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15話 秘密基地(漆黒の世界)で

中はザ秘密基地というような薄暗くてこじんまりとした茶色い部屋だった。


 「座りたまえ。そこの椅子に」


天使さんはそう言いながら、端にあるベッドに座った。名たちは天使さんが指さした逆の端にあるソファーのような長くて硬い椅子に座った。間には正方形の机、黒い石のような大きな椅子がある。


 「ここが我が第一の基地。血のつながった者以外でここに来たのは皆さんが最初だ。嬉しく思えたら良い。ということは別にいいのだが、ちょっと疲れたので休憩ということだ。少ししたら始めるから、準備しておきなされな」


そう天使さんは言った。といっても、準備するものはないし、正直あまり休めるような環境じゃないし。


 「嬉しく思いますよ。でも、こんなところにどうやって作ったの?」


なゆのがそう尋ねた。確かに普通に考えて家を作ることは結構大変なことだ。練習用のあーいう人形は簡単でも。


 「そこをついてくるとは。そうだね。2年前くらいに完成してさー。ちょうど別の町から大工さんが来ていてね。その人にこっそり頼んだんだ。もっとも格安でね。だから、本当に希望もなしに作ったっていう訳。いずれは、自分好みにってね」


 「お金は?お金は?」


急に子供みたいな聞き方だな、なゆの。確かに気になる。親が出したのかな。いや、出す力はあるのか。


 「遊良の洞窟で良いものたくさん得てきてね。それを福宮で貨幣にして売ったんだ。自分で得たお宝を自ら売って変えるのは心が苦しいよ。でも、それしかまともに金を一気に得る方法は多分ないから、仕方がなかったんだ。まあ、今は行って得たものを集めることができているからいいけどね」


やはり、この世界にはダンジョンとやらものもあるようだ。つまり、天使さんはこれまでこの若さで普通に何回も入ったような言い方だった。すごいなあ。


 「へえー、一人で?」


なゆのがそう尋ねる。


 「まあ、さすがに始めの3回は案内人とギルドの人3人で入って、それからは1人だね。最近はないけど、危険なことにも出会ったな。時々強すぎて逃げるしかないのも出たから。でも、遊良は比較的安全で難易度も低いようだから。でも、1番注意しないといけないのは、他の挑戦者。突如同じ挑戦者に対してっていうのがいるから。まあ、味方ではないからね」


想像以上に怖いもののようだ。協力するという文字はないのかもしれない。


 「お宝ってある?」


なゆのはさらに尋ねる。


 「ええ、ここにはおそらく最も良いと我が直観で感じたものがあるよ」


そう天使さんは言うと、奥の一見普通の壁を開けて何か取り出した。


 「これだよ、これ。確か7回目のときだったかな」


そう言うと前の机に置いた。それは金に輝く剣だった。


 「これも売ろうかなっと思ったけど、ここまで凄そうなのは初めてだから、売らずに持って帰ってきたっていう・・・もし剣術使いの方がいれば、あげることも嫌ではないけど」


いや、ここに剣術タイプはいない。しょうあが首を横に振る。


 「でも、もしかしたら自分に合う強いのがもらえるかもしれないということ?」


なゆのがそう尋ねると


 「そうだね」


そう天使さんは答えた。


 「ほんとに。ななと、いつか皆でも行こ」


まじか。どうやら、なゆのは興味を持ってしまったようだ。正直言ってあんな怖そうなところ行きたくない。確かに良い武器や高価なものが手に入るかもしれないけれど。行きたくないと首を横に振るのはさすがになので、とりあえずうなづいた。


 「そしたら、我が一緒に行って案内しよう。慣れたらもっと難易度の高い、より良いものが得れるところに皆さんで行けたらいいな。さすがに1人ではそういうところは危ないし、そもそも入れないかもしれないからな。とはいえ、一緒に行ってくれそうな者が見つかって嬉しい」


 「ぜひ。楽しみです」


 「照れるなあ。ああ、楽しみにしてくれ」


この休憩時間でまた新たに一つのことが決まった。まあ、でも初めて天使さんの見たことのない表情が見れた。普通の少女のような純粋に嬉しそうな反応だ。なゆのも同じく。この状況で決まったことなど、否定できる訳ない。


