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第17話 カノン族


 うんうん唸りつつ歩き回り、わたしは考えに考えていた。


「決めました?」

「ちょっと待ってまだ待って。うーん、マルチリンガルでしょう。それから額に神石がナマステ的にあって、ジェフクタール人を余裕で捕縛する警察官のお仕事も出来るスーパー派遣社員がテーマで、うーん。こうやってルジェタさんのときも悩み過ぎて、現地で直接お顔を見てからお名前決めようってなったんだよねえ」


 聖地で働く新しい種族。


 その種族名に悩む。


 神道で言ったら神使になるかなあ。創造するのは動物とかじゃないけど。


 神使、シンシ、神の使者、カミノシシャ……。


「カノンにする。カノン族だ。しっくりきた。不老不死の一族。結婚も恋愛もしない女神フクの使いの一族。別名わたしのスーパー派遣社員。決定!」


 パチパチとすかさず拍手してくれるわたしの秘書くんルジェタさん。好き。


 額に楕円の神石があるのがカノン族の特徴。

 神石の色はいっぱい。

 色は個人別だね。


 神石の色で見分ける感じになるかなあ。

 髪の色も瞳の色も額の神石と同じ色。


 カノン族の衣装は、真っ白な長い上衣とゆったりしたパンツの下衣を基本にしよう。

 アオザイみたいな感じね。


 わたしは肌を極力見せない衣装が大好きなんだよ。秘書姿のルジェタさんの防御力もすごいからね。

 手袋と袖の隙間から肌がちらっと見えたら、ご褒美です。

 全身ピシッと着てて肌の露出が少ないからこそ滾るのだ。


 さあ、そんな秘書くんルジェタさんと話し合わねば。


 ぬいたち? もう親離れしたよ。


 今頃二体で仲良くデートしてるよ。


 用があるときだけ来てくれるよ。


 愛しいよ。


「フクぬいは見事に寝取られました」

「あんなに愛しても伝わらないのね。大丈夫。あなたには本妻のわたしがいるもの」


 ルジェタさんとお決まりの茶番である。


 それから珈琲を淹れてもらって、テーブル挟んで二人でコーヒータイム。


「というか、思ったより物凄いスピードで世界が進んでるよね。カジノは早く作れそうだよ。ギュルヴィくんは偉いね。神さまくんの特別な恩寵がこうなるとは思わなかった。狡猾な鱗族の巫女に感謝だよ。聖地も早く変えなきゃね」

「彼は一番に待ってるでしょうね。一番いい土地をおすすめしてあげましょう。彼の国は一番人気でしょうし」

「そうだね。不老を願った巫女が可哀想になるよ。本当先見の明がある巫女だね。見事に自分の国と自分のことだけを考えたその狡猾さ天晴だよ。何の疑問もなく授けた神さまくんプライスレス」


 もうね、すごい巫女だよ。


 まずね、完璧な未来予知。予言の恩寵。


 今はわたしたちがギュルヴィくんの邪魔をしなければ、だけどね。


 巫女はね、自分が死んだ後、一族に危機があるときに間に合うように自分と同じ恩寵の力を持つ子が生まれるようにしたの。


 神さまくん相手に口八丁でね。


 それから、もし国土が王都だけになっても飢えないようにしたの。


 他国にはない奇跡の実とかがあるんだよ。

 チートレベルだよ。


「鱗族の王族はきっとギュルヴィくんが末代でしょう」

「そっか。それはうれしいな。未来予知のギュルヴィくんが末代になったら、それはうれしいわ。わたしに未来予知はいらないけど、ギュルヴィくんが笑顔か、チラ見くらいはしたいからね。いつまでも奇跡の末代だとうれしいわ。ルジェタ占いが当たるといいな」


 いやもう凄いわ。

 ガチでありがとう白鱗の巫女。

 衣食住全部解決してるし、食べただけで怪我が治る果物とかあるからね。


 王都まで拡げさせたんだよ。

 神さまくんが最初に決めた王都の範囲を拡げさせたの。

 今の鱗族の国土はほとんど王都だよ。


「不老よりも軽い、とても健気な願いだと思ったようですよ」

「絶対女に騙されるタイプじゃん。実際騙されてるし笑えてくるわ」

「困っている他族にも分けてあげたい世界中の種族と助け合いたい、というのがまた神さまくんの心を打ち抜きましたからね」

「それで聖地の門も王族の結界も通り抜けるんでしょ。凄まじいわ鱗族だけのチート魔法。恩寵ガチで多すぎだよ」 

「不老は決していらないという鱗族の巫女だけは、何度も何度も神さま通信を見ては貢がれてますからね。すでに未来予知の恩寵がある巫女も一緒にしっかりと見て、新しい恩寵が授けられれば笑顔で接待してましたよ。その結果が、あれです。神さまくん運命の初恋だったようですね」

