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16話 瑠留りいりという者は

 「皆さん、どうぞ」


天使さんは名たちに何かをコップについで机に置き、そう言った。


 「これは何?」


なゆのが尋ねる。


 「我が家の伝統的な茶です。我史上もっとも美味しいと感じたやつです。これしか飲んだことはないですが」


天使さんはそう答える。名は手にとり飲むと、うん、とても美味しい。正直内の家の味に近い気がした。確か家のお茶はほうじ茶だったような気がする。こうして、皆休憩をしていると、天使さんの両親が帰ってきた。


 「おかえりなさい。どうだったの」


天使さんがそう尋ねる。


 「ああ、皆納得してくれたよ。魔法学校の先生の仕事をしている友人たちも賛同してくれたし、戦力的には結構いいと思うよ」


お父さんはそう言い、お母さんは、


 「私も中の良い知り合いを中心に伝えたらできるだけ協力してくれるって。同じ思いの人だらけだったからね。何か秘策があると思ってくれて、信じてますって。伝えれなかった人に言いにいってくれるようだし、安心だね。勿論、反対派だと思われる人には言わないから大丈夫だよ」


と言う。


 「了解、二人ともありがとう」


 「ああ、あと今りいりに会いたいという人が来てるんだけど、いいかな」


 「おー、なるほど。うん、うん。いいよ」


天使さんとお父さんの会話が終わると、お父さんは家にたくさんの人を入れてきた。


 「どうも、こんにちは。私は魔法学校の技能責任者をやっている、桝です。お父さんから話を伺っております。ぜひ、このことについて詳しく聞かせていただけないかと」


 「ええ、じゃあ、我の部屋へ」


 「一緒に来た者たちもいいでしょうか」


 「うん」


そうして天使さんとお父さん、あと一緒に来た10人くらいが中に入る。正直物凄く狭い気がするが。


 「あの人たちは大丈夫?」


なゆのが天使さんのお母さんに尋ねる。というか、なゆのは凄く警戒心が強いようだ。まあ、名も実は・・・だったら困るかつ怖いが。


 「安心してください。今来てくれた人たちはみんなお父さんの小さい頃からの親友で、確か30年間ずっとこの香増に住んでいますから。そんな悪いような人ではないとお父さんも理解して伝えて連れて来ていますので。勿論、私が伝えた人もこの町に来てからすぐ出会って信頼がある人だけ。問題はないと、そう思います」


 「ふーん、わかりました」


どうやらなゆのは納得したようだ。名も安心することができた。


 「あの、瑠瑠さんはここ出身ではないのですか」


しょうあがそう聞く。


 「そうですね。私はこの市の北の位置にある北宇中央市の出身なので。出会ったのはお父さんが家業であった布を売りに私の町までやってきたことでして、そうして後に結婚し、香増市に来て、あの子を産んだっていう感じです」


 「わかりました。ありがとうございます」


しょうあがそう言うと、突如お母さんが、


 「あの、もしかして内の子のことを聞きたいですか。この子が人を連れてくるなんて珍しくて。でも、この辺の方ではないみたいなので、だから、あまり知らないですよね。これから一緒にやっていく方だと思うので伝えなければ」


と言うのである。


 「そうですね。聞かせていただけるなら」


しょうあがそう言う。


 「では。あ、えっと皆さんはどこから来たのですか。あと、名前と年だけでも言ってもらえれば嬉しいのですが、いいでしょうか」


ついにこの質問がきてしまった。名前と年はいいが、出身は何といえばいいのか。そう名が考えていると、


 「私は松泡しょうあと言います。南の山に囲まれた町の出身で、おそらくあまり知られていない静かなところで・・・。年は16です。隣にいるのは山柔ななととなゆので、二人とも僕と同じ同郷の親友で年も一緒です」


そうしょうあが言ったのだ。嘘というか、多分こう言うのが正しいと名も思う。あとは納得してくれるか、どうかだが。少し考えているような様子のお母さんだが、


 「ありがとうございます。確かにこの世界は広いといいますしね。わかりました」


理解してくれたようだ。しょうあのとっさの発言に拍手を密かに送るのだった。


 「14年前あの子は生まれました。初めての子供というか一人しか生まれなかったのですが、とても大切に育てました。当時この町では薄い緑や黄緑色が特に女の子の中で流行っていて、布一家の内もこの色を多く売っていたんですが、ずっと紫を気に入っていて。その色の布を一緒に作っていたのは思い出の一つです」


回想みたいな感じで始まった。続けてお母さんは言う。


 「そして、言語学校、魔法学校へ通わせました。周りの子たちもとりあえず通わせるといった人たちが多かったんで。たくさん楽しいんでほしいと思いました。その思い通り、特に魔法学校から帰ってきたあとは物凄い上機嫌で嬉しかったんです。しかし、卒業するときに先生からいつも一人で自分の世界に入っているかのように授業に参加しているということを聞かされたんです」