なゆのは名の顔を見た。名は手でオッケーと表した。しょうあはうなずいていた。


 「ちなみに、何回行ったんですか」


 「2週間前で35回目かな」


 「親御さんには言ってるの」


 「まあ、いちよ。旅をしてくる。明日には帰る。って言ってね」


 「心配とかされてない?」


 「だから、ここで我の実力を見せて認めさせてもらったの。普段は親の仕事手伝っているし、ある意味子供の遊びみたいなものさ。他の子はしない遊びだけど」


しょうあと天使さんが会話した。二人がガッツリ話し合ったのは初な気がする。つまり、名が天使さんと1番距離が遠いのか、わからない。


 「では、そろそろ力拝見といこうかな」


そうして、外に出て人形の前へ出た。


 「では、天輝殿から見せてくださいな」


 「あの、まだ言葉は出ないけど、いきます」


そう言い、なゆのは学校でのときと同じように見せた。鎧は見事貫通した。


 「おお、いいですね。次は光輝殿」


なゆのは満面の笑みだった。ちょっと放ったときに顔を決めていたのは気のせいだろうか。

ということで、名の番だ。さっきと同じようにいけば、問題ないはずだ。


 「はっ」


つい声が出た。2回目になると逆にちょっと緊張してしまった。やや逸れてしまったものの、幸い人形には当たり、貫通させれた。


 「光輝殿もいいですね。では、しょうあ氏」


しょうあだけ、氏なのが逆に違和感がする。多分、普通はこう呼ばれるのだと思うが、こう呼んでくれっと言ってしまったので。これは名がしょうあの愛称を考えなければいけないのでは、そう感じた。


