第7話 誕生
「出来たあ! っと秘書ぬいくん。これはルジェタさんのフクぬいだよ」
「ぬー」
「ぬーじゃないの。わたしのこと大好きだな」
「ぬっ!」
ぬいの二体目完成。
ルジェタさんが待ってたフクぬいである。
いやあ、神力の影響なのかわからないけど、動いたわ。
最初は思わず叫んだよね「これ薄い本で見たやつー!」って。
地球で買った公式ぬいや地球でわたしが作ってたぬいを神力で再現したぬいは微動だにしないから、原因は今のわたしが熱心に手作りしたことで間違いないだろう。
ぬいが動くのはわたしの夢だったし、ルジェタさんもそう言ってた。
「ぬっぬっ」
「ルジェタさんにプレゼントしてから抱っこさせてもらおうね。それにほら、まだ動かないよ」
「ぬー」
動かないことがご不満らしい秘書ぬいくん。
たぶん明日の朝には動くよ。たぶん。
きみがそうだったから。
「秘書ぬいくんとフクぬいボタンおそろいでいいねー」
「ぬ。ぬぬ」
短くて腕組めてないけどそんな雰囲気のポーズで、満足そうなお顔になった秘書ぬいくん。
うんうん。不満げなお顔よりそっちの方がいいよ。可愛いから。
てか、このあとルジェタさんぬい作る予定だったけど止めた方がいいねこれ。
ぬい同士で喧嘩しそうだわ。
秘書ぬいくんに私服デザインの服を作ればそれはルジェタさんぬいとも言える。
そうしよう。それが平和だ。
「秘書ぬいくん。フクぬいとおそろいのポシェットでも作ろうか?」
「ぬ?」
「お菓子とか入るよ。ボタンどれがいい?」
「ぬー……ぬっぬっ!」
「どっちが秘書ぬいくんのボタンかなー?」
「ぬ!」
いやもうこれが、わたしの精神修行第二弾だと思う。
第一弾はもちろんルジェタさん。
身長差のおかげであのお顔を美しい形の眉を長い睫毛をおめめを鼻を唇を皮膚を首筋からの流れで、ともかく、全体的に見上げなければ、なんとかいける。
知ってた? ルジェタさんオッドアイなんだよ? 知ってるウゥゥ! 金と銀! ゴールドとシルバーでイエァッサアッ!
首痛めて見上げなくても、いい匂いとあのおてて。いやいやあの長い指とか爪の形とか語り出したら止まらないからやめるけど、さあッ!
平常心平常心。
ただでさえ、あの落ち着いた低い孕ませボイスとあの性格に精神やられてるんだから。
お料理も上手!
ああああああ!
大天使! 大天使がいた! けれど!
平常心平常心。これは修行明日も修行。
心を落ち着かせるのだ。
ですが正気に戻ってはなりません。
「ぬー」
ああ、秘書ぬいくん!
短いおててとあんよが最高に可愛いね!
悶えそう。いや耐えろの繰り返しですわ。
ぬいなのに食べるんだよーお菓子。
基本的にちっちゃい飴だけどね。
わたしこれから飴作りのスキルがどんどん上がる。間違いない。
ぬいのお菓子もわたしの神力で作っている。
最初はルジェタさんが秘書ぬいくんに作ってあげたんだよ。そうしたら食べたから、次はわたしーって作ってみたのね。
そうしたら秘書ぬいくんはわたし製のお菓子がいいみたいで。
照れるね。
フクぬいはきっとルジェタさん製のお菓子がいいってなりそう。
「フクぬいも早く動くといいね」
「ぬっ」
ルジェタさんぬいの予定をポシェットに変更して、チクチクチクチク。
うん。わたしをじ~っと見つめる妖精さんたちもいるね。今日も遊びに来ているからね。
「好きな布をお選び」
わたしがそう言うと、わっとバンザイしてはしゃぐ妖精さんたち。
妖精さんたちも神力飴食べるからポシェットの使い道はあるだろう。
木の実とかも入れそうだね。
たまにくれるんだ木の実。
いや、妖精さんたちは背中の羽の邪魔にならないようにウエストポーチがいいかなあ。
ぬいの分を作り終わったら考えなくては。
翌朝、ルジェタさんと秘書ぬいくん。早起きな妖精さんたちに囲まれて、フクぬいは動き出した。
「フクーン?」
わたしは何その鳴き声ぬーじゃないんかいと思ったが、ルジェタさんたちは違ったらしい。
「あああ! 可愛らしい愛らしい! 素晴らしいです! はじめましてフクぬい。私はルジェタですよ。私と仲良くしましょうね」
「ぬぬぬーぬぬっ! ぬっ!」
「フクー」
「飴食べますか? 美味しいですよ」
「ぬっぬっ! ぬっ!」
「フクッ」
目覚めて三十秒で飴を食べるぬい。
次は四十秒で支度をするんだろうか。
ルジェタさんと秘書ぬいくんのおもてなしがすごい。
妖精さんたちは盛り上げ役かってくらい、くるくる回ったりバンザイしたり拍手したりしてる。
フクぬい誕生の舞なの?
祝福されてるのは間違いないんだ。
羽からキラキラした粉も振り撒かれてるし。
「ああ。可愛いですね」
「悶えるでしょ?」
「ええ。ぬいの本当の魅力がわかりました」
こうしてルジェタさんは、ジェフクタールに行くのを止めた。
秘書ぬいくんが大反発するのと、さすがにフクぬいをあのダンジョンに連れて行くのは嫌だと思ったらしい。
ぬいを作りをはじめた当初は、まさか動くとは思ってなかったからねえ。
家の近くでも遊べるし、全然見て回ってないからピクニックでもしようかという話になった。
こうやってのんびりまったり、春風に包まれてわたしたちの日々は過ぎていく。
神さまくんと再会したときにも、この春風が吹けばいいなとわたしは思うのだ。




