9話 この世界で初めての最大のピンチが
「まじで本当に何をしてるの!」
「いや、だから、そのー・・・ねっ」
「いや、これはシャレにならなって、笑えないって」
しょうあは力強く大きな声で名を責めてくる。ご、ごめんって。でも、雰囲気的にこう言うしかなかったから。しょうがないじゃん。あと、なぜ名にだけ責めてくるの?これは、人に罪を擦り付けるつもるはないが、なゆのも悪いでしょ。
そんな、なゆのは机に座って、紙に文字を書く練習をしていた。ただし、ずっとカタカナの『が』ばかり書いているように見える。名が怒られているのを見て、巻き込まれたくないからか、私は関係ありませんっていうような表情をしている。お、おい。ひどいよ。ずるいよ。
「ねえー、ななと聞いてるの。何か言ってよ」
名は神妙な顔をして、静かに立ち続けているのだった。何と言えばいいか、わからない。部屋に気まずい空気が流れ、沈黙が続く。
すると、部屋に園長さんが入ってきた。
「お疲れ様でした。どうでしたか」
しょうあは顔を横に振って、答える。
「はい、皆さんいい子でスムーズに授業を進めることができました」
「それは、良かったです。明日は別の子たちになると思いますが、大丈夫だと。頑張ってください」
そう言って、戻るとすると、しょうあが、
「すみません、この辺に魔法とかが学べるっていうか、調べることのできる場所はありませんか」
と焦ったような感じで聞いた。そしたら、園長さんが言う。
「やはり、奥香増の方から来たという皆さんは魔法について知らないのと勉強がしたいものなんですね」
「というと・・・?」
しょうあが聞く。園長さんは、
「これまでの皆さんもこの町で魔法のことを知ったようで、習得したいと言うんです。そこで、香増市に唯一ある香増魔法・剣術学校に通われるにが定番となっています」
と言う。続けて、
「今から学校の方へ行って見ますか?ここの副学長もしているんです、私は。案内しますよ」
と言ってきた。しょうあはすかさず言う。
「ありがとうございます」
名たちに向けて言う。
「2人ともついて行くよ」
とても機嫌が悪そうだ。確かに悪かった、悪かった。でも、そこまで怒ることではないでしょ。
歩いて向かう最中、しょうあが話しかけてきた。
「ごめん、流石に言い過ぎた。言い方きつかったよね。すまん」
「いや、・・・こっちも今回のことは調子に乗りすぎた。でも、言っちゃったことはもう後戻りできない」
「ああ、わかってる。ただ、どうやらこの世界は本当にゲームのような世界のようだ。これからのことを考えても魔法を習得することは重要だ」
しょうあは続けて言う。
「この世界は確かに自由だ。自分の好きなように行動することができる。その変わり、した発言も含めて自己責任だ。今回のこともそう」
「もし、魔法が使えない、あるいは物凄く威力が弱すぎる場合もある。相手に強い人を呼んできて、ボロボロにされて終わってしまったりしたら、ここまで頑張って森林を抜けてきた努力も水の泡だ。全てやったことは自分に返ってくるかもしれない」
「つまり、自分で自分の命を守る。これが当たり前だ。だから、やることなすこと慎重かつ、大丈夫だと思えば大胆に行動することが大切。これだけは覚えておいて。お願い」
はい、わかりました。名は小さくうなづく。しょうあの言う通りだ。これからはもうちょっと気をつけるよ。ただ、一つだけ。なゆのにその話をしなくて大丈夫。名は正直、なゆのの動きが心配だ。何かこのあと何か起こりそうな気が・・・。
なゆのの方を見る。少し微笑んで歩いている。何か怖い。やらかしてしまいそうな。
目的地に到着した。ちょうど、生徒が入ってきている。こういうところは、よくある魔法使いの格好をしてくる人がたくさんいるのかなっと勝手に想像していた。しかし、みんな普通に外で見てきた姿ばかりだった。ちなみに、名よりも少し小さい子からさっきまでいた子と同じくらいの子がほとんどだった。
門の前で待っていると、1人の男性が園長さんと一緒にやってきた。連れてきてくれたようだ。
「君たち、私に用があるようだが、何かね。忙しいから早く済ませてくれ」
すごい目つきの悪いおじさんだ。しかも、嫌な登場の仕方で態度も悪い。ただ、もしかしたらここの学長かもしれない。念のため暴れないようにしよう。
「あのお、僕たちこちらに最近やってきた者で、とある事情で魔法のチェックっていうか、検査みたいなことをしたいんですが・・・」
しょうあがそう言う。すると、
「で、お金は。ここで何かしらしたいんならとにかくお金!1年クラスと3か月クラスと1週間クラス。一番短いこれで1人銀貨2枚。3人なら当然6枚だ。出せるの?出せないなら出せるまでためてから来なさい」
「うっ、ももっともです。えっと、ただ・・・」
しょうあはこれ以上言えなかった。それもそうだ。そんな高いお金なんて持っていない。まあ、でも学校に通うならそれくらいはする。仕方ない、頑張って貯めるかっと言いたいところだが、そんなことは言ってらんない。貯まるのを待っていたら、あと何日かはかかる。
あと、やっぱり言い方が凄く腹立つ。すると、なかなか反応しない名たちを見て痺れを切らしたのか、こう言い放った。