しょうあも見事当たり、学校同様鎧を粉々にしたのだった。


 「いや、皆さんお見事です。これなら、この町を支配するのは容易ですね。少なくとも我が1年頑張ったくらいの力がありますから」


そう言われると何か複雑だ。努力してなくても、初めから優位というちょっとあれなやつだから。


 「だからこそ、頑張るぞ。ねっ、ななと」


なゆのがそう言ってきた。とはあれ、結局大事なのは努力・・・うん、だと思う。名はなゆのに対してうなずいた。


 「やはり、問題は市街地。ところで皆さんが拘束されるであろう時間はいつですか?」


 「確か12時に議会が終わるって」


 「そうですか。ならば11時に町役所、ギルドを襲撃して、その後魔法学校を。そして、橋を切り落とし、12時までに市街地を攻撃っていうところですかね」


そう天使さんが話した。ここで驚いたのは、しょうあが反応したことだった。


 「しょうあ・・・」


名はうまくしょうあに対して何て質問したらいいか出てこなかった。すると、


 「そりゃあ、今も逃げた方が良いとは思っている。でも、ここまで来たら皆で協力するしかない。うまく行かなくて逃げる。これが最終手段だ」


 「うん、頑張ろうな」


名はそう反応した。これで名たちのこれからすることが完全に決まった。しょうあはうなづき、天使さんとなゆのの方を見ていた。


天使さんの住む方の家へ戻ることになった。要件は済んだからね。


天使さんの出す煙に乗って下りていくのだった。今回は4人が乗れる大きなタイプだ。


 「あの剣はおそらく光属性の剣術ですかね」


突如、園長さんが声を出した。園長さんはまたもや無言で見ているだけの様子だった。


 「もしかしたら、味方として戦ってくれる者の中に使い手がいるかもしれません」


 「本当ですか・・・」


天使さんがそう言うと秘密基地に戻り、剣を持って出てくる。


 「今は天輝殿に託します」


 「ええ、本当に」


そう言い、なゆのは受け取る。興味津々に見るのだった。


山を出た後は煙から降り、暗くなった町を歩く。そして、天使さんのお家へと戻ってきた。


 「おかえり」


 「ただいま、我が帰りました」


お母さんが迎えるとさっそく、


 「お母さま、ついに実行しますよ」


 「もう、急にかしこまって。まあ、いずれこう言うときが来るとは思ってたけど、正直早かったね」


天使さんの発言に対してお母さんはそう言う。お父さんは、


 「りいりが初めて人を連れてきたのを見てそうなのかとは思ってたが、やはりね」


と言う。天使さんが紙を二人に渡すと、


 「これを見せて来いってね。はいはい。私は近所の人たちに言ってくるから」


 「僕は町の方に言ってくるよ」


そうお母さんとお父さんが言う。


 「ありがとう、これで我が成功させてみせるから」


そう天使さんは言った。何か主人公っていうか、勇者っていうか、名言が生まれたような気がする。


そうして、二人は外へ出た。


 「あの、これはどういう?」


しょうあが尋ねる。


 「もう、我が権力者になるということは伝えている。始めは何を言ってるんだと言わんがばかりに呆れられたが、必死に説得し紙も作り考えて納得させれたんだ。3年前だったかな。このときが来たときにこう行動してくれるよう頼んでいたんだ。そうして、そのときが来たという訳なのだ。まあ、唯一の協力者、理解者だな。血が繋がっているのも二人だけだし」


そうして、頑張ってきたんだな。名は少し感動したのだった。


 「皆さん、頑張って。私もできるだけのことは協力しようと思います。多くの実力者がいる学校の職員に明日の朝伝えようと思います。勿論、学長と仲の良いものと本人は除いて。では、本日はこれで。何かあれば私の家へ」


そう言うと園長さんは帰っていった。


 「あの人、大丈夫かな」


なゆのが声を出す。


 「ええ、ちょっと不安というか、ここで帰るというところに、怖さを感じますが。いちよ、あの悪魔の部下ですしね。あの者は確かそう裏切るようなことをする人間ではなかったと。学校での生徒時代でも確か多くの子に好かれていましたし、お人よしで評判も良い。だから、ここまでついて来ても何も言わなかったんです」


確かに名もちょっと怪しい気がする。一見ここまでのイメージはいい。いろいろ助けてもらったし。でも、それからほとんど声を出さないし。まあ、邪魔しないようにと思っていた可能性もあるが。というか、こんな大事な情報を得てこの場を離れる。それが1番怪しいというか不安というだけだが。巻き込まれただけだから、単にもう帰りたいだけかもしれないが。しょうあは


 「でも、そんな裏切るような雰囲気はしなかったから、別に心配することではないと思うけど」


とまあ、正論を言う。うん、それが正しいとは思う。やはり、ここで離れるという行動が不安というだけだろう。なゆのは神妙な表情をして、皆を見つめている。


 「追いかけますか。離れるななあって」


 「今日の業務は議員も含めて終わってますし、今日何か起こることはないでしょう。あるとしたら、朝9時です。まあ、追いかけて引き留めることも選択肢ではありますが、ここでは念のため、これを使ってみましょう」


そう天使さんは言うと、自分の部屋から何かを持ってきた。


 「これは福宮で手に入れた振動機です。これをドアといったものに貼って、ドアを開けるといった振動がすると大きな音がなります。ここから、あの方の家の距離なら聞こえないという心配はありません。なので、あの人の家のドアにこれを貼りましょう」


 「おおー、それは頼もしいです」


なゆのはそう答える。逆に目立つような。まあ、確かに不安は解消されるかも。


4人は一旦家を出て、園長さん家に行った。そして、ドアに天使さんが振動機を設置してすぐさま戻るのであった。勿論、家に電気がついているのを確認して。バレないようにである。

誰か訪問者が来て開けたりするときが起きたりしたら、そのときはそのとき。そう話してこの話題は終了した。ここまで、危惧する必要はない。そう信じてである。


 「ちゃんと、皆さん理解してくれるのでしょうか」


そうしょうあが尋ねる。


 「大丈夫、問題ありません。議長の悪態の数々、またその家族の横暴な行為を中心に紙には載せていますから。元々、議長が今の立ち位置になってかた特に悪い噂しかないこととそもそも人間性にも難ありとして知られていますから、多くの人は信じて我に協力するかと」


