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11話 皆が持つもの

しょうあは定位置に立つ。ゆっくりと腕を上げて杖を前へ向けて放つ。そんな風の魔法はやや逸れて鎧の左下に当たった。すると、その当たったところはきれいに崩れて、散り散りに砕けた。背中の一部も少し崩れた。


 「おーー、これはまたすごい、本当に本当に皆さん才能があるようで」


そう、羽賀さんは言う。名となゆのが放った魔法は決まったところに威力が集まるタイプなので、きれいに穴が開いて背中まで貫通するが、しょうあは風魔法のため、広い範囲に威力が分散し、貫通はしないものの、全体的に広範囲にダメージを与える。


そのため、一見名やなゆのよりも威力があるようにもないようにも感じ取れるが、どうやら、3人とも同じくらいのレベルである。そう、名が感じた・・・という訳ではなく、今羽賀さんがそう言った。


 「いや、今回の授業、とてもすごいものを見せてもらいました。まるで、何か能力があるかのように」


 「能力?そんなものがあるのですか」 


羽賀さんの言った言葉に対してしょうあが尋ねた。


 「たまに、普通の人は持っていない特殊な力、それが能力です。自分一人あるいはごく少数しか持っていない特別なものです。まあ、詳しくは知らないです。私もおそらく持っていないでしょうし」


 「おそらく?」


しょうあが聞く。


 「能力に関しては調べる手段がないので。もしかしたら、自分自身が気づいていないだけで持っていることもあるだろうし、ちょっと他の人とは違うから、自分はこういう能力を持っているんだと考える人もいます。大抵は思い込みだったり強いだけだったりしますが」


続けて羽賀さんは言う。


 「ただ、場合によっては、自分は能力を持っていると気づくことも可能です。戦いの最中で発見することが多いとのこと。まあ、全てが戦いに関する能力ではないから。料理に特化したものや知恵に関するものなど、様々です」


 「え、つまりなゆのたちは特別っていうことお?」


 「いや、そういう訳では・・・まあ、この初めてとは思えない異次元の強さがもしかしたら能力かもしれないということであって、実際はどうなのかはわかりません。戦いの最中で気づくことができるかもしれないし、結局わからないままかもしれない。能力とはそんなもんです」


そう羽賀さんは答える。


 「とはいってもお、これでわたくしたちは強い!とわかった。これは反撃の開始だよなあ」


なゆのがそう言う。難しい言葉をより覚えているようだ。本当にどこで覚えたんだ?名が教えた覚えはないし・・・。ていうことで、名たちが強いということが発見された。現在、おそらくだが名たちは命の危機に学長によってさらされている状態だと考えられる。そんな名たちが次にすることは決まっている。


 「なゆの、何言ってんの?」


しょうあがそう不思議がっている。名はなゆのの方を見た。とても悪い笑みだ。名も同じような表情をなゆのに返した。どうやら、しょうあだけ次にすべきことがわかっていないようだ。ああ、そうだ。ここから名たちの輝きが始まるのだ。って、あまり調子に乗るのはダメだった。さすがにちょっと現実味を考えて行動していこう。


学校を後にする前に、明日どうなるかはわからないが、いちよ朝9時から3時間の授業の予定を入れた。担当は同じく羽賀さんということである。

そして、羽賀さんからは万が一のために市外逃亡する準備をしておくように言われた。園長さんが出してくれたお金はもったいないが、そうなったら仕方がない。

 

そうして、この場所を去った。しょうあは、


 「本日は急ながら、ありがとうございました。今日が最後かもしれないため、寂しいですがさようなら、お元気で」


と挨拶した。名は礼をして、静かに前を向いて歩き出した。この場面はあえて普通がいいと思い、そうした。なゆのは手を振って同じく静かに前を向く。

いろいろあったが、しょうあもそう言うとはある程度、この先の未来を覚悟しているんだと思った。こんなことになったのは、名となゆののせいでしょうあは何一つ悪いことをしていないのに。巻き込まれた者だが、大事な仲間としてしっかりと前を向き共に立ち向かおうとする。そこに少し感動した。


 「しょうあ、一緒にこの先の困難戦ってくれるんだね」


名はそう聞いた。


 「そりゃあ、勿論。一緒にこの世界に来て、何年も友達として過ごしてきた仲間と行動しなくて、どうするんだ。てか、そもそも僕も名も含めて皆、共犯だと多分されているよ」


 「あと、この世界で頼れるのは、ななととそのななとの頼れる相棒のなゆのしかいないから。自分もあのような状況になって対応できなかった。あそこで僕が少しでも何かできていたら少しはましになっていたかもしれないから、自分にも原因がある。ここは連帯責任だな」


しょうあはそう答えた。再びカッコいいセリフが飛んできた。これだから、しょうあは頼もしい。名を癒してくれるなゆのと、とても頼りになるしょうあの二人に囲まれる名は何て幸せ者なのだと、そう感じた。


 「うん、そうだね。この先の未来を明るくさせるためにも頑張ろう」


名はそう言った。


 「ああ。ちなみにだが、さっきの反撃の開始とか言ってたが(ななとではなくなゆのだが)、それは何なんだ?」


 「それは、行ってからの話そう」


しょうあの疑問に対して名はそう答えた。


なゆのは名たちの会話はニコニコしながら聞いていた。話し終わると名としょうあの肩を掴んで、間に入ってきた。3人は、横に並んで授業後に来いと言われた言語学校の園長さんの家へ向かっていた。太陽?はもう斜めになっていた。



 「あの人たちが学長に喧嘩を売ったっていう人たちかな?・・・さっそく会いにいかなければ!」

これからも作品をお楽しみください。

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