13話 香増市に住む1人の子
「では、さっそく入らせてもらいますが、ごよろしいかと」
「いや、ちょっと待って」
園長さんの静止を聞かずにリビングへと向かった紫の帽子の子。名はその様子をきょとんと見ていた。
リビングへ戻ると、
「確か、あなたも喧嘩を売っていた方ではありませんこと?」
そう聞かれたなゆのは、
「ええ、何なら喧嘩を売ったのはわたくしだけなのですよ」
となぜか共にお嬢様言葉で話し合っていた。何かこの二人雰囲気が似てるかも。もしかしたら、仲良くなれるかも、そう感じた。なゆのが初めて作る友達になったりして。
「そうなんですか。いや、そうなのですの。で、喧嘩を売って今絶賛大危機というわけですね」
「うん、まあ、否定はできないかしら」
「そしたら、ぜひ一緒に協力しませんか、この『暗黒の天使』様と、ね」
なゆのの回答を聞いて、紫の子はそう言った。そして、物凄い力強く手をなゆのに向かって出してきた。
「えー、ぜひ」(その手を受け取る)
「契約成立ですね。では、さっそく天使の家へ」
「いやいや、ちょっと待て」
しょうあが突っ込むように話に入ってきた。
「ちょっと待って。何勝手に進めっちゃっているの。あと、えっと天使さんですか、それ本名ですか。まだ、あなたのこと何にも知らないのに」
「安心してくださいませ。決して裏で敵に繋がっていてもいませんし、あとこう見えても強いんですよ」
「いやそもそも戦おうとしていませんから。これから逃げる準備をしているんですから。あと、もしあなたが強いとして共に戦うメンバーは数人、勝てっこないですって」
続けてしょうあは言う。
「ていうか、一体あなたがこれに協力する理由は?なぜに関わろうとするのです」
確かに謎だ。この子は何をしたいのだろう。不思議だ。あと、本名ではないだろう名前をしている。これは隠しているのか、それとも・・・
「もう、さっきからあなた、あなたって。暗黒の天使様と呼びなさい。それはそれとして、勿論協力しようとするには訳があるに決まっているだろう。まあ、とりあえず我が秘密基地かっこ住む方に来なされ、皆の者。盛大におもてなししてあげよう」
急に話し方が変わった。お嬢様キャラからうーんいわゆる中二病キャラに。そうだ名前も中二病ぽい。よく見たら見た目も含めて出会ってからずっと。よくしょうあや奈斗が名や他の友達がよくやっていたポーズとかしゃべり方が中二病みたいと言われていた。しかし、名がやっていたもの、そこまでではない。中二病とはこういう子のことを言うのである。正真正銘のだ。
なゆのもちょっとそういうところがある。だが、これまで以上の者が現れたのだ。でも、そんな姿の紫の子はとても楽しそうだった。とは言って、何か引っかかっていたことが解消された。中二病だ。ある意味ここにいる皆はそういうやつなのだと。一人でこれからが楽しく面白くなりそうだと考えていた。
「ああ、そうだな。一旦、その天使様の家へ行くとしよう」
そう、ずっと黙っていた名はそう言った。そして、天使さんが手を差し伸べていたので、その手を受け取った。勿論、相手が決め顔をしてカッコをつけていたから負けじと名も爽やかな顔をして。
「どうぞ、よろしく。髪の長いお嬢さん」
そう天使さんが言ってきたので
「そこはちゃんと名前を言ってくださいよ天使様。名は世界のななと様こと『光輝ななと』様である。以後お見知りおきを」
「あら、それは失礼。光輝のななと殿。よろしく」
「わたくしはえっと、えっと、・・・(小さな声で名の耳に向かって)ななと、なゆのもななとみたいに良い名前つけて」
この名のつけた名前が今速攻で考えてつけた名前と理解しているようだ。判断力もついてきたね、なゆの。
「いいよ。えっと・・・~~~」
「はっ、世界のなゆの様こと『天輝なゆの』様だ。きゃははは、皆の者かかってこい」
「天輝なゆの殿、よろしく」
「ああ、こちらこそ・・・だ」
これを聞いていて名は一体何をしているのだろうと思ってしまった。なゆののかかってこいというセリフは良いが、改めて別名はダサいように感じてしまった。何か急にこんなことをして恥ずかしくなってきた。
しょうあは冷たい目をしていた。もっと、温かい目の笑顔の表情をしてくれと思い続けていた。