さらに天使さんは続けて言う。


 「まあ、自分たちの意見を聞いていないことはないが、一切関わることができないことには、不満を抱いている方がまあまあいます。それは、他のところでもそうですから。あと、我に従えば少なくとも皆さんの代表の人が必ず関われると書いてあるので、賛同した方が今よりはいいだろうし、成功さえすれば損はないっても書いてるので」


 「さらに思っているほど、相手の脅威はないとも書いてます。この町には維持隊はいないし、軍も役所に数十人しかいない。魔法学校にも、意外と面倒な人たちはいないって示してるんで」


 「それならいいけど」


しょうあは天使さんの言葉を聞いてそう言う。


 「正直なことを言って、ちょっと盛っている部分もあるんですがね。市街地にも維持隊数十人と軍関係者数百人かっこ弱いのが多くとは書いてるけど、実際は維持隊は数百人、軍関係者はちょっと正確な人数はわかんないですから。まあ、さすがにそこまでは調べれませんでした。この町ならどんくらいいるかは頑張ったらわかるんですけど」


 「市街地は警備がここより厳しいし、そもそも軍の人たちは基本的に見ることができないから、わかる訳がないんですけどね。あはははは」


そう言いながら笑う。いや、笑いごとではないような。でも、ちょっと天使さんが盛っているということはわからない訳だし、印象の悪い学長の悪事情報を得ているとなると信じるのはわかる。つまり、協力関係ができなくなるということはないから問題はないか。


 「そんな状態で市街地を攻めることはできる?」


しょうあが不安そうに言うと、


 「まあ、確かに想像以上に構えられているかもしれないし、想像通りかもしれないし、それはわからない。でも、こういうことは多少賭けに出ることも必要。それが戦いだと思う。絶対にうまくいくとは限らない。それはしょうがないのさ」


そう天使さんは言った。


 「確かに、天使さんの言う通りだ。もし、逃げるという選択肢でも、絶対に逃げ切れるとは限らない。そっちにしたとしても賭けに出ることになってたと名は思う」


名はしょうあに向かってそう言った。これに関してはカッコいいとか関係なしにそう思ったのだった。


 「ああ、そうだな」


しょうあは名の発言にうなづいてそう言った。


 「少し盛ること、賭けに出ることは人生で大事なんだねえ」


なゆのがそう声を出す。それはどうだろうか。確かに大事ではないことはないけれど、そこまでではないと思い、名は首をかしげた。


 「そう言えば、思い出した。さっき紙に書いた議長とその家族の情報はちゃんと学校だったり、普段での生活の一部で調べて得たことだけど」・・・


つまり、実際にそういう行動をされた人もいるが、周りにはあまり広まっていない、言いまわしていない(どっちかというとできない)ということが事実としてあるのかあ。


 ・・・「他の議員や家族の悪事も書いてるけど、それは単なる軽い噂だったり、そもそも勝手にこうだと考えて書いてるものもあるから、さすがに盛り過ぎているものもあるけど、それは気にしないということでよろしく」


 「了解です。暗黒の天使殿」


うんうん、あまり良くないことを聞いた気がする。天使さんの言ったことに素直になゆのは反応をしている。まあ、本当だったら問題ないし、嘘だったともしても、結局成功すればそんなことは関係なく、誰かにばれても問題はないと思う。多分。うまくいかなかったときには終わりだが。それでも、現時点でバレルことはないからいいとしようではないか。


 「ええ、ほ、本当に問題ないですか。ちょっとそういうことは良くないというか、怖いというか」


 「少なくとも今ばれて終わりということはないから。成功さえすれば何も大変なことは起こらないから。安心してくれ。さあ、絶対に成功するよう皆の者、が、頑張ろう」


しょうあの声に対して天使さんはそう答える。それでも、しょうあは不安そうなので、


 「大丈夫だよ。結局勝てば悪ではないし、今は自分たちのことが1番大切だから」


と名が言う。


 「まあ、そうか。そうだね。自分たちが助かるためなら、仕方がないな」


そう答えた。うん、そうだ。今はこうするしかない。正義が何かはわからないが、現状このままいく。これが今の名たちにとって正しいということには変わらないのだと。そう感じる自分であったのだ。

・・・と・・・の間は話の途中にななとが感じたことです。


これからも作品をお楽しみください。

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