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The Great of Tale  作者: 殊吹コウ
第一章:Sminof
9/13

First Contact


「それじゃあ、今日もお疲れ様でした。おやすみなさい。」

「おう!兄ちゃん、おやすみな!!」


夜9時すぎ、俺はジルドさんに挨拶をし、用意してくれた住み込みの部屋に入る。

この世界に召喚されてから一週間、ユウマの言っていた「力」や「召喚者」についてわかったことは何もない。日々の会話の節々でジルドさんに探りを入れてみたけれど、あまり進捗はなかった。ジルドさん曰く、自分は詳しくないから、できるなら冒険者組合か、教会の神父に聞け。とのことであった。ちょうど明日はジルドさんが店を休みにするそうだから、街の様子をみるついでに教会に訪れてみようと思う。

それよりも、今日も一日疲れたな。現実世界でもバイトはしていたけれど、本格的に連勤したのは初めてだ。まさか、社会人になるのが異世界だなんて思いもしてなかった。とりあえず、今日は寝よう。俺はベッドに寝転がりながらサイドテーブルの上にあるランプを消した。


ーーーーーーーーーー


ここが教会かぁ...。石造りのレンガが隙間なく積まれ頑丈そうな建物に、その壮大な建物にふさわしい大きな樫の木材で作られた扉が備えられ、円錐形の鋭くとがった屋根には十字のオブジェがついている。豪華絢爛というわけではないが、無骨で荘厳な建物がそこにはあった。


「すみませーん!誰かいますかー!!!」


石造りの大きな空間であるため、声がかなり響いた。


しかし、俺の声に応答はない。

おかしいな。誰もいないのかな。ジルドさんの話だと神父さんがいらっしゃるはずなんだけどな。仕方ない、また後で来よう。そう思い後ろを振り返ろうとすると、中学生くらいであろうか少女が立っていた。人の気配が感じられなかったため、俺は間抜けな声を出してしまった。


クス…。


かすかに笑い声が聞こえたような気がする。俺はそんなに間抜けな声を出していただろうか。


「もしかして今笑った?」

「いえ、笑ってなどいませんよ。」


俺の問いかけに少女はハッとしたように真剣な顔つきに戻った。なんだこの少女は。と思ったが、そんな事はとりあえずどうでもいい、今はとにかく神父さんの居場所を聞こう。


「な、なぁお嬢さん、神父様はどこにいらっしゃるかわかるかな。」


俺がそう聞くと、彼女は不機嫌そうな顔をして答えた。


「神父様は現在外出しております。それに、私はお嬢さんという年齢ではございません。名前だってあります。」

怒りを孕んだ声で彼女は俺に憤怒をぶつけた。


「あぁ、ごめんな。えっとじゃあ、お姉さん、名前は何ていうのですか。」


今度は丁寧な口調で、相手への敬意を払い『お姉さん』と称した。これならば文句はないだろう。

そう思っていたが、彼女は未だ口を「への字」にしている。


「あなたねぇ…、人の名前を聞くときは、まずは自分の名前を名乗るのが先でしょ??」


なんだこのムカつく娘だ。たしかに、彼女の言うことは常識で間違ったことではない。でもなんだ、俺に対する嫌悪の気持ちを感じる。ただ、ここで苛立ち何かあっても良い事はない。ここは素直に応じよう。


「これは失礼しました。俺、あぁ違う、私の名前はハヤトと申します。もしよろしければ、お姉さん、貴方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか。」


誠心誠意、言葉を丁寧に駆使し彼女に問う。正直、俺は嫌味を込めた。ささやかな仕返しだ。

しかし、俺の言葉に彼女は満足そうにニンマリと笑みを浮かべた。


「そ、そうね。ハヤト…良い名前だわ。よろしくね。」

彼女の言葉の節々から、明らかに嬉しそうな感情が読み取れる。大人扱いされたことが相当嬉しかったのだろう。さっきまでの嫌悪感は一切なくなったように感じられた。それどころか少しの好意を感じるような気がする。あ、いやこれは童貞の考えだな、やめよう。変な期待をしてはいけない、ここはギャルゲーじゃないからな。よしよし…。


