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第二十話 東南剣湖

顔頬にひとしずくの温かさが一瞬で消え去った。

林承天は少し驚いて顔を触り、その微かな湿り気を感じた。

今、彼女が自分にキスをしたのか?

再度見ると、黄婉児はいつの間にか白い綿の帽子をかぶり直し、小さな手で帽子の縁を意図的に低く押さえていた。まるで何か悪いことをした子供のように、必死に何かを隠している。あの不器用で可愛らしい仕草は、思春期の少年にとって激しい刺激だ。

林承天は口元に微笑みを浮かべ、黄婉児の小さな手を習慣的に握りながら言った。

「行こう。」

「うん。」

返事は、少女の恥じらいの声がかすかに聞こえた。

空には金色の光が差し込み、皮の表面に反射して、行き交う船にひとひらの金を散らしていた。

程海は長刀を携え、遠くを見つめ、金色の輝きに包まれてまるで出陣を控えた金甲の将軍のようだ。

それを見た花娘ですら、思わず何度も目を向けてしまった。

ただ、残念なのはその顔がゾンビのような表情だということだ。ああ…

「カチャ。」

扉が開き、林承天が黄婉児の小さな手を引いて歩いてきた。

「公子。」

「坊ちゃん。」

すでに待機していた程海と花娘は、同時に礼を言った。

「帰ろう。」

「はい、坊ちゃん。」

二艘の小舟が揺れる川面を進み、ゆっくりと岸に近づく。花娘は船の先端に立ち、手に持った絹の布を振りながら甘い声で叫んだ。

「公子~、お気をつけて~。」

人は彼女を連れているから、「次はまた来てね〜」というような無遠慮な言葉は口にしない。

心の中では、こうした有教養な貴族の子息たちが頻繁に来てくれることを願っている。なぜなら、彼らは高額に消費し、チップもたくさんくれる。そして、自分の船の女の子たちに迷惑をかけることもない。これ以上の喜びはない。


天下の剣修聖地-東南剣湖。

伝説によると、ここは古い戦場の一隅で、かつて一人の絶世の剣仙が訪れ、ここを自らの洞窟として作り上げたという。

時が流れ、剣仙は剣に乗って東へと去り、再び帰ることはなかった。その後、一流の剣を鍛える家系がここに移り住み、この地には家族が夢に見た金属鉱脈が豊富に埋まっていることを発見し、彼らはこの地に留まった。そして、彼らが鍛えた剣は、この平原の数里にわたって埋め尽くされた。

その後、東から押し寄せた大洪水がすべてを壊し、すべてを飲み込んだ。鍛剣の家系も消え去り、彼らが鍛えた剣だけがここに永遠に残された。

歴史の変遷の中、一人の受験生が試験の道を歩いていたが、不注意で湖に足を滑らせてしまった。村人たちに助けられ、岸に引き上げられた後、皆はその受験生が手にしている古びた鉄剣に驚くこととなった。

勇気ある村人たちは湖の中に飛び込み、何かを探ろうとした。

水泳が得意な青年が深く潜り、驚愕の表情で発見したことは、この広大な湖底には無数の剣が刺さっているということだった。

青年は三度も水中に潜り、力を振り絞っても一振りの剣も引き抜けず、最終的に悔しさを胸に岸に上がった。

この「剣湖」の噂は広まり、多くの人々が遠くからその真相を確かめるためにやって来た。果たして湖底の光景は噂通りなのかを見に来る者たちが後を絶たなかった。

剣湖は東南山に隣接しているため、次第に多くの人々の口にのぼり、その名は「東南剣湖」として広まった。

そして、あの湖に落ちた受験生は、目を覚ました後、魂を失ったかのように、試験を受けることなく、ひたすらその古びた鉄剣を抱え、湖畔に座り続けた。

いったいどれほどの年月が過ぎたのか、春夏秋冬を繰り返した後、ついにその受験生は立ち上がり、空を仰いで大笑いした。

「一株の青蓮が洪蒙を衍生し、」

「三千世界、一振りの剣に宿る!」

「わかった!ようやくわかった!ハハハハハ!」

その時、剣修の一人が回想して語った。

彼の耳には無数の剣の鳴き声が響き渡り、剣湖の上には美しく輝く青蓮が次々と咲き誇っていた。その爽快な笑い声とともに、青衣の剣仙は剣に乗って東へと向かい、あの絶世の剣仙と同様に、二度と帰ることはなかった。

