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6話 東香増での生活の始まり

名たちは5分ほど歩いて、この町のお偉いさんの一人に会いに行った。少なくとも1週間ほどお金を稼いだり、1着しかない服や食材を買わないといけないためだ。


 「すみません、副市長からこちらに行くようにと言われてきた、えっと、旅人の者なんですが」


しょうあがそう言うと、奥から一人出てきた。


 「ああ、久しぶりの旅人かあ。俺は武蔵。この町に住んでいて香増市議会に参加してる者である」


 「どうも、こんにちは。少なくとも1週間くらいここにいる予定なんですが、あまりお金を持っていなくて、何か働き口と食べ物を売ってるところ、あと衣類も売ってるところを教えていただければなっと」


 「ふむ、そういえばちょうどこの町の学校の先生が1人辞めてね。今、人不足なんだと聞いておる。あと、他に力仕事なんだが運搬やらのものも人が足りておらんっと言っていたな」


 「はあ、なるほど」


 「まあ、可愛らしいお嬢さん二人と眼鏡の坊や、皆力仕事ができそうな体ではなさそうだな。学校では、7歳前後の子供たちに書き言葉と普段の生活ではあまり用いらない話し言葉を教えるだけだ。そこまで大変ではあるまい」


何か人を見た目で判断して馬鹿にされているように感じたが確かに体力はない。小学生のときはまだしも、中・高では体育の時間と散歩くらいしかまともに運動をしていない。体力テストでは毎回、DかEだ。逆にこの体力でここまで来た自分がすごいとまで感じるな。


 「ななと、どうする」


どうすればいいだろう。力仕事をできるとは到底思えない。しょうあも名と同じく体力はない。かなのはどうだろう。ちょっとわからないな。でも、ここまで弱音ははいていない。

っていうか、お嬢さんって。はじめて言われた気がする。大体周りからは下の名前だったり、苗字だったり、娘さんだったりとしか言われたことがないから、何か嫌な呼ばれ方だなっと感じた。


 「僕はこの仕事でいいんじゃないかなっと思う。簡単ではないかもしれないけれど、頑張ればこなせると思うよ。なゆのには無理かなっと思うけれど」


しょうあはそう言うと、武蔵さんに質問する。


 「何人、募集しているんですか」


 「辞めたのは一人だけど、二人くらいならいけると思うよ」


しょうあは名に聞く。


 「ここは、とりあえず僕とななとでお金を稼ごう。それとも嫌?一人でも足りなくはないと考えてはいるけれど」


人に教えるなんてしたこと一つもない。ましては、近年小さい子との接点すらない。でも、意外に面白いかなとも感じた。あと、ここでしょうあは働くのに、自分は、のははーなんてしてるのはダサすぎる。正直、みんなの前に立ってっていうのは怖いし、いざどうなるのかもわからないが、やるしかない。


自分頑張れ、この名様ならできると、そういい聞かせて。どうせなら先生らしく自分なりに教えよう。勿論、クールにカッコつけさせてはもらう。


 「よし、しょうあ。我々の力見せつけてやるぞ」


 「いや、戦うわけではないんだけど」


しょうあは武蔵さんに対して言う。


 「よろしくお願いします。あと、ついでに何ですけど、この子(なゆのの方を見て)、とある事情で文字が書けなくて、話し言葉もまだ不十分で。一緒っていうか、学校で教えることってできますか」


 「ああ、生徒の皆と一緒に。まあ、あなたたちが教えるときに後ろに彼女もいさせるというのは構いませんよ。そこは教える側の特権っていうか、実際に自分の子を自分の受け持つところでっていうのは、これまでたくさんありましたから」


続けて言う。


 「で、学校での仕事を受け入れるということでよろしいですね。お二人でとりあえず5日間。明日からさっそくですね。1日30分×3回、それぞれ日によって子供たちは変わります。二人で教えるとなると、ちょっと人数は増えますね。30~40人くらいかな。まっ、頑張ってください」


そうして、話しは終わった。帰りにパンが食べれる飲食店で昼食をとった後、服屋へ向かった。せめて、1着はないと。


すると、途中に新たに自分の好みに服を縫ってくれるお店があった。正直、町を歩いてる最中に見た人の服や店に飾ってある服は、もう自分が全く着用したことがない服ばかりで何か嫌だった。


そこで、名は今着ている服とほとんど同じようなものを縫ってもらい、それを買った。ちょっと高いけれど、しょうあは許してくれた。どうやらこの気持ちは同じようだった。

ちなみに、しょうあも同じようにした。なお、ズボンは色違いのものが家にあったという理由で、ズボンは色を黒にした。


そして、なゆのはというと、漆黒の中袖の服に白のズボンみたいなスカートに近いものを買った。ちょっと、うまく説明できなかった。

とはいえ、今着ている服なのかわからないようなのとは違う姿が見れるっていうことで嬉しくなった。下着は・・・今のと同じように縫ってもらった。肌に直接あたるものなのにも関わらず肌触りがよくないのであれだが、再び我慢するところがやってきたようだ。

当たり前だけど、やっぱりなゆのは着用してなかったので、多分名と体型は変わらないと判断させてもらい名と同じのにした。お、サイズはピッタリのようである。これで名の不安が一つ解消された。


そして、部屋へと戻った。なお、お金は全て使ってしまった。しょうあ曰はく、明日の朝食は学校で特別に用意してくれるそうなので、今日の夕食はまたもや我慢とのこと。


久しぶりのシャワーを浴びた。やっと、体をきれいにできる。いつか、風呂にも入りたいな。


とにかく、肌触りの悪いのを着て、ホテルによく置いてあるやつも着た。向こうの世界にいるときにも思ったが、これは何て使い勝手の悪いものなんだと。別に自分は見られてもそこまで気にしないが、普通に中が見える。特に下半身が。

まあ、そんな話はどうでもいい。もうすることがないから寝るが、シャワーを浴びるまでは再びなゆのの言葉練習会を行っていた。しょうあも一緒に。これが今の1番の娯楽だ。さらに上達した気がする。


 「おやすみ、なさあい。また明日、があんばろうね」


 「うん、お休み。明日は名の本来の力を存分に発揮するから楽しみに待っていてな、なゆの」


 「はあい。アハハ」


しょうあが上がってきた。


 「威勢のいいこと言ってるけど、緊張してるでしょ。二人でだから。協力して頑張ろうね。困ったらいつでも言ってね」


 「うん」


何て暖かい世界なんだ。この空気は。二人ともありがとう。そうして、この世界に来て2日目が終わるのであった。

*東香増の町は香増市街地と繋がっています。(奥香増とは違って)


これからも作品をお楽しみください。

 

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