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第8話 カフェイン中毒


 春風は吹かなかった。


「女神へ供物が届きました」

「昨日ダンジョンはしばらくお休みするって言ったの。まさかのフラグだった?」

「フラグでした」


 わっはっは。


 秘書姿のルジェタさんと笑い合う。


 あれもそれもフラグだった。


 まあ昨日とは言っても、神界に時間の概念はない、とはわかってるんだけど、理解出来てない。

 元人間の新米神だからかなあ。

 知識としてあってもわからん。


「そういう供物って、毎回神さまくん受け取ってたの?」

「受け取っていたから、同じように聖地の神殿にサッと置いて去っていくんです」


 チッと舌打ちをするルジェタさんの幻覚が見えた気がした。何それ普通に見たい。


 それはさておき、巫女たちの「神殿に置いてる供物を受け取ってくだされー」という祈りの声がぶっちゃけうるさいらしい。

 わたし? ブチギレたくないから、そういうのはシャットアウトしてる。


「神さまくんって、最初はプレゼントだ! ってはしゃいで受け取ったのかなあ」

「そのイメージ、わかります。そういう無邪気さがあるイメージです」

「神さまくんの疲れた体と心に染みわたる信者からのプレゼント。はたしてそれは最初からプライスレスだったのでしょうか?」

「神さまくんが供物ではしゃげば世界が潤う。その恩寵は供物を捧げた国が中心になるのではないでしょうか」

「「あっはっは」」


 イェイ!


 ルジェタさんとハイタッチ。

 わたしはこれでもかと背伸びをして、ルジェタさんは腰を曲げてのハイタッチさ!

 ふぅ、さてさて。

 めんどい&わたしがキレる予感がしますよ。


「秘書くん! 信者からの供物ってどんなのですかー?」

「いい質問ですね女神フク。キンキラしてます」

「うわあ! なんてわかりやすい!」

「そしてキンキラ供物と一緒に、神殿に置いていかれた美男子になります」

「神話っぽーい! 浮気性の神エピソードで見た気がするぅー! 特別(意味深)な愛という名の恩寵を授けちゃうやつだー!」

「その後、果てしなく一途な秘書くんの嫉妬と報復が世界中に降り注ぐでしょう」

「それはニヤける件」

「その想像だけで満足出来るあなたも好きです。カフェオレにしますか」

「お願いします。今とんでもないご褒美をもらって心がふんぎゃあしているので。あとわたしもあなたが好きです」


 一旦休止のコーヒータイム。

 わたしは紅茶が苦手なので、緑茶や珈琲だ。

 珈琲の飲み過ぎで胃が荒れてたので無糖のカフェオレが大好き。


 真のカフェイン中毒は牛乳を足して胃の粘膜を保護する。

 何故なら常に胃が荒れているから。


 これはわたしの持論だが、ブラックコーヒー好きとカフェイン中毒は相性が悪い。

 たぶん絶対そう。

 何故ならわたしが経験上そうだったから。


 カフェイン中毒は水の代わりにコーヒーなんだよ。ノーコーヒーノーライフ!


 上から目線のブラックコーヒー好きは大嫌いだ。

「コーヒーが好きって言ってたのにブラックじゃないんだ?」って言うやつ。

 香りが酸味がってうるせえんだよ。黙って飲め。ブラックコーヒー好きと話せ。上から目線でうんちく持論を語りたいだけだろ。

 わたしはカフェイン中毒だ。


 わたしがこの世で一番嫌いなタイプ。

 三年後には紅茶でも飲んでんだろきっと。「コーヒーは胃が荒れるから紅茶にしなよ」って言い出すんだ。

 健康に気を使うのは自分だけにしろ。ただの同僚に語るな。他人に語るな。会社で語るな。カフェイン中毒者に語るな。


 おめーのことだよG沢。


 てめえはわたしをイライラさせる天才だった。

 一周回って面白いヤツだったな。

 永遠にあばよ!


 ルジェタさんはわたしの好みを把握しているので、無糖のカフェオレとガトーショコラを用意してくれた。

 ルジェタさんも同じメニューだ。好き。


「はああー。あれもこれもG沢よりマシで今日も世界を乗り切った」

「それどうにかなりません?」

「もう癖なんだよね。あれだけわたしの地雷を踏み抜けるヤツはいないよ。心の中で容赦なくボコボコにしていいのはヤツだけ」

「新しいサンドバッグにペガサス野郎はいかがですか?」

「ペガサス野郎はわたしを殺したのとガトーショコラ罪だけ、って結構なことやってるわ」

「心のG沢はもう捨てましょう」

「ペガサス野郎って罵倒してもヒヒーンって無自覚煽りで余計にイライラしそうなんだよね。G沢はリアルでも泣くんだ。アイツ実はドMだから、最後は徹底的に頭グリグリ踏むとスッキリする」


 もちろん心の中での話だよ。


 リアルでやったらあだ名が女王さまになってしまう。

 G沢と噂になるなんて吐き気がするしね。


「それ初耳ですが?」

「初めて言った。気合いの入ったストーカーだったんだよ。保育園からわたしに付きまとって同僚にまでなったからね。じゃなきゃ実家出ないわ」

「今後はペガサス野郎にしてください」

「わかった。がんばる。ごめんなさい」


 G沢がルジェタさんの地雷になった。

 お顔とオーラみたいなのがそう言ってる。

 このままではルジェタさんの本性が出てくるから、心のG沢もバイバイ。


「そうですか。G沢は頑張らなければ捨てられないと?」

「もうポイした。ペガサス野郎をサンドバッグにするのをがんばるんだ。ルジェタさんは抱っこで癒やして」

「……いいですよ」

「ありがとう。好き」

「私の方が好きです」

「それは喧嘩になるから止めよ。ルジェタさんが大好きじゃなかったら心のサンドバッグに出来たのになあ」

「私を大好きなままフクの心のサンドバッグにする道を探しましょう」

「ふーん。つまりえっちなことだな」

「……詳しく」

「こっちが詳しくしたいわ」


 わたしの好みにドSヤンデレあるし、いざというときのヤンデレ保険に入ってるからヤンデレ出したルジェタさんはガチでやべえR−18Gタイプのヤンデレだ。


 ルジェタさんがヤンデレ標準装備なのは理由がある。


 わたしは人生永遠終わりがないわけじゃん。もしわたしがいつか終わりのない生に発狂しても、ヤンデレパートナーだったら本領発揮してめでたしめでたしになりそうじゃん?


 いくらわたしが発狂しても、この生は永遠に終わらないんだから。


 パートナーの幸せは大事だよ。メリバでもバッドエンドでも。

 わたしは延々とハッピーがいいから、ルジェタさんをそちらの道には進ませないつもりだけどね。


 推しとリアル恋愛は違うということも徹底して区別してもらってる。だからこそ推してないむしろアンチのG沢は地雷になったのかな。

 ルジェタさんは特別枠の最推しだ。

 ほんと最悪の場合は、わたしは真の意味で脳みそお花畑。

 世界に悪い影響を与えないように脳みそパーンして、口から涎垂らして毎日幸せーってへらへら笑うことになる。


 そんなわたしもいいな、それもありだと普通に思ってるのがルジェタさん。


 どうしたってわたしは元人間だからね。発狂する可能性は消せない。

 百年生きるかどうかの価値観で生きてきた人間と、はじめから永遠の神さまとでは土台が違うんですわ。


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