「ねぇ!ちょっと聞いてるの??あなたがアタシに名前を聞いたのでしょう???」

「あ、あぁすまない!聞いてなかった、本当にごめん、もう一度いいかな?」


完全に自分の世界に入っていた、今は彼女の名前を聞くターンだ。よし、「ぷる♡えん」で鍛えた女の子の会話をまずは完遂させよう。


「いい?アタシの名前はエリス。尼女(シスター)よ。こうして教会で神父様のお手伝いをしてるの。」


尼女。つまり聖職者ってことか。というか聖職者なのに、さっきはあんなに生意気だったのか。なんか凄いやつだな…。でも、何となくチョロそうだな。ここはさっきみたいにエリスを持ち上げて、とっとと神父様の居場所を教えてもらおう。正直、この少女は苦手だ。第一、俺はぷる♡えんのルシファーちゃんが好きなように大人のお姉さんが好きなんだ。歳下好きではない。


「エリス!なんともお(しと)やかで素敵な名前ですか。きっと尼女のお仕事も完璧で頑張り屋なのでしょう。私にはわかります。」

エリスがお淑やかな名前である。デタラメである。だって、このような西洋っぽい名前、俺は生まれて初めて出会うのだし。


「そぉかしら???でも、嬉しいわ。どうもありがとう。」

明らかに嬉しそうである。さっき、チョロそうって思ったが、そんな事はない。”チョロいのだ”。


「えっと、それで…、神父様に御用があったのよね。神父様なら今は町長さんの御宅にいるはずよ。」

「そうですか、それでは向かおうと思います。エリスさん、教えてくださりどうもありがとうございました。」


というわけで俺は町長さんの家に向かうことにした。


ーーーーーーーー


「って、、、なんでエリスさんもついてくるのですか!?」

「なんでって、別に良いじゃない。スミノフはアタシの故郷なのよ?好きに散歩したっていいでしょ、ついでにお買い物もしたいし。」

「ま、まぁそうだけれども。」


エリス。さっきはチョロい少女だと思っていたため、(おだて)て利用してやろうと思っていたが、間違いだった。完全に気に入られてしまった。しかし、なんで俺が?別に特別なことをしたわけじゃないぞ?もしかして、俺が異世界召喚したことによりこの世界の女性からモテモテになる力でも得たのか?だとしたら、ユウマに感謝しておこう。今度会ったとき何かプレゼントでもしてやるか。


「こっちの道を使った方が町長さんの御宅は近いわよ。」

そう言いながらエリスは俺の手を引く。


しばらく歩いていると、商店街が見えた。八百屋もこの商店街沿いにある。もちろん見慣れたご近所さんもいる。


「おっ!兄ちゃん!もう女の子を見つけたのかい?デートか、羨ましいなぁ〜!」


この声は石工のケルトさんだ。

ケルトさんのお店では、魔鉱石という魔力が込められた石を加工して防具や武器を作るための素材を製作している。ジルドさんと仲がいいため、まだ会って1週間と間もないが何度もお店に顔を出している。ジルドさん以外で唯一顔見知りなのは彼だけであろう。


「お、誰かと思ったらエリスの嬢ちゃんじゃねぇか?今日も相変わらず小さくて可愛いなぁ!!はっはっは!」


「もうっ!子ども扱いはやめてください!私はもう15なんですよ!!!」

エリスは恥ずかしそうにケルトに物申す。


ほーん。つまり、エリスは街のみんなから子ども扱いはされているのか。だから、さっきはあんなに大人扱いに執着してたのか。


「これから、神父様に会うために町長さんの家に向かうんです。エリスさんはその付き添いで。」


「おー、遂に兄ちゃんも神父様にお会いするんだな。あの人は物知りだからな、きっと兄ちゃんの知りたいことも教えてくれるさ。」


ケルトさんがそう言うと、エリスが俺の袖を引っ張る。早く行こうということだ。「それじゃ。」俺はケルトさんに別れを告げ、エリスの案内の下、町長さんの家に向かった。

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