第4話 はじめての出会い
やって来ましたわジェフクタール!
ここに来るまでのわたしの大冒険!
涙無しでは語り尽くせない、あんなことやこんなことがあったよね。
「というわけで、よろしく新居。よろしくお願いしますわたしの秘書くん」
「よろしくお願いします私の女神」
「あッ! 顔がいい! イケメン! 正義! 敬語! 高身長! 高防御力! わたしの夢が詰まってる。え、あなたが本当にわたしの秘書くん?」
「はい。あなたの秘書くんです」
うわああああ! いい匂いがする!
笑ったぞこの秘書くんやべえ。声までいい。エロい。エロス。この色気マジかおい。
「はわわわ……」
秘書くん手足長いね。黒髪に金と銀のオッドアイ。はえー指が長いね。白い手袋かあ。
きっちりかっちり着込んで、肌の露出はとことん控えめのこの防御力。わたしの趣味わかってるね。男の手だね。涎が出る顔の良さだねこれ。
身長差あるあるの見上げて首が痛いってこの痛みだよ。二次元以外で百九十センチ超えは初めて出会った。いやでもこの男ほんと顔がいい。
「百枚以上いいですか?」
「どうぞ」
秘書くん撮影会。
握手もしてもらった。
秘書くんアルバム作らなきゃ。
秘書ぬいくんもいる。作ろう。
推しのぬいぐるみは世界平和だ。
「落ち着きましたか」
「落ち着いた。ヒーッヒッヒふぅ。落ち着いた。わたしの名前フクでいいよ。すべてが福だよ。秘書くんはルジェタ。二人あわせてジェフクタール! マイナスはいらない引き算はしない! 現場からは以上です」
「はい。フク」
「あああああ! 好きいいいい! その声そのお顔全部好きいいい!」
「ありがとうございます」
チーン。
こりゃあやべえ。
慣れるまでほんとやべえ。
「ルジェタさん画面の中に入ろう。わたしが触れちゃいけない尊さだよ」
「触れてください。寂しいので」
「ほ、ん、ほんっとわたしの趣味を理解してやがる。ちくしょう。好きです」
「私も大好きです。フク、よくやりました」
「……ガチでわたし成功してる?」
「してます。ガチでミスはありません」
「やったあああッ!」
これにはガッツポーズ。
引っ越しの初日は秘書くんとキャッキャと過ごした。
わたしの楽園はここにあった。
そうしていたら、ジェフクタール中に花が降ったらしい。
新たな女神の祝福だと世界中が大騒ぎになったそうだ。
こええな。
ガチで世界に多大な影響がある。
「ルジェタさんもゲームしてみる?」
「知識はあります。対戦、しません? お互いにガチで」
「する」
恋人が安心して全力で愛せる秘書くんルジェタさんでよかった。
対戦は音ゲー。
ボロッボロに負けた。
スマッシュな大乱闘。
いい勝負だが負けた。
パズルゲー。
ズタボロに負けた。
スゴロクのボードゲーム。
しっかり負けた。
ゲームに強い彼氏がわたしの理想であった。
とても仲良くなれた気がする。
世界は平和である。
ジェフクタールに花が降った日の様子を、秘書くんがまとめてくれた。
「さまざまな色の花や花びらが降り、消えたそうですよ」
「よかった。ゴミになってたらどうしようかと思ったよ」
「効果は治癒の報告が多いです。女神のイメージが上がり、神さまくんの神託は正しかったと世界中で噂になっていますよ」
「ありがたいねえ。初日から福があったね。嫌な予感もするけど」
「フラグですが、遅かれ早かれです。どうせ事は起きます。ここに時間の概念はありません。まずはその女神の身体に慣れましょう。ゆっくりでいいんですよ」
わたしが新たに世界を見守ると神さまくんは神託を残して旅立ったのだ。
花は手足の欠損とか超上級魔法などでしか治せない怪我をも治したらしい。
「ねえ引っ越し初日をわたしたちの誕生日にしようか」
「いいですね。そして記念日です。私とフクの」
「あと握手に撮影にゲームね」
「たくさんですね。それで、どうします?」
「見せるだけが一番効くでしょ、ああいうタイプには」
「おや。フラレてしまいましたか」
「わたしの親兄弟と推しサーの友人たちにふざけたことをしたら、新刊をひとつでも買い逃したら好きにしていいよ。ジェフクタールの冥界もあとは任せる」