Once Upon a Time.
天界。そこは神々が創り出した理想郷であり楽園。主人である偉大なる神々と、その従者である天使たちが居とする世界で、至高の地である。
人間界。そこは神によって創られた場所であるが、天界のオアシスのような環境とは真逆。強盗・殺人・放火・強姦・謀反のはびこる汚れた世界である。ここに生きるのは、人間をはじめとした神々に対すると無力でしかない劣等生物である。
魔界。そこは禁忌の地。最も凶悪な地であり、忌み嫌われる地。そこは、神すらも恐れ凌駕する力が存在する地である。
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ーウォルジア王国、玉座の間ー
「陛下!急ぎ防衛線の構築を進めるべきです!このまま帝国が前進を続けるならば、脆弱な我が国の前線はすぐに崩壊いたします!!」
こう訴えるのは、ウォルジア王国とアクスタ帝国の緩衝地であるニドルフ平野に最も近く領土をもつ貴族、ドレイク伯である。
「いいえ!未だ帝国軍の進軍の詳細が掴めていない状況の今、国家総動員を敢行することは賢明な判断とは言えません!!現在、国民は先の戦争の誤報で緊急徴兵を行ったことに大きな不満をもち、仮に徴兵したとしても士気は低く、もし万が一、今度も誤報であった場合、国家および国王様の威厳の急落を避けられません!!」
ウォルジア王国貴族内随一の権威をもち、自身の派閥であるスードル派を束ねるマルズ=スードル侯が言う。
「しかし!陛下!!」
「それでは伯爵殿は、此度の進行も誤報でないと言い切れるので??もし、これが前回と同様の結果であったら、伯爵殿の首どころでは済みませんぞ???まぁその場合、伯爵殿の娘さんが苦労なさりそうですな。伯爵殿には勿体ない程の端麗な方ですものな、はてさて夜の遊興もさぞ楽しめそうです。」
「貴様!!!我が娘に何をするつもりであるか!!!」
「おっと、そう怒らないでくだされ。私はただ貴方の可愛い娘さんにくれぐれもと心配したまでです。これだから親の七光りのぼんくら貴族は嫌いなんだ。」
「貴様!我が一族までも愚弄するのか!!!!!」
ドレイクが腰に差している剣に手をかける。
「いい加減にせよ!!!王の御前であるぞ!!!!」
二人の貴族に釘を刺すのは王侯序列一位、王国屈指の実力者で王国軍軍団長を務めるロドムズだ。その気迫は凄まじく、国王や国民からの信頼が誰よりも厚い彼に二人の貴族はばつが悪そうに黙るしかなかった。
「軍団はださない。」
沈黙を貫いていた王はそう口を開いた。
「お言葉ですが陛下それでは、、、」
「二度言わなければ伝わらないのか、ドレイク。」
もはや、伯爵の提案が受け入れられることはなかった。「軍団は派遣しない。」その王断で軍議が決したのである。
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「くそっ!!陛下はなぜわかってくれないのだ!」
伯爵はやり場のない憤怒を廊下の壁にぶつける。
「伯爵様!どうか落ち着いてくだされ!」従者が言う。
「おやおや、伯爵殿。酷い御錯乱にございますね。」
前から歩いてきたスードルに嘲笑される。
「貴様ぁ!!」伯爵は再度、剣に手をかける。
「おっと、王城内での抜刀はご法度。謹慎では済みませんが?」
スードルの言葉と従者の静止により伯爵は腕をおろす。
「それと一つ。先ほどの娘さんの件ですが、今のうちによく可愛がってあげたほうがよろしいですよ。」
耳打ち際でスードルが言う。
「それでは、ごきげんよう。」
スードルが伯爵を横切り、廊下の闇の奥へ歩いていく。