「あははははッ。ヤバい。ウケる。巫女がキャバ嬢してる。巫女搾り取ったね。えらいよ。あー、どうしようかな」

「あくどいことはしませんから大丈夫ですよ」

「ギュルヴィくんたちはね。わたし製のアイテムもっとよく考えなきゃなーって。いやー、好奇心も強い巫女だわ」


 感心感心。天晴でしかない。


 鱗族の巫女はたぶん、一応、希望に満ちた人生大往生で楽しかっただろうなあ。


 理由はどうあれ世界中の大陸を見て回った唯一のジェフクタール人だよ。


 ギュルヴィくんは用もないのに他国にお邪魔したりしないからね。


 他の鱗族は透明になるだけなんだよ。

 巫女が授かった恩寵と同じギュルヴィくんとは違うの。

 それでもチート魔法だと思うけどさ。


 予知能力もあるから怪我をすることも、他族に誘拐されることもない。

 完璧な神さまく、じゃないや、完璧な恩寵の使い方だよねー。


 ここでもハブられた人魚族だけどね。

 巫女、海中に行く力はなかったから。


「聖地に時計塔を建てて、ダンジョンに目覚まし時計や腕時計、壁掛け時計もいるね。レアなお宝にしよ。そしてギルド開店! お金の流通も開始! 宝箱が宝箱する時が来た。の前に、神託で聖地の土地と建物を各国にあげるのと、お金の説明動画を先に見せなきゃなあ。まあ、まだまだ計画段階だけど。あのキンキラ供物お返しした人族はちゃんと持ってるお金?」


 人族はねえ、何回か罰いったからねえ。

 恐怖政治ならぬ恐怖だよ。


 他にもやったけど。


 あ、微笑みのルジェタさんが真顔になった。


「ありませんよ」

「あはははは! ルジェタさんの地雷をこれでもかと踏み抜いたね。これが最後のお仕置きになるといいね」


 しれっとしてる秘書くんルジェタさん。


 笑っとけ笑っとけ。


 ヤンデレ秘書くんの罰はR−18Gだから、わたしは何も見てないよ知らないよ本当だよ。


「もう一杯おかわりはいかがですかフク」

「カフェオレだけおかわり欲しいな」

「おやおや。フラレてしまいましたか」

「また誘ってね」


 わたしが笑顔で手を振ると、スッと珈琲を淹れに行くルジェタさん。


 珈琲のいい香りが再び漂う。

 あの男の背中がいいんだわ。

 珈琲を淹れてるあの後ろ姿。尊い。好き。

 バリスタ尊いバリスタ好き。

 頼んだらラテアートだってしてくれるよ。


 そうそう。神罰神罰。


 わたしは女神じゃないって、でっかい女神の石像の一部を壊したんだよ。なんか投げたりしてね。


 そっちはわたしが最初に裁いた。


 聖地で、みんなが見てる前で、わたしが女神じゃないと言って破壊行為をやったからね。


 創造主の神さまくんは父なる神かもしれないけどね、わたしはジェフクタール人のママじゃないんだわ。


 世界運営中の女神でスーパー派遣社員たちの社長なんだわ。


 副社長兼秘書はもちろん、わたしの秘書くんルジェタさんである。


「そうですね。もっと楽しみましょう」


 新しいカフェオレがきた。


 そのお顔。その洗練されたその仕草。

 喫茶店で働いちゃだめだよ。

 画面の中に入って欲しくなるからね。


「フク専用の喫茶店でなら働きますよ」

「あ、好き。さすがわたしの秘書くんだ。完璧にわかってる」


 人族は仕方ないね。予想の範囲内。


 お金にはわたしの顔がデザインされてるから無事だと思ってなかったわ。


 せっかく先渡ししたのに。

 ほぼ小銭の山でしたけど。


「ゲームの運営だって改悪改悪言われること多いけどさあ、わたしはジェフクタール相手に神運営目指してるんだよ」


 元人間でめんどくさい性格のわたしは、神として考えてちゃダメだと結論を出したんだよ。


 お天道さまは見てるとかさ、色々と染みついてるわけ。


 こうしたいけど、いやいや神さまはそんなことしちゃダメだろって、自分でブレーキかけちゃうんだわ。


 んで、考えた結果が神=運営だよ。


 大勢がそれはないってなったら、改悪アップデートがまた変更になったりするじゃん。


 これだと思ってさ。


 自分がジェフクタールの運営だと思ったら、考えやすくなったのね。


 吹っ切れたんだ、いろいろと。


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