「そこのお兄さん、すごく不安そうにしているけれど、大丈夫。頼もしい仲間もいるから」
「本当?・・・とりあえず行くだけ行くか」
天使さんの発言にしょうあは反応して、この子の家へ行くことになった。またもや黙って聞いていた園長さんもついてくるとのこと。こうして、話しがやや動いたのだった。
なゆのと天使さんはやはり意気投合したのか、前を二人で仲良く歩いている。これは初めての友達作り成功ということでいいだろう。何かお母さんのような気持ちになって、嬉しく感じた。
名はしょうあと園長さんと並んで歩いている。
「ななと、さっきのは何だったの?本当に某病気のような言動だったよ。まあ、別にダメとは言わないけど」
「あはははは。気にしない、気にしない」
「それはそうと、あの子信頼しても大丈夫?結局、逃げるほかないと思うんだけれど」
「いや、少なくとも悪い子ではないと思うよ。なゆのとあんなに仲良くなって。心も通じ合っているようだし。それになゆのとよく似ていると感じる。だから、って理由にはなってないけど、うん。大丈夫」
「それもそうだね」
名はこの中ではまともな方のようだ。本当に親のような立場になったように感じる。そう思ったのだ。
「あの子誰かわかったかも」
園長さんがそう言ってきた。
「確か瑠留さんちの一人娘さんだったような。私がまだ先生として教えていた5年前だったかな。担当したことがあるのよ」
「え、園長さんって魔法を教えてたんですか」
名はすぐさま尋ねた。これは気になる。
「えー、まあ。特に若いときはそこそこの力は持っていてね。今はかなり衰えたけど。いちよ、水の魔術を扱っていたんです。そして、3年前までおよそ50年くらいここで教えてきたの。今は定年退職して言語学校の園長と魔法学校の副に就任してるの」
「へえー」
「何、急に素っ気ない反応」
そんなに薄い反応だっただろうか。ただ、この方はそこそこの方(いや、失礼)だったことはわかったのだった。
「それで、瑠留さんは確か当時からちょっと変わった子と有名で、毎日絶対紫の三角帽子を被り、黒いマントに包まれて、途中からは紫に輝く自分の身長と同じ長さの先っこが大きな杖を持って歩くという姿。さらに、独特の口調と接し方、魔法を放つときの仕草をして、人と関わらない謎の子と有名だったのよ」
「あと、本気は緊急のときのみに使うといった、本来の力を見た者はいない。だから、強いかどうかもわからない。今は家業の布屋を手伝いながら毎日どこかへ向かっていると聞いたことがある。旅に出ているとかいないとか。本当によくわからない子なんだよ」
園長さんはそう言った。もうこれは間違いなく中二病特有のタイプだ。おそらく漫画で見るような魔法使いというか、魔女というかそんな姿とそんな性格。でも、だからこそ、彼女は何かある。ある意味ワクワクしてきた。
「そうなんですね。で、名前はわかりますか?」
「いや、ちょっと忘れたね。年は13歳かな。14歳で成人だから、もしかしたら自立して町を出るのかなって噂にもなっていたかな」
そうなんだ。この世界は14で成人なんだ。つまり、名はもうお酒を飲んでもいいのだろうか。って、天使さんは名より3つ下なのか。年下なんかい。まあ、別に年上だとかどうかとかごちゃごちゃ言うタイプではないから気にしないけど。
「成人すると旅人になることができるんですか」
しょうあがそう聞いた。
「いや、別に成人じゃなくてもなれるけど、基本的にはギルドも成人になってからと進めるし、それがこの世では普通なだけ。決まりがあるわけではないよ」
そう言った。ちょうど、天使さんの家に着いた。
「皆さま、どうぞどうぞお入りくださいませ」
天使さんはドアを開ける。中に入るといきなり広いリビングがあった。そこには、親らしき二人がいた。
「りいり、お客さん?もしかして、友達。ついにできたの」
お母さんだろうか。さっきの話を聞いて、仲の良い同級生とかがいないのだろう。物凄い嬉しそうな顔をする。こうなると、ちょっと切ない気持ちになる。本人はあまり気にしていないのかもしれないけど。まあ、名も中学や高校で会った人と新しい友達はできたことがない。特に同性で気軽に話せる子はいなく、授業とかでも、近くに親しい人がいないと別に困ってませんよという顔をして黙りっぱなしになるから。それと同じだろう。?
