01-13. ハッピーバースデイ
1カ月後
『スーパーアイドルBK,20歳の生誕祭!』
と銘打って誕生日イベントが池袋で開催された
このショッピングモールのローカルなステージがわしのデビューの地だ
あのときはすっかすかのお客さんだったのに、いまは階段から落ちそうなくらいの大盛況
嬉しくて泣いちゃいそう…ってな余裕はない
ここにきっとあの方はいらっしゃるはず、見逃してなるものか
バースデイイベントは各メンバーごとに握手会の他に特別にプレゼントを渡してもらえる
ご時世なのか普段はプレゼント手渡しはNGだし、このイベントもファンクラブ会員で登録した人しか近寄れない
刀剣好きがバレたせいか、プレゼントは圧倒的に刀剣レプリカが多くなってしまって、ステージは刀の見本市みたいになっているのもご愛敬
前世では1000本集めるのに苦労したのだが、現世ではあっという間に集まりそうだわい
その間もずーっと探し続けているのだけれど義経さまらしいお方は見つからない
ひとりひとり、ぐぅっと力を込めて握手をしているのだが誰もピンとこないのだ
おかげでSNSではBKの握手が真剣で嬉しかったとご好評だったが、なかには力が強すぎて手を痛めたというヤワな感想も…すまん、やりすぎたかもしれん
結局、ナンバー9さまはいらっしゃらなかった
(もしかして私が見過ごしたん?
まみりんはなんで前世の私が分かるのかな、何かコツがあるのかしら)
「BK、BK、たいへん!」
イベントが終わって最後のお見送りが終了すると、先に戻っていたメンバー4人が楽屋から走り出してきた
「BK,すっごいのが届いてるっ」
(この件、何回やるのよ)
だが、今回はリアクションが若干違う
まみりんまで一緒になって声をそろえて叫んだのだ
「BK、恐ろしい子!」
はいいいい?
慌てて控室に行くと、大きな花束を抱えた人が後ろ向きに立ってキョロキョロしていた
(ま、まさか、ご本人さま登場?)
「すいませーん、手渡しでって頼まれてるんで、BKさんのサインお願いします」
あー、花屋さんなのね
そりゃそうだわ、控室にまで入って来れる人限られてるもんね
「はい、確かに」
そう言って渡されたのは
「すっごぉい、リアルで初めて見た」
「これって実在するのね」
「て言うかぁ、マジで贈る人が実在するのにびっくりだわ」
スタッフもメンバーもみな驚きあきれるその花束はまさしく
巨大な『紫のバラ』の花束
恥っずーーーーー!
間違いない
このノリ、この空気を読まないてか、人の迷惑顧みないプレゼント
(前世でもちょいちょいやらかしてたなぁ…)
「紫はいちおう、BKのカラーではあるよね」
「でも、インパクト強すぎww」
「BK、おっつーwww」
みんないじりたい放題でSNSに上げておるが、しかぁし
わしは見逃さなかった
バラの花に隠された1枚のカードを!
■紫のバラの人
美内すずえ先生の超大作少女漫画「ガラスの仮面」(1975~現在連載継続中?)で主人公の北島マヤが謎のファンから贈られるのが紫のバラの花束。
後に敵対する会社の御曹司、速水真澄が密かに贈っていたのがわかるのだがそれは禁断の恋の始まりだった。
恐らく女性ならば若い人でもピンとくる贈り物だが、男性にはまったく?であろう。
ちなみにBKのカラーは紫なのでギリセーフなのかもしれないが、もはやギャグにしかならない花束を贈られるのもなかなかにイタイ仕打ちである。




