖で」


アイちゃん(カードを透過スキャン)「偽造防止:魔力紋+微細刻印。厚み不足、曲げ応力に弱い。改良余地あり」

カリン「声が大きい! 聞こえちゃいます!」


// その時、掲示板前で揉め声。別パーティが“野盗退治C級”の札を取り合い。


ならず者A「おい、それはうちが先に目ぇ付けてた!」

ならず者B「あぁ? 取った奴が先だよ!」


レオン「……こういうの、嫌な予感しかしない」

ミリア「うちもC級だし、最短で3件こなさないと」

ガロス「野盗なら俺の見せ場だな」

バルド爺「殺生は控えめにな」

アイちゃん「非殺傷戦術“衣類剥ぎ”を提案」

ミリア「記録から削除して!!」


カリン「でしたら、こちらはどうです? “洞窟の光”の調査C級。危険度低、報酬は控えめですが、早く終わります」

レオン「それ、いい。まずは足慣らしに」

アイちゃん「洞窟=照明の最適化が必要。準備はあります」


// 出発前、受付前で小さな儀式――ギルドの“救難鈴”の説明


カリン「万一の時はこの救難鈴を。魔力を流せば、近隣の鐘が鳴ります」

アイちゃん「魔力無し。代替手段?」

カリン「……物理で振ってください」

ガロス「結局筋肉かよ!」


// 扉へ向かう一行。背中に視線――


酒場客A「……今の、なんだ?」

酒場客B「“光の神の従者”だって噂の金属人形だ。昨日、洞窟でゴブリンが拝んでたらしい」

酒場客A「神か……ギルドは幅が広いな」

カリン(小声)「お願いだから問題は起こさないでね……!」


レオン「よし、行こう。“洞窟の光”を確かめてさっさと1件」

ミリア「ライト魔法、今日は主役だね!(ドヤ)」

アイちゃん「近距離全方位照明は視界を塞ぎます。スポットを推奨」

ミリア「毎回それ言うのやめて!」


// 扉が開く。夕闇と街の喧騒の向こう、次の依頼へ。


アイちゃん「目標:C級依頼クリア×3。――最短経路を算出しました」

ガロス「お前、地図見ないでどうやって……」

アイちゃん「“経験”と“勘”です」

レオン「嘘つけ(かっこいい言い方で誤魔化したな)」

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