「りいりが人を連れてくるなんて初めてじゃないか?・・・どうもりいりの父です。本日はどんなご用件で」
「瑠留りいりさんというのですか。彼女は?」
しょうあはそう尋ねる。いや、しょうあ、そこは聞かない約束でしょ。そこはタブーだよ。
「りいり、名前言ってなかったの」
「いや、我は暗黒の天使だ。何を言ってるの、お父様?」
そう手を前に出してポーズをとる。まるで、名が朝にやったようなのと全く一緒だ。何か複雑な気持ちだ。
「あの、今回りいりさんからここに来るよう言われて」
しょうあがそう言う。だから、りいりさんじゃなくて、天使さんでしょ。そこは守らないとしょうあ。
「ええ、そうね。なので、皆さん。こちらの部屋に来てくださりますかなっと」
訂正しないんだ。名前瑠留りいりで認めちゃってるじゃん。そう思いながら部屋へと入る。
席に案内される。天使さんが自分の席らしい石でできた大きな王様が座るようなものに座る。名たちは木の椅子に4人並んで座る。間にある机は金に輝いている。部屋は全体的に暗く、黒のカーテンに薄く光るライトとそして、今ろうそくに火をつけた。完全に中二心をくすぐられそうな雰囲気だ。
あと、変な置物が複数ある。これはさすがに怖い。見てわかるのは馬と兎、あれは鳥かな。種類はわからない。謎の紋章もある。これは何か聞くと
「我が秘密結社、闇の暗黒城」
とのこと。いわゆるトレードマークだな。なゆのは部屋を見渡している。どうやら、興味津々らしい。
そして、話が始まる。
その前に天使さんがマントを脱ぎ、帽子をとった。髪は名と同じくらいの長髪で、真っ黒だ。中には、紫の長袖に膝までは白、それより下は黒のズボンをはいていた。靴は短い長靴みたいだった。あとよく考えれば家も靴のまま入るのか。遅くながら気づいた。
「ちょっと、ななとと似てるね。天使殿」
なゆのがそう言った。言われて見れば確かに自分でも少し感じた。
「ふむ、確かに。光輝殿も同じ格好をしたら我みたいになれるのでは」
た、確かに。それはいいとして、いざ光輝と呼ばれるのは恥ずかしい。今からやっぱって言うのはあれだから言わないけれど、うん。
「では、さっそくだが、計画を発表する。まず、魔法・剣術学校を襲撃する。その後、東香増の役所を襲撃して、東香増の町を占拠する。ここまではおそらく順調に進むだろう」
天使さんがそう言うと、しょうあが
「いや、あの、何かもう戦いに行く気満々ですが、まだ聞くだけというか・・・」
「えっ、そうなの。しょうあも反撃することに理解してくれたのかと」
なゆのが言う。
「っていうか、本当にそこまでうまくいくの?そもそもそこまで順調にいくとは思えないのだけど」
しょうあがそう言うと、
「いやいや、大丈夫。市の軍は全て香増市街地にいて、維持隊もここにはわずかしかいない。占拠するのはここは大いに簡単だよ。問題はここからだよ」
天使さんはそう言う。簡単って気を抜くのはあれだが、まあ、それなら大丈夫だろう。名はいつの間にか信頼しきっていた。
「そもそも、これに天使さんが協力するのはなぜ?ここは聞いておきたいのだけど」
名はここで一つの質問をした。
「それは・・・あの、えっと今は副学長でしたっけ、あなたさん。あなたも今のこの市の体制に不満を持っているでしょ」
突如、園長さんに話しかけた。またもや、いるだけでずっと黙っていた。
「ええ、まあ、違うといったら嘘になるわね」
そう答える。
天使さんは6つの紙を出した。
「これはこの市の悪だくみの数々を示したもの。こんな町でいいの?ダメでしょ。だから、これまで約5年密かに1人で証拠を集めてきたの。まあ、多くは実際に見せろとか言われても見せれないっていうか、単に皆が信頼してくれるかどうかというところがあるけど」
「でも、多くの人は信頼してくれる。これを見せたら。支持者じゃない限り。なぜなら、一部の権力者による悪事はばれているから。でも、誰も声を上げることはできない。そりゃ怖いから。ただ、我は違う。ここで我が出てこの町の英雄になるために努力してきた」
「そして、今だと思ったんだ。たまたま、今日用事があって学校に来てたんだけど、特に評判の悪い悪魔さんがすごくいつも以上に機嫌が悪くて、別の先生に尋ねると・・・
・・・「あの、学長殿いつも以上にご機嫌斜めですが、何かあったのですこと?」
「ああ、さっき旅人っていうか、部外者が喧嘩を売ったらしくて、さっきも教師に当たったらしくて。こりゃ、また侮辱審議が始まるかな。多分、あの人を怒らしてはいけないの知らなかったんでしょうな」・・・
・・・って聞いて。その人が今校門前にいるって聞いて行ってみたわけ。そしたら、皆さんを見たの。そして、追いかけてきたのであります」
そう天使さんは答えたのだった。急にすごいことを言い出したな。びっくりだ。でも、これは確かに市民にとってはありがたいことをしている。よくしようと思ったな。これが中二心のいいところなのかも。?
