00-2. 鬼神・弁慶、ガチャ神に会う
気が付くと弁慶は暗い道を一人歩いていた
あの世へ行くというわりには地味よのう
せめて経さまと一緒なら楽しい道行きになろうものを
などと考えて歩いていると前方に灯る灯りの中に、白い服を着た男が立っているのが見えた
年寄りにも若者にも見える不思議な風貌の男だ
そして、その後ろには見たこともない面妖な箱が置いてある
大きさは山伏が担ぐ笈ほどで(約55cm×46cm)、木でも鉄でも銅でもないつるりとした外観
中央には丸い取っ手が付いている
「ブラボー、ブラボー、ブラボー」
男は弁慶に向かって大仰に手を打って叫び出した
「はて、武羅坊とは…
わしは武蔵坊じゃが、どなたかな?」
「おお、そうであったな、これは失礼
私はこれでも神の一柱、ガチャ神というものである」
「我茶神?
すまぬが聞き覚えがない」
「なんでもかんでも漢字にしなくてけっこう
私はその名の通り、このガチャマシーンのメンテを…あ、いや、ガチャからくりの点検を任されておる者じゃ
知らぬのも無理はない、わが国には800万もの神がおわすうえ、わしはかなり序列が下の方でな
まぁ、便所の神様とほぼ同じくらいの扱いと思ってくれ」
便所の神様?
けっこう上の位のような、そうでもないような
弁慶はどの程度ありがたがったらよいのか計りかねていた