 「確かに話の内容はいつも魔法に関することだけ。時々見せるからと言われて山に行ったこともありました。同じ子供とは関わらずっていうのはとても不安になりました。だけど、自分には使えない魔法特に一回も見たことがなかった闇系というのを気持ちよさそうに放っている姿を見て、なぜか安心したし、この子がこれでいいのならこれでいいやと思い見守った。これがりいりの小さいときのことでした」


 「卒業後は布作りの手伝いをしながら魔法の技を極めると言い、山へこもるようになった。たまに、呼んで見せるのが習慣になっていた。りいりはこの生活が最高だと言うのでそっとしておいたが、同じ年頃の子たちが町で一緒に行動をしたりしているのを見ると急になぜ内の子は周りと違うのだろうと考えてしまっていた」


 「さらによく考えたら一人称は我で話し方や興味、価値観が全て特殊だと気づき、服も独特のものを好むようになっていた。あの黒いマントなんか家に4つもあることには驚いた。でも、お父さんは別に人と一緒でなくても自分自身がいいならそれでいいから、もう何も考える必要はないと言ったことに改めて納得して、ここまで育ててきた。娘さんはどうですかと聞かれても、ありのままを言うようになった」


 「さらに1年経つと洞窟へ冒険をしに行くようになった。不安はあったものの、知り合いの探検家さんを通じて始めはついて行ってもらい、その後は後ろをついて行ってもらった。勿論、反対はしたけど、親が子供のしたいことをやめさせるのはあってはならないとお父さんが言ってのこと。結果的に大きな杖を手に入れて、みんなご存じの通り秘密基地を建てた。今は否定したのを後悔している。それくらいりいりは凄い子だと初めて感じた」


 「そして、ついに近年は町をたくさん回るようになった。その後、自分は乱を起こしてこの市を乗っ取り偉大なる頂点に立つと言い出した。さすがにこれは私だけではなく、お父さんも認めなかったが、何回も秘密基地で魔法を披露したり、これまでの調査での努力を示したりして、最終的にお父さんがここだと思ったときに伝えてと言った。そのときには命をかけて協力すると伝えた。それに私は感動したし、これは認めるしかないと感じたのだった」


 「こうして、今日りいりが初めて人を連れてきて悟ったのです。どうか、りいりを支えてあげてください。今の私のお願いはそれだけ。よろしくお願いします」


長いお母さんの話が終わった。1番始めに思ったことはお父さんカッコいいなと。どうやら、天使さんは小さい頃から今日まで同じ性格の人物のようだ。自分をずっと信じて行動をして実践しようとしている。そんな姿に名は感銘したのだった。決してただ単の中二病という訳ではなくだ。


とは言っても、お母さんの話は段々と内容が変わって、最後は挨拶になってしまっていたけれど。そう感じる天使さんの歴史話だと感じた。


 「ええ、こちらこそよろしくお願いします」


しょうあがそう言った。再びリビングでくつろいで待っていると、天使さんの部屋で話を聞いていたお父さんたちが出てきた。そして、一人の人が言う。


 「皆さんも協力者ということで、よろしくお願いします。改めてりいりさんの今回の計画に同意し、うまく内容をまとめられました」


 「では、人員もそろいましたので、明日の計画を発表します」


天使さんがそう言い、続けて


 「まず、10時に・・・」


 「ちょっと待ってください。もう9時くらいには実行した方が良いかと」


 「なぜ・・・ですか」


 「ちょうどこの町には維持隊も軍もhとんどおらず、反対派の者を拘束するだけでいいのなら、現在市街地も特に軍関係者は少ないです。宇佐見の方へ行っていると聞いています。そして、明日の昼遅くに帰ってくるかと。だから、朝早い時間に行動した方が何かと都合が良いかと思います」


そう確か魔法学校の何か役職があった人が言った。


 「なるほど、その情報はどこから」


 「おととい学長の護衛の者から。今は一緒に市街地の家にいるかと」


 「了解した!なら、8時半にはそれぞれのところについて、9時に実行しようではないか」


天使さんは力強く言った。


そうして、今回の最終的な計画と待機位置を示された。町の役所やギルド、維持隊や軍の関係所、魔法学校といった重要場所や議員の家やそれと仲の良い家といったところに、力のある人や実力者の一部が待機すること。


市街地と東香増の境界線付近から襲撃するのは、天使さんや名、なゆのやしょうあといった今回の計画の中心人物と魔法学校の実力者や剣術・魔術を得意とする住人、力自慢たちだ。他の参加者は情報を伝えたり、怪我を負うなどした人の看護をすることに。ちなみに、天使さんのような子供は基本的に参加しないとのこと。