「な、なるほど」
しょうあはあまりにも衝撃のことだったのか、何もこれ以上言わない。すると、
「天使殿。勝利したらどうするの」
なゆのが尋ねる。
「勿論、英雄として皆から称えられ、新たな権力者じゃなくて、市長になるの。あと1か月で成人だから、問題ない。だから、最大の敵の仕留めは我にやらしていただきたい」
何かボロが出たような。まあ、そうだよね。こういう中二心の子は自分が物凄く偉い人物となって支配する側に回りたいよね。それは名にもわかる。権力者になりたいという気持ちは名にもある。だって、異世界なんだから、当然だ。
とはいっても、やりたい放題していたら逆に今のこの市の権力者と一緒だから、ある程度制限はしないと。って、そんなことを考えているときではない。それは成功してから考えることだ。
「だから、安心して。仲間も我たちだけではない。周りの住民たちや学校の先生たちにもこの紙を見せたら協力を得ることができ、戦力も大拡大だ。特に先生たちは魔法・剣術の使い手。我の次には頼りになる人材だ。ということでこの町の占拠は問題ない」
「我が代表になって引っ張るから心配もいらない。何かあったら責任をとるからな。あと、皆さんは魔術の才能があると聞いた先生が言っていた。だから、よりこのときだとそう感じたんだ。初めてとは言ってもなかなかの威力だと。期待しているぞ」
そう天使さんは言った。ある意味物凄く心強いな。ちょっと不安な性格ではあるものの。
「ああ、期待していてくれ」
なゆのはそう答える。ついでに、
「まあ、代表は譲るが、わたくしも権力を握りたい」
「いいでしょう。じゃあ、天輝殿は副代表に任命しよう」
「ああ、よろしく頼むよ」
目の目でどんどん決まっていく。その状況にしょうあと園長さんはキョトンとしている。
「光輝殿はどうする。権力は握りたくないか?」
いや、もう権力って言ってるじゃん。まあ、ここはこう言うしかない。
「ええ、勿論握りたいとも」
「そうだろう。光輝殿も天輝殿と同じく副代表に任命しよう」
「ななと、一緒に頑張ろうね」
満面の笑みで言ってくる。その表情は嬉しい。ただ、やはり変な別名を言ってしまったがゆえにもう、自分に対して言われてるかがわからなくなった。とはいえ、やる気は物凄く高まったのだ。
「まあ、市長はなゆのになるかも、頑張り次第ではね」
「まあ、それは終わってから考えましょうね」
天使さんと少しながらバチバチしていた。そのくらい、二人は名以上にやる気に満ち溢れていたのだった。
「で、天使さんはどのくらいの強さを持っているの?あと、何を使うの」
名はそう尋ねた。
「そうでしたね。まだ我が力を見せておりませんでした。皆さんも初めての力がどのくらいあるのか、見極めてせてもらわないと。では、我の秘密基地かっこ漆黒の世界の方へ行きましょう」
そう言うと、再びマントに体を包み、帽子を被り、奥の隙間から長い杖を出す。
「では、行きましょう。おっと、その前にお二人さんは何か役職が欲しいですか?」
天使さんが尋ねたのは、しょうあと園長さんだった。
「えっ、いや、大丈夫です」
しょうあはそう答える。まだ理解が追い付いていないのかも。まあ、しょうあは戦いに反対して逃げようと考えていたのだから、こうなるのはあまりにも想定外。なので、ここは名がしょうあを落ち着かせて、安心してこの計画に参加できるようにしてあげなけないと。名の手腕が問われる。
「私は見守っているだけ。でも、危機に陥れば助けようと思う者ですので、ご心配なく」
園長さんはそう言う。この反応は正しいと名は思う。
ちなみにだが、まだこの計画に完全に乗ったわけではない。結局のところ、本当に市民が仲間になるかわからないし、天使さんの実力もわからない。場合によっては逃走に切り替える心を持っている。ただ、実行するとなったときに権力は得たいからこう言っている。
この思いをしょうあには言って落ち着かせ、とりあえず天使さんの言う通りにしようと言おうと思う。この考え、最高だと思う。正直、自分は賢いと思った。あと、3人の中でおそらく1番冷静である。思考混乱のしょうあ、もう天使さんの考えで突っ込むしかないであろうなゆの。そして、今こう考えている名。現在しょうあが頼りない分、名がしっかりしないと。そう思うのだった。
そうして、名たちは家を出た。天使さんの両親には天使さんが1時間ほど出てくると言った。二人とも、もうちょっとで暗くなるという時間にも関わらず、外出を認めるということは、信頼されているからか、何度もあるからか。とはあれ、今さっきの話し合いに参加していた5人で、その秘密基地かっこ漆黒の世界へ向かうのだった。
少し長くなりました。
これからも作品をお楽しみください。




