表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書に転生したけど読まれたら即チート発動  作者: 暁えいと∞
第1章『書物の魂』
3/51

第3話「選ばれる資格」

時が経つ感覚も曖昧なまま、レンは書庫の一角でただ“在り続けて”いた。


棚に並べられてから、どれほどの時間が経ったのか――


時折、魔導士たちがこの古びた魔導院の書庫に訪れては、必要な書物を手に取り、ページをめくっていく。


だが、誰ひとりとして、レンを手に取る者はいなかった。


(……どうして誰も読まない? 俺の中には、知識も魔力も詰まっているのに)


誰にも認識されないまま過ぎていく日々。


レンの中には、焦燥と無力感がじわじわと広がっていった。


(このまま、永遠に誰にも読まれず、ここに置かれ続けるのか?)


“誰かとつながりたい”――その欲求が、強く、確かに、自身の中に芽生えていた。


そんなある夜。


書庫は静まり返り、魔導の灯がほのかに揺れているだけだった。


その空間に、ふと、奇妙な空気の流れが生まれる。


レンの意識が、突如別の次元へと引き込まれた。


眼前に現れたのは――かつてこの世に存在した「契約者たち」の幻影。


それは夢か記憶か、それとも魔導書に刻まれた“歴史”なのか。


映し出されたのは、かつてレンと同じように「魂を宿した魔導書」と契約した者たちの姿だった。


誇り高く力を行使した者。


力に溺れ、仲間を裏切った者。


狂気に呑まれ、世界に災厄をもたらした者――


「……俺の力が、彼らを変えた?」


恐怖とともに湧き上がる疑念。


自分が与える力が、人を破滅へと導いたのではないか――


そのとき、幻影の中から一人の女性が静かに歩み出た。


若き日のオルガ・マギウスによく似たその姿は、柔らかな微笑みと共に語りかける。


「力は、それを使う者次第。あなたは“選ぶ”ことができる。誰に力を与え、何を共に目指すのかを」


幻は消え、再び書庫の静けさが戻る。


レンは静かに心に刻んだ。


(そうか……俺には“選択する権利”がある)


力を与える者として、ただの道具ではなく、意思を持った存在として――


(ならば、俺は“正しい契約者”を待とう)


その瞬間、レンの装丁に刻まれた古代文字が、かすかに光を放った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