その書生は後に、誰もが知る無名の名を持つこととなった——「詩剣仙・楚鳳歌」。

詩剣仙はある日、神遊の境地に達し、剣に乗って東方へ向かい、それから戻ることはなかった。

その名は広まり、広まり、広まり、ついには何千何万の剣修がその名を慕ってやって来るようになり、東南剣湖はついに剣修たちの心の聖地となった。

夕暮れ時、残る陽光は空の端に血のように赤い一筋を残し、淡い霧が四方八方から湖面を取り囲み、剣湖に一層の神秘的な色合いを加えていた。

湖へと続く、広くもなく長くもない栈橋が伸びており、その周りには四、五艘の小舟が停泊している。

栈橋の端には、蓑衣をまとった老人が座禅を組み、わずかに背を曲げて竹竿を手にしている。

「バシャ!」

老人は垂れたまぶたをわずかに持ち上げ、乾いた老いた手で竹竿を握りしめ、突如として上に引き上げる。すると、太った鯉が水面を跳ねて飛び出した。

「お前は剣修ではないようだが、なぜここに来た?」

老者は釣り針を外し、鯉を再び湖に放つと、冷静に問いかけた。

「剣を取るためです。」

符生は剣鞘を手にし、頭を下げて礼をした。

「剣を取る?湖に飛び込んで取れば良いだけだ、何のためにこのじじいのところに来た?」

「違う、お前、あの小僧の匂いがする。」

老者は急に眉をひそめ、声を三分冷たくした。

「お前は、あの小僧の剣を取るために来たのか?」

「はい。」符生は答えた。

「くそったれ、あの臭い小僧は剣湖の全部を使って、あのボロ剣を育てたんだ。お前、そのボロ剣がどんな悪事を働いたか知っているのか?!」

老者はもはや先ほどの世外高人のような冷静さを保てず、急に跳び上がり、符生を指差して罵り始めた。

符生は静かに一歩後退し、老者の言葉が飛んでくるのをかわした。

罵声の中で、老者の表情が急に鋭くなり、濁った瞳に温かな光が宿ると、竹竿をしっかり握りしめ、腕の血管が浮き出てきた。歯を食いしばりながら言った。

「くそ、長い間待ったが、ようやく引っかかったか!」

広大な剣湖は突然、巨大な渦巻きが発生し、波が次々と立ち上がった。薄霧さえもいく分か消え去り、波の衝撃で桟橋も震え始めた。湖の中には、何か大きな恐ろしいものが誕生しようとしているかのような気配が漂っていた。

「出てこい、こら!」

老人の周囲には恐怖の真気が渦巻き、知らぬ間にその体は膨張していた。竹竿はすでにC字型に曲がり、そのままでもびくともしない、まるで崩れそうにないほどの強靭さを見せている。

「ガァァァァ!!!」

渦巻きの中心から突然、百メートルの高さの水幕が巻き上がり、知られざる咆哮が天地を震わせた。森の中では百獣が静まり返り、大群の鳥が驚いて飛び立った。

「ガシャッ!」

水幕が落ちると、符生は本能的に半歩後退し、目を見開いた。黒い瞳には、空を旋回しながら牙をむき出しにした五爪の黒竜の姿が映り込んでいた!

竜!

伝説の中にしか存在しないはずの生物!

この剣湖の中に黒竜が存在していたとは!

違う!

符生は我に返り、目を凝らして見ると、その黒竜は実体ではないことに気づいた!

手に持った剣鞘が震え、黒竜と呼応するように響いている。

まさか、これは殿下の剣か!?

「ガオー!」

黒竜は老者に向かって怒りの咆哮を発し、その巨大な龍の体は三尺の長剣となって空中に浮かび上がった。

「フン、畜生め! 今日はお前を滅ぼしてやる!」

老人は竹竿を引き、長剣の柄に絡んでいた魚の糸が突然力を込めて、それを引き下ろした。

符生は一歩前へ出した、大きな声を出した。

その音に、余光で背後を見た老者は、怒りを込めて目を見開き、叫んだ。

「奪うつもりか!?」

「カキッ!」

大きな手が竹竿の根元を回すと、二本指ほどの細い剣が抜き出され、鋭く振り下ろされた。青く雄大な剣気が瞬く間に栈橋を引き裂いた。

ドン!

符生の眉間には陰陽双魚の印が現れ、右手の白く冷たい罡気(真気の一つの表現)が集まり、その雄大な剣気と激突した。強烈な罡気が剣気を切り裂き、老者に向かって激しく突進していった。

老者は驚き、手に持った細剣を空中で突き出す。その剣の先から放たれた罡気は、湖面に向かって二股に分かれ、轟音と共に激突した。

数十メートルにわたる水幕が飛び散り、青と白の二つの光が浮木の上を急速に交錯し、冷徹な剣気と強引な罡気が次々と四方に衝突し、まるで天を引き裂くかのような勢いだった。

天地が突然、静まり返る。

長剣が一振り飛んできて、符生は剣鞘を持ち上げると、長剣は自動的に鞘に戻った。

遠くから老者の声が静かに響く。

「それを持って行け、さっさと帰れ。」

符生は右手に刻まれた剣痕をちらっと見てから、深く一礼して言った。

「お言葉を一つ、伝えに参りました。」

「そのクソガキの言葉か?どうせろくなことは言ってないだろう!」老者は眉をひそめ、軽く鼻で笑った。その言葉の口調は、少し和らいでいた。

「失礼ですが、先程また釣りの空振りしましたか?」

そう言うと、符生は遠くへと疾走していった。

老者はしばらく呆然と立っていたが、二秒後、怒鳴り始めた。

「くそっ…」

老者は二、三度咳き込み、口から血を吐いた。自分の手が先ほどの罡気で捻じ曲げられかけたことを思い返しながら、苦笑した。

「またどこから現れた小さな怪物だ…本当に運が悪い。」

「まあ、まあ、休むことにしよう。老いぼれも少しは休まなきゃな…」


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