「ああ、もう、払えないなら帰ってくれ。これまで来たお前たちと同じようなやつらもこのあたりで何日も働いて貯めてから1週間通ったんだ。あーー、もう邪魔だ」
確かにその通りだ。名たちはわがままだ。それはわかっている。しょうあもどうしたらいいのか、わからないのか、いつもの冷静な対応もなく顔を下に向けて無言んで突っ立ている。どうにかしようとしてパニックになっているのかも。しょうあ、ごめんね。
「おい、お前らこいつらを外に出してくれ」
建物の前にいる衛兵みたいなやつに手を振ってこっちに来るように言っている。これは本格的にヤバい。過去最大の大ピンチかもしれない。名たちが悪者扱いされてるのか。それにしても、何と性格の悪いやつなんだ。すると、なゆのが突如発言した。
「おい、おい、さっきから聞いててたら、お前うるさあいな」
「何だ、お前!」
っていうか、さっきから名のことをお前って。名に向かってお前なんてお前が初めてだぞ。多分。
なゆのはいかにも相手を見下しているような表情で声を出してきた。
「おーう、おおー、いい度胸じゃねえか。こっちに喧嘩を売るとは。私はこの学校の学長、波浮だ。ちなみに、この市の議会の議長もしている。つまり、お前たちがしていることがどういうことかわかるか」
ヤバい、ヤバい、ヤバい。これはガチでやばい。しかも、なゆのに腹を立てているのかと思えば、こちら全員にのようだ。これは本当に命の危機のような気がする。心臓がバクバクする。一気に震えが止まらなくなった。表情は変えないが、もう体が動かない。だ、誰か助けて。
「ちょ、ちょっと待ってください。いやあ、この子(なゆのの肩を叩いて)まだ、人の感情がまだ理解できてなくて、すみません。どうぞご許しください。・・・ああ、ではそろそろ私たちはこれで」
しょうあは突如こう言い、名となゆのの手を引っ張て、帰ろうとする。っていうか、そもそも学校の敷地の中には入っていなかった。なら、別に衛兵に外に出せ何か言わなくても良いのに。おそらく、頭が悪いのかな。いや、多分そこまで見ていなかったんだろう。
正直、このしょうあの行動は途轍もなくダサいが、ここではこれが正しいと思った。命あっての人生だから。悔しいし、イライラするし、屈辱だけど、ここは我慢だ。
すると、ここでなゆのがまたもやいらない発言をしてしまった。
「おい、しょうあ。本当にそんな姿でいってもいいのかあ」
うう。そのなゆのの発言に名は感動した。そうだよ。そんなんじゃダメだ。っと、納得してしまいそうだった。
なゆの、その発言は違う。名の勘が当たってしまった。なゆのが何かやらかすのではないかと。いや、とっくにやらかしてはいるが。なぜ、しょうあはさっきのことをなゆのには話さなかったのか。絶対に話すべきはなゆのだっただろ。
名は学長の方を見た。間違いなく怒りが強くなっている。あ、これはもう駄目なパターンだ。こうなったら、急いでここから逃げて近くても隣の町までは行かないと。いや、香増市からは出るべきだろうか。
突如、言語学校の園長さんが声を張り上げてこう言った。学長を連れて来てからは、静かに様子を見ていた。
「はい、銀貨60枚」
そう言うと、学長の手に向かって強くぱちっと音をさせて渡した。
「ふんっ」
そう言い、お金を受け取る。
「ついてこい。さっそく、今から担当を呼んできて教えてやる。なお、さっきの私に対する発言は、私を侮辱したとして、明日議会で審議する。心を震わせて待っているといい」
「ああ、えっと、楽しみに待っているるよ」
なゆのはそう返答する。そして、学長について行く。名としょうあはここまでの流れを啞然として見ていた。しょうあは何も言わず、動かずに突っ立ている。
そこで、名は園長さんに聞いた。
「あ、あの、なんで今のような行動を。どういう意図で。園長さんにこんなことをするメリットなんてないような。あと、きちんと返せるかはわからないのですが」
珍しく名が気になったことを自ら声を出して聞いた。それくらい、衝撃のことだったし、混乱もしている。
「あなたたちのその必死な様子を見て、黙っていることなどできないでしょう。別に返して何て言いません。まあ、できれば遅くてもいいから少しは返して頂きたいですけど。それに、何かあなたたちのことを助けてあげないといけないように感じたから」
園長さんは続けて言う。
「それにこの行動は私自身が勝手に決めたこと、気にする必要なんてない。ほら、あの人について行きなさい。あと、今日の授業が終わったら、私の家に来なさい」
そう言われ、家までの道のりの書いたマップをくれた。そう言い残し、この場所を去っていく。
しょうあは気を取り戻したようだ。
「しょうあ、行くよ」
「ああ、ななと。あ、園長さんに感謝を言わないと。園長さんはどこ?」
「もう帰ったよ。あと、授業が終わった後、家に来いってさ。さっ、改めて、しょうあ、行くよ」
「ああ。後で感謝伝えなきゃね」
そうして、学校の校舎へと入っていくのだった。今の名、現在混乱中だったいつもしっかりしているしょうあに対して、上手に対応できてかっこよかったなあ。名もやればできるんだ。
そう思いながら、歩くのだった。これからの生活で問題は多く残ったけれど、一旦そのことは忘れよう。まあ、結果オーライだろう。
これからも作品をお楽しみください。




