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01-9. 一ノ谷の思ひ出

時は1184年春

場所は兵庫県神戸市須磨区一ノ谷


我ら源氏の精鋭70名はスキーのジャンプ台のような絶壁から平家の陣を見下ろしていた

兵士らが豆粒のように見える様を差し、義経さまは檄を飛ばす


「皆の者ひるむな、鹿が行けるならば馬も行けようぞ

 我に続け、きゃつらの度肝を抜いてやる」


(鹿とか馬とか馬鹿なの? うちの親分てイカれてる?)

と内心思った者もおったであろうが、800年前はコンプラなんてないパワハラし放題のご時世じゃ、仕方のないことよ


あの方は笑っておられた

ゾーンに入っちゃうと誰にも止められないそのクレイジーさは、賭けてみたいと思わせる魅力に満ちていた、少なくともわしにとっては


「弁慶、我の背はおぬしに任せた、すべて薙ぎ払え!」


そう言ってあの方は崖から身を躍らせた

わしも後に続いた、その背中が最後のお姿なのかもしれぬと思いながら


これが世に言う一ノ谷の戦い、鵯越(ひよどりごえ)の逆落としである

(諸説あり)


ねぇ、まみりん

なぜ知ってるの?

あの時、彼が私に囁いたあの言葉を

あなたなの?

あなたが義経さまなの?


だめだめだめだめ

いまはステージに集中しなくちゃ

この振付は上の空でできるほど簡単じゃない


まみりんを抱えてステージ中央に躍り出る、ここでスロージャンプ!

つまり、まみりんを放り投げなくちゃならない

ふわりと浮いた体を確実にキャッチして着地させないと、超厚底ブーツを履いてるまみりんは足をくじいてしまう


もちろん練習でミスったことは一度もない、それなのにその時に限ってライトが目に入って半拍遅れた

(危ない!)


思った瞬間もう遅く、まみりんの体が腕からするりと抜けて落ちた

ぐきっ!

音が聞こえるわけはないのにはっきり聞こえたの

足を捻った体制のままうずくまったまみりんを抱きしめたけど


(まみりん!)


まみりんは一瞬だけ顔をゆがめたけどじっとこらえている、どうしよう、どうしていいかわからない

アイラとるる&るなは振付通り蕾のようにふたりを囲んで覆い隠した、心配そうに目が泳いでる

あと8秒でこの蕾を開かなくてはならない


「まみりん、まみりん、まみりん」


ばかみたいに繰り返すわしの頬をまみりんは両手で挟み、そっと唇を重ねた


「BKしっかりして!」


わしは我に返りうなずいた


「3、2、1、行くよ!」


その後はもう覚えていない

神々しいまでの白き姫路城が見下ろすなか、まみりんは何事もなかったように歌って踊っている


(いまここにいるみんなを楽しませなきゃ)


南無八幡大菩薩

我に力をあたえたまえ!

■一ノ谷の合戦

源義経のメインイベントのひとつ。

とても軍勢が降りられないと思われた急坂を駆け下り、平家の軍を背後から挟み撃ちにして源氏軍が打ち破ったとして有名。

馬が可哀想なので背負って降りた武将もいたとか、平家の若武者を涙ながらに討ち取ったとか、サイドストーリーにも事欠かない。

弁慶の場合、馬がつぶれるのでたぶん走って降りたのだと思われる。

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