5話 到着、香増市街地
ふと、下を見た。なゆのは黒くて古そうなサンダルみたいなものをはいていた。痛くないとは言っていたものの、さすがに心配だったから安心した。
そして、ついに奥香増の数倍は大きい町が見えてきた。ここが市街地だろう。ちなみに、奥香増と同じくらいの町を通り過ぎている。そこまで、15分くらい。そこから現在地まで30分以上はかかっている気がする。
「到着しました。香増市街地です」
運転手がそう言う。名たちが降りると運転手が話しかけてきた。
「すぐ目の前にある、この建物が市役所です。我部さんから伝えておいてくださいと言われていたので」
「ありがとうございます」
しょうあがそう言い、さらに名たちに向けて
「よし、行くか。招待状もらってるから、とりあえず中に入ってどうするか決めよう。いや、まだ考える時間かもな。いちよ、礼儀正しくね」
ついに、大きくこの生活が動くのかと、そう感じた。礼儀は大事だけど、もしかしたら怖い人かもしれない。最低限の威圧感っていうか、プライドは維持してっと。
なゆのが手を繋いできて、名の目を見てうなづいてきた。ああ、共に頑張ろう。二人は、しょうあの後ろをついていく。
中に入るとなぜか飲食店が広がっていた。ちょっと変わった格好をしているからか、皆こっちを見ているように感じた。
ちなみに、さっきまでいた町では、名たちが来ていたことが少しだけ話題になっていたらしい。一部の人は知っている。たまに転移者っていうか、どこから来たかわからない人がこの町を訪れることを。
奥にザ役所の人っていうようなのが座っていた。しょうあはそこに向かっていく。
「すみません、奥香増の方からやってきた者です。こちら、招待状なのですが・・・」
こう言うようにと我部さんから言われていたようだ。
「はい、少しお待ちください」
10分後、少し大柄な人物が名たちの前に現れた。うわあ、予想していたことが当たってしまった。とても怖そうだ。
「あんたらが我部氏からの招待者?」
「ええ」
「3人か。まあ、ついてきなさい」
言われるままついていく。さすがに、何も悪いことは起こらないよね。
奥の一室に案内されあったソファーのようなやつに座った。たまたま、2番目に部屋へ入ったので、真ん中に座ってしまった。つまり、目の前にデカい人がいる。何か、リーダーみたいでカッコいいと思いつつ、正直座る場所変えてくれないっと、そんなことを考えていると、話しが始まる。
「これまでも、たくさんの人物を招待されてきた。まず、自己紹介、私は馬場。この市の副市長をしている。さて、今までの者たちは多くは冒険者として、ここから旅立っている。稀にこの市ではないが、近くの市の職員になったり、工場などで働き出している者もいる」
続けて言う。
「あなたたちは、どうする。まあ、大抵皆1週間くらいここで過ごして、その間に考えて結果を出している。東香増というところに民泊できるところがある。そこには特別に7日は泊まらしてやるから考えるがいい。さすがに、生活費までは出すつもりはないから、東香増の代表の者のところに行って少しだけ働きなさい」
「ありがとうございます」
「少なくともこの恩を忘れるな。今までの者にもそう言っている。たまに、お礼として物を送ってくる者もいる。稀にレアなものもある。これがあるから続けているようなもんだからな、はっつはは」
怖くはなかったが、何か嫌な感じのやつだ。まあ、今はこの恩に頼らざるを得ないので、真顔のままの表情を貫く。
「7日後、再びここに戻ってきて、結論を聞く。ぜいぜい頑張りたまえ」
「はい、わかりました」
しょうあがそう言う。たまには、名も声を出して反応しよう。
「ええ、ええ、どうも、どうも、あーがとう」
相手の顔がちょっと上から見ているような表情をしていたので、こちらも同じような表情をした。改めて思ったが、お世話になる方なのによくこんな返答をするなと、自分で頭おかしいなっと少しだけ感じた。
しょうあは少し不安そうな表情でこっちを見て、相手の反応をうかがっていた。相手の反応は特になかった。
「どう、も、どう、も、あ、りいがとっ」
なゆのは名の真似みたいなことをした。いや、これを真似するのと驚いた。怖そうと感じた人物に結局、このようなことして、自分は度胸があるのか、何なのかわかんなかった。ある意味、1番問題だとそう考えた。
その後、市役所を出て再び馬車に乗った。次は、いわゆるタクシーみたいなやつだった。副市長は、タクシー代を出さず、ただ用意だけはしてくれた。もうちょっと、気を利かせよと思った。いや、この考えはさすがにわがままだったと反省。東香増までは約10分くらいのそうだ。正直歩いてでも行けそうな気がするが。金を使わせようと、何だ悪いなと感じた。でも、疲れるから、まあ、いっか。
出発した。金額は銅貨5枚。結構な出費だと思った。建物の間を結構なスピードで走る。少しだけ盛り上がってきた。なゆのは何かリズムにのっていた。
「ななと、さっきの言い方は何?、もう、もしかしたら怒って、やっぱ無しってなったらどうしてたの」
しょうあが言う。
「いやいやいや、ある程度強い態度にも出ておかないと。なめられてしまうよ。特にすごく強そうだったから。まあ、ちょっと調子にのったのは認めるよ」
「もう、変なところでカッコつけないでよ。程よい距離感は保っておきたいし、・・・もう」
「ごめんって、次は気をつける」
「頼むよ」
そうこう言っていると、到着した。やっぱり、西欧風の建物だ。中へと入る。副市長からもらった券を出して、部屋へ案内される。3階建てで、部屋は2階の一室だった。まあまあ、きれいなベッド4つと、机、椅子は3あった。トイレはいちよ洋式っぽいのだ。あと、洗面台とシャワーがあった。風呂はないのか。
「下に服を洗えるところがあるって、今着てるのは夜洗おう。明日、ベランダで干そう。それまでまただけど、我慢だね」
しょうあは続けて言う。
「このメモのところに今から行くよ。ここにここのお偉いさんがいるようだ。とりあえず食事だったりのためにお金を稼がないと。大変かもしれないけれど頑張ろう」
また、苦労するであろう新たな町での暮らしがスタートする。
ついに、今回の章の舞台に着きました。ここから大きく話が動く予定です。
これからも作品をお楽しみください。




