第1話 星でさらば
「はっ? ま、あぎゃらびばあああ!?」
星が落ちた。
わたしの頭のてっぺんに派手に落ちた。
イラストでよくある、頭に雷が落ちてレントゲンみたいに白骨が「あばばば」みたいなことがわたしの身に起こった。
落ちたのはたぶんおそらくきっと星だと思う。
その夜は何百年かに一度の流星群とニュースで話題になっていたから、普段は洗濯以外で出ることもないベランダに出たのだ。
そしたらさあ、これだ。ヤバくね?
明日のニュースの話題ってわたしじゃね?
ベランダで頭に星が落ちて亡くなったひとり暮らしの女性とか報道されたらさあ、絶対わたし以外なくね?
話題性なら隕石か?
星より隕石の方が正しいのか?
てか、もしかしてこれが走馬灯ってやつ?
走馬ってないような気がするけど。
なるほどこれが走馬灯――。
「ああ、なんてことだ……!」
もう天国来たし。
走馬灯終わるの早いな。実に早い。
悪霊とかそっち系の道を選ぶ暇すらない。
あっという間である。
「魂と融合してしまった……あああ! この愚か者! お馬鹿!」
「ヒヒーン?」
馬だけに? と言ってみたいがペガサスぽいんだよなあ。
ショッキングピンクだけど。
ペガサスって真っ白じゃなかったら、こんなにキツイ生物なんだね。とんだ無駄知識だね。
ケバケバしいショッキングピンク色のペガサスに怒鳴ってるのは、外国の神話に出てきそうな若者だ。見た目十代金髪そしてなんか輝いている。
天使の羽はないけど、神さまっぽい雰囲気の存在である。
なんで閻魔さまじゃないんだろう?
日本人なら閻魔さまじゃない?
あ、三途の川とやらも見てないしそもそも渡ってないが?
もしや、わたしワンチャン死んでない?
「……ごめん」
察しの良いわたしワンチャンなさそうな気配をビシバシ受信する。
人殺ししといて、ごめん?
「ヒンッ」
ヒンッじゃねえよペガサス野郎。
おめーがなんかミスしてわたしが死んだんじゃねえのかおおん?
はあ。つら。
夢は泡銭で大富豪になり一生お家でえんやこらという壮大な野望があった若い女を、てめえらが殺りやがったんだぞ。
かーわーいーそーおおおおおお!
これは責任大アリだわ。
そこの神っぽい若者。
予定外、ね?
なんてことだとか言ってたし。
わたしそれ聞いたし?
そのペガサスっぽい生物のミスって間違いなくあなたの責任では?
違うってんなら閻魔さまに会わせろやこら。
「……あ、泡銭で大富豪でいいだろうか?」
え、賠償のお話?
つーかプライバシーやばくね?
確実にわたしの思考読んでるし。
え、こわ。
念の為にエロいことだけ考えようかな。
「待っっって!」
「あ、わたし声出るじゃん。死んだら無言かと思ってた」
神さまがあまりに純情そうで声が出てしまった。思春期かというほど真っ赤になり焦っている。
二次元エロはわたしを救うのにダメなのかそうか。思春期ぽいもんね。
「とりあえず、わたしは死んだ確定ですかね?」
「う、うん」
「あなたとそこのペガサス野郎のせいで?」
「ヒンッ」
「……はい」
「ふーん。それで、わたしを殺した直後にプライバシーまで丸裸にして辱めて、何がしたいんですか? ひどい! 乙女のエロい思考を読むなんて酷すぎる!」
「もうしない!」
認めたな?
わたしの脳がここぞとばかりに瞬速で巡らせたどちゃくそエロを知ったな。
「だっだいたい僕は……いつもはそういうことはしないし……」
ひとり言のように愚痴る思春期神さま。
ふーん。
思考を読む、ね。
実に神さまらしい若者じゃないか。
とりあえず思春期が苦手そうなジャンルのエロを常に考えつつ。
確認はいるよな。
「星と融合? とかつまりはわたしの死因などの説明から聞きましょうか。大富豪等のお話はその後で。珈琲とケーキあります? ケーキはガトーショコラ希望です」
「え?」
「あ~なんだか痛いわあ。わたしの輝かしい人生を突如奪った星が激突した頭のてっぺんがとてつもなく痛いわあ」
「ヒヒーン」
こうしてわたしは大富豪への道へ進むことになったのである。