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第二十三話 父、趙二河

石勇は大きな手を摩りながら、苦々しい表情で言葉を続けた。

「殿下のためにこの二儀髓果を探すにあたり、千金閣は優秀な人材を何人も失いました。多くの交渉を経て、ようやく私の手元に届いた次第です。」

林承天は眉を少し上げた。身体の経絡を整え、骨髄を浄化し、陰陽のバランスを調える効果があることは確かだが、「千年に一度」は誇張しすぎだ。せいぜい「百年に一度」くらいが妥当だろう。石勇のこの話は、ただ手数料を少しでも多く取るための口実に過ぎない。

「本王、自分の目で確認させてもらおう。」

「どうぞ、殿下。」

林承天は大きな手を玉の箱にそっと置き、その中から湧き上がる天地の霊気をはっきりと感じ取った。

手を引き戻し、林承天は満足そうに頷いて言った。

「石閣主、ご苦労だった。」

玉の箱の内側には、さらに貴重な寒玉が敷かれていた。この寒玉のおかげで、二儀髓果の霊気が最大限保たれているのだ。

この二儀髓果があれば、二人合わせて訓練し、結婚の際に、あの子を手助けして自在境への突破を容易にするだけでなく、自分もこの機会に神遊境への挑戦を試みることができる。そうだ、すべては最初から計画していたことだ。

石勇は穏やかな笑顔を浮かべて答えた。

「殿下、ご謙遜を。このようなことは、石某の職務の一環でございます。」

儀礼的な会話が終わると、いよいよ本題に入る。

「殿下、合計で一万七千両の白銀になります!」

石勇がそろばんを弾きながらそう言うと、八字ひげが微かに震えた。

これは非常に驚くべき数字だ。大乾の年間財政収入がせいぜい一千万両程度であることを考えると、いかにこの額が巨額かが分かる。しかも、それは災害がなく、人口が増え続け、武帝が適宜対応な対策を立っているからだ。

「ふむ、何かおまけはあるのか?」

林承天は再び茶杯を手に取りながら聞いた。千金閣のやり口は彼も熟知している。値引き交渉は無理だが、追加の品を引き出すことは可能かもしれない。

「えっ...」石勇は一瞬言葉を失った。

「本王がここに来る途中、外に飾られている玉笛を見かけた。石閣主、それを譲っていただくわけにはいかないか?」

林承天は伏し目がちに、茶杯の蓋をつまみながら、その縁をそっとこすった。

黄婉児は音楽を通じて武の道に入った。琴の腕前は天下一品であり、笛の技術も卓越している。

彼女には黄思遠が教えた拳法があるものの、外出時に身を守るための武器が必要だ。まさか古琴を抱えて歩き回るわけにもいかないだろう。

何よりも重要なのは、彼女の拳法は自身の境界と組み合わせれば非常に攻撃力が高いが、本物の敵を前にすると、どちらかと言えば「一気の勢いに任せた拳」に見えてしまうことだ。

その玉笛、もし見間違いでなければ、金星白玉で彫刻されており、硬度はダイヤモンドに匹敵する。これを彫った人物の技量がどれほど高いかが窺える。

「殿下...あの玉笛の価値は、二儀髓果にも劣らないのですが...」

石勇は額の汗を拭いながら、困ったように微笑んだ。

「ほう?あの玉笛は誰かが使ったことがあるのか?」

林承天は眉をひそめ、声色を突然低くした。

もし誰かが使ったことがあるなら、彼は絶対に買わないだろう。どんなに綺麗に磨かれていてもダメだ。理由は聞くな、ただ許せないのだ。

金星白玉そのものは探しやすいが、それを彫刻できる職人を探すのが難しい。最悪の場合、自分で彫刻を学ぶしかない。

「殿下、私が命をかけて誓いを立てても構いません!あの玉笛は、間違いなく誰も使ったことのない品です!」

石勇は胸を張って断言した。

というのも、この玉笛は彼自身が収集したものであり、その経緯は今でも鮮明に覚えている。確か、雨の降る夜だった...