 「では、皆さんよろしく頼む。全責任は我が追う。なので、安心して戦ってくれ。勿論、自分の命を1番大切にして構わないから。明日の栄光を楽しみにしよう」


天使さんがそう言うと、部屋は拍手で溢れた。ふと後ろを見ると窓から中を見ている人たちからも拍手がされていた。かなり大きなことになっているなと感じた。


来ていた人たち全員が帰った。


 「広まったりしないですかね。計画のことが」


 「大丈夫です。そもそもこの町に現時点であっち側の人がほとんどいないから」


 「そうですよ、先ほども言った通り信頼できる人たちばかりなので」


しょうあの発言に対して天使さんとお母さんがそう言う。


 「そう言えばさっき勝手に何か言ってなかったですか?」


天使さんがお母さんに尋ねる。


 「はい。これからお世話になる方々だからね」


 「ふーーん。まあ、別にいいよ。恥ずかしいことではないし。今回子供たちどもは参加しない方針だけど、もし開始前に伝えて行きたいという人が居たら連れて来てもいいよ。少なくとも命だけは守るから。我の本来の力を見せるいい機会だし」


 「もしかして、ちょっと思い残りが?」


 「そんなのではない。でも、やっぱり本気を見せておいても良かったかもなあって。ただそれだけです・・・ということで3人も明日8時にここへ。最高の日にしましょう!園長さんには明日の7時くらいに我がこうなったことを言いに行きますのでご心配なく。あと、例の音が鳴ったら我が行きますので。まあ、できたらそこまで行ってもらえると嬉しいですが、無理しなくてもいいので。では、今日はここで」


そう言い、礼儀正しく頭を下げて後ろを向き、右腕を伸ばして自分の部屋へ戻るのであった。


 「あの子、授業でわざと本気を出さないというか、自分はここで見せていいものではないと思ったらしく授業外で先生たちに見せていたの。練習量も圧倒的だったらしく最終的な実力としては1番だったけど、誰にも見せず終わったからね。正直そこはずっと複雑な思いを抱えていると思うんです」


続けてお母さんは言う。


 「まあ、そういう雰囲気もあったから、誰とも会話せず、親としては寂しい気持ちだったんだけど。他の子からは魔法を打つときしか喋っていたのを聞いたことがないって言ってたみたいだし。でも、今まさにそのこれまでの努力を含めたそれを見せるときなんではないかと感じるんです」


 「現状、周りからは時々一人で旅に出て(洞窟探検)、一人で山の中を入っていってというのを見ていて、今も変わらずよくわからないことを一人でやり続けている謎の子という認識をされていて、その考えを覆させる機会だから、私的には披露してほしいんです。変わった子で可哀そうにと言われるのが嫌なので。全然可哀そうではないし」


 「なゆのはいいと思いますよ。見せてやりましょうではないですか」


なゆのが突如声を出す。


 「いいんじゃないですか。まあ、さすがに勝利まであと一歩というときだけかもしれないですが、本人と親が承諾して、割と安全なところから最高のところを偶然見た的な感じで」


しょうあも続けて言った。


 「すみません、急にこんなこと言って。でも、ありがとうございます。明日の朝、聞いてみます」


お母さんはそう言った。


 「本日はありがとうございました。明日はよろしくお願いします。ななとさん、しょうあさん、なゆのさん」


お父さんにそう言われ、名たちは家を出た。天使さんも人間味のある人なんだとそう感じた。名は反応できなかったが、親も子もそう思うのならそれでいいと思う。勿論、できるだけ犠牲を出さずに勝利するのが大前提ではあるが。


あと、名も天使さんの状況がわからなくもない。なかなか同性の友達ができず、小学校を過ごしたし、ていうか新しい友達を作ろうとしてなかったし、それで苦労したことはあった。というか、趣味が合わないというのがあっただろうし。まさに高校では友達が少なくというか、ずっと仲の良い子がいなくて、作れなかったので、かなりポツンという状況が多かったので。ちょっといろいろと違う状態のところは多いが、少し似ているように感じて考えていたのだった。


泊っているところに着いた。そして、この世界に来て2回目のシャワーを浴びて、干していた唯一持ってきた服を着てベッドに入った。


 「ついに明日だね」


なゆのが話しかけてきた。


 「明日というか、今日いろいろあって、こうなったというか、一気に状況が動いたんだけれどね」


 「うん、そうだね。わたくしはとても楽しみだよ。ななともそうだよね」


 「も、勿論。まあ、でもさすがに初めての戦いというか、大きな一大イベントだから、ほんのちょっとだけ恐怖ではなくて不安はあるけれどね」


 「なゆのもその思いはあるよ。それにしても、勝ったら力が握れるのかなあ」


 「まあ、それは間違いないよ。それが頑張ろうとさせることなのだから」


 「よし、明日は頑張ろうね。えっと、寝るときには・・・おやすみだね」


 「うん、おやすみなさい」


正直、物凄く緊張している。過去最大のである。そりゃこれまで経験したことがないことをだから。でも、さらに上手になったなゆのの言葉を聞いて、心を落ち着かせる名だった。


少し明るい部屋で目を開けて布団に入っている。あがってきたしょうあが布団に入る。


 「おやすみ。明日は頑張ろうね」


 「うん。おやすみなさい」


こうして波乱だった、この世界に来て3日目が終わるのだった。この時間が今日1番暖かい時間だと感じて明かりが消えるのであった。

かなり投稿が遅れました。


これからも作品をお楽しみください。

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