01-2. 涙のわけ
「BKってさ、あざといよね」
着替えながらまみりんが言ってきた
「え? なんでぇ」
「だって、涙出しちゃってさ」
「あれはライトが目に入っただけだって」
「え~ほんとかなぁ?
ワタシもすぐ泣けるように練習しようかな」
「あ、もう上がってるよ
BKの涙尊い、だって」
そう言ってるるちゃんがスマホの画面を見せてくれた
SNSに先ほどのシーンがもう上がっている、涙が滲んだのはほんの一瞬のはずなのに目ざとい奴はいるもんだ
「ほらぁ、絶対狙ってたでしょ」
まみりんは何かとわしに突っかかってくるのう
まさか藤原氏の栄枯盛衰が虚しゅうて、などとも言えぬしのう
まぁでも陰湿に裏で悪口を言わずに、面と向かって言ってくれるサバサバ系でよかった
かわいいものではないか
不思議なものでオナゴに生まれるとオナゴ同士の張り合いがよく理解できる
前世だったらくだらぬと吐き捨ててしまうところだったわい
「じゃあ、今度はみんなで涙のサヨナラにしようか」
「それはやりすぎよね、毎回やってるとウソくさいし」
「それなら順番で泣こう」
「やだもう、BKったら」
張り合ってはいても仲たがいするほどでもない
この世代の若者は処世術とやらにも長けており、なんとなく落としどころを見つけるのが上手い
これも平和のなせる技ならば、わしの望んだ世界に転生させてもらえたようだ
義経さまの行方がわからぬのが気がかりではあるが、我らは赤い糸で固く結ばれておるはず、いつか必ず会えると信じよう
それにしてもわしは何ゆえオナゴに転生してしまったのじゃ?
こんな姿で義経さまはわしに気付いてくださるじゃろうか