「では、誓いを立てていただきましょうか。」

林承天は双眸を上げ、石勇の回想を断ち切るように静かに言った。

血の誓いでも、天道の誓いでもいいが、誓いがなければただの無意味な言葉と変わらない。

「わかりました!」

石勇は即座に答えた。

石勇は痛快な様子で侍女を呼び、一杯の酒が入った碗を持ってこさせた。

林承天は彼にこうしたふざけをさせるのは一度や二度ではなく、石勇ももはや慣れている様子だった。

「滴!」

大きな血の滴が碗の中に落ち、誓いは完了した。

これを見届けると、林承天は無駄口を叩くことなく、手にしていた茶杯をそっと置きながら微笑んだ。

「その玉笛、本王がいただこう。」

「さすが殿下、お見事です!」

石勇は朗々と笑い声を上げた。

商談は滞りなく進み、金と品物が交換された。

林承天は軽く手を振り、テーブルの上に置かれていた贈り物と玉盒たまばこを一瞬で消し去り、石勇に袖里乾坤しゅうりけんこんの妙技を披露してみせた。

雅間を出ると、石勇は自ら手袋をつけ、蚕糸で編まれた特製のものを使って慎重に玉笛を取り出し、両手で林承天に差し出した。

「殿下、どうぞお納めください。」

林承天は玉笛を受け取り、何のためらいもなく自分で笛を唇に当て「プープー」と軽く音を吹いてみた。

「まるで仙楽を聞いたかのように耳が洗われました!さすがは殿下!」

石勇は即座に賛辞を並べ立てた。

「石閣主、大げさですよ。」

林承天は玉笛をしまいながら、少し照れくさそうに笑みを浮かべた。

「殿下、他に何かご覧になりますか?」

「本王は下の階を少し見て回るだけだ。石閣主、気を使わなくていい。」

「かしこまりました。殿下、何かございましたら、いつでもお呼びください。」

石勇は手を拱いて、林承天と程海が階段を下りるのを目で見送った。

二人の姿が角を曲がり見えなくなると、そばに控えていた第五層の責任者が少し困惑した表情で尋ねた。

「閣主様、どうして楚王殿下にはあそこまでご丁寧に対応されたのですか?」

「ご丁寧」どころか、「卑屈」と言っても過言ではないような態度だった。

しかし、石勇は意味深な笑みを浮かべ、静かに答えた。

「彼は第六層に上がれる人だからだよ。」


「この狐の毛皮は、うちのお嬢様が既に選んで包んでおいたものです。あなたたち、どうして奪おうとするんですか?」

「包んだから何だっていうの?まだ代金を払ってないじゃないか!高い方に売るのが道理だ!」

「申し訳ございません。この毛皮はすでにこちらのお嬢様にご購入いただいております。」

「ああああっ!!!(魂を揺さぶるような絶叫)許せない!うわーん!お兄様!見てよ!みんな私をいじめるの!」

ちょうど第三階層に到着した林承天は、その耳をつんざくような絶叫を聞いて立ち止まった。

――この展開、どこかで見たような気がするな。

そんなことを思いながら視線を横に逸らすと、案の定、そこには蘇凌雪と綺雲の二人が、若い男女のペアと睨み合っている光景が目に入った。

――原作の展開通りなら、ここで俺が和事佬(トラブルの仲裁者)として堂々と登場するシーンのはずだな。

林承天は心の中でそうつぶやきつつ、状況を見極めるべく足を止めた。

「まあ、今はどうでもいい。本王には関係ないことだ。行こう、うちのお姫様でも連れて遊びに行くか。」

林承天は下の階に行こうと足を進めた瞬間、遠くに立っている見覚えのある人物の姿を目にした。

その人物は腕を組み、興味深そうに目の前の光景を見ながら、完全に「傍観者」として様子を楽しんでいるようだった。

「行くぞ、程海てい かい。本王もあっちで見に行くぞ。」

「承知しました、殿下。」

林承天は程海を連れ、わざと大きく迂回してその人物のそばに近づいた。

四哥しが!」

「六弟?」林靖宇は少し驚いた様子で振り返った。「お前もここにいたのか?」

「暇つぶしで散歩してただけだよ。」林承天は柔らかな笑みを浮かべて答えた。

「六弟、聞いたぞ。鼎福楼ていふくろうを閉めたそうじゃないか。一体何を考えている?」

火鍋ひなべ屋を開きたくてな。だから少しだけ改装するつもりだ。」

「火鍋屋?」その言葉を聞いた林靖宇は一瞬考え込んだ。どうやら、その概念は彼の知識にはなかったらしい。

「簡単に言えば、暖鍋だんこと似たようなものだ。ただし、少しばかり違うだけでね。」

「なるほど、そういうことか。」林靖宇は納得したように頷いた。

「開店の際には、四哥も招待してくれよ。」

「もちろん、忘れるわけがない。」

軽く会話を交わした後、二人はその場で立ち尽くしながら、引き続き周りの騒動を見守っていた。

「何をするつもりだ!」

「ふざけるな!お前は父親が誰か知っているのか?!我が父は、趙二河だ!」

その青年男子は突然、大声で叫びながら、鼻孔を天に向けて膨らませた。

林承天はその光景を見て、目の端で軽く引きつった。これがいわゆる「賢い悪役」というものか?さすがに賢いな!

こんなやつを打つのは、手が汚れるだけだ。

林靖宇は「趙二河」という名前を聞くと、すぐに顔色を曇らせた。

林承天はそれを見て、隠し笑いを浮かべた。

六弟ろくてい、今日は少し笑い話になるかもしれん。」



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