第14話 鱗族のギュルヴィ王子
おれは、ダンジョンで、女神さまのお宝を手に入れた。
ダンジョンの! 一層目で!
シュシューっと素早く王都を抜け出して、きれいな女神さまの像を見てお祈りして冒険者の証を貰って、ダンジョンに来てよかった!
これで理不尽に怒られないかも!
「うおおおおお! 兄ちゃん! 兄ちゃん! 王兄ちゃあああんっっ!」
「は? 我らのギュルヴィさま?」
「そうおれええええ! シュシューっと帰るううう!」
「え? なぜまた、あ、あああ! 魔法だ! 魔法ですよ我らのギュルヴィさまの! 全然気づかなかったあああっ!」
そう! 前より上手に使えるようになった透明化の魔法だ! 他族にはバレないけどみんなには気づかれることもあったんだよねえ!
それで今度こそ完璧に王都を抜け出して聖地に来たよ! もう帰るけど!
階段の門番たちにごめんねえと言いながら、おれは王都に全速力で戻った。
「ギュルヴィッッ!」
帰ってすぐ理不尽に怒られた。
「王族は! いやまだ幼い子どもは! 王都から! ひとりで出ちゃダメだろう!」
「やだあ。怒んないでよ兄ちゃあん。おれの鱗見てよぅ。『いくら安全でも王都は嫌だ! 王族にされる!』ってシュシューっと逃げた国境の民の子たちはどうするんだよぅ」
「ッグ、か、可愛く言っても正論でもダメだ」
「王! 頑張ってくだされ!」
「愛ゆえに理不尽に叱りなさい! それが王の役目よ!」
「〜〜っ! ギュルヴィ! めっ!」
ピャッと王兄ちゃんの怒気に体が跳ねた。
王兄ちゃんの目が吊り上がっておれを睨む。
「王にいちゃん……好きぃごめんねぇ……」
「あ……」
「あああああっ! 王ッ! 理不尽に叱りすぎですぞ!」
「ああギュルヴィ! ごめんなさい! どうか泣かないで! 何ひとつ悪くないのにこんなに理不尽に叱られてしまうなんて……私では絶対女王にはなれないわ……っ」
「じぃ、姫姉ちゃあんごめんねえ好きぃ……っ」
じぃと姫姉ちゃんが抱き締めてくる。
おれも二人にぎゅうううと抱きついて泣くのだけは必死に我慢した。
王兄ちゃんの怒気はこわい。
体がピャッってなるから。
「兄ちゃんもごめんね。好きだよギュルヴィ。ギュルヴィ。ギュルヴィ好きだよ」
「おれも好きいい」
二人にぎゅうううとしていてたら、王兄ちゃんもぎゅうっとしてきたから、おれも王兄ちゃんを抱きしめる。
「……誰よりも強く美しい聡明な妹よ。女王におなり」
また王兄ちゃんが退位しようとしてる。
「嫌よ。王なら母さまを玉座に連れ戻しなさいよそれか真っ先に逃げた父さま」
姫姉ちゃんがまた嫌がってる。
「真っ先に逃げたのはお祖父さまたちだよ妹よ。早く女王におなり」
「嫌よ無理よ。誰よりも強く賢い偉大な王よ頑張りなさい。そうよね爺?」
「この話はか弱い爺には無関係ですじゃ。ただのか弱い爺には全くもって無関係なので王族の皆さまでお決めくだされですじゃ」
じぃがちょっと早口で姫姉ちゃんに言う。
「爺……お祖父さまの双子の弟は今も王族ではないだろうか? 国境の従兄弟たちもまた集めてもう一度審議すべきでは?」
国境の民たちが王都から逃げちゃうお話だ。
王兄ちゃんはこのお話をよくするんだ。
「王よ。か弱い民の爺たちは絶対に民なのですぞ。今はギュルヴィさま以外の王族を叱って励まし、国境を守る重要な係をしている民ですが王族ではなく民なのですじゃ」
王兄ちゃんに一番このお話をされるじぃが王兄ちゃんにシュッと言い返した。
王兄ちゃんとじぃが睨み合う。
これは王兄ちゃんとじぃが仲良しの証拠なんだって父ちゃんが言ってた。
「お祖父さまを兄上と呼んだりもするじゃないか。それは爺が王族だからだ。これはやはり王の家族に違いない」
「いえいえいえいえ! 兄上が即位し二人目の王子が誕生した瞬間、爺は王族から民になったのですぞ絶対になりましたぞ。民で間違いないと当時の王だった兄上が言いました」
「それは酒をたらふく飲んだ兄弟喧嘩の果ての話なのだろう! 魔物と戦うために! 本当はまだ王族の結界も張れるんじゃないのか!」
「兄上がそう言いました当時王だった兄上が間違いなく民と言いましたぞ妻もしっかりと聞きましたでな!」
じぃがすっごく早口。
王兄ちゃんはすっごく必死。
「もうその話はやめなさい諦めなさい。偉大なる王よ」
王兄ちゃんとじぃのいつものお話を聞いていた姫姉ちゃんが、やれやれって溜め息をついた。
そろそろおれも王兄ちゃんに姫姉ちゃんの言うとおりだって言おう。
「そうだよ。じぃはじぃじゃなきゃ絶対だめなんだよ!」
「もっちろんでっすぞ〜! 未来永劫爺は爺ですぞギュルヴィさまっ!」
じぃのご機嫌な笑顔だ!
さっきまでちょっと恐いお顔をしていたから、じぃが笑顔になってよかった!
「うん! 王兄ちゃんは強くてカッコいい鱗の王さまで姫姉ちゃんは綺麗で可愛い鱗のお姫さまなんだ! 姫姉ちゃんは姫巫女にも絶対なっちゃだめなんだよ!」
「ッグゥ……」
「まあ! そうよねギュルヴィ。知ってたわ私の可愛い弟ギュルヴィ。ああ我らの至宝愛しい王子ギュルヴィ」
もう本当に誰も怒ってないみたいだし、兄ちゃんは王兄ちゃんのままだね。
よかったー。もう一回みんなとぎゅううう。
あ! あのこと早く言わなきゃ!
「兄ちゃん兄ちゃん王兄ちゃん! 聞いて!」
「んッどうしたギュルヴィ?」
「おれすごいの見つけた! 女神さまのおみ、お、お、おみび」
なんだっけ?
「お導きですかな?」
「そう! それ! 王兄ちゃんこれっ!」
じぃに頷いて、ポケットに隠してたお宝を取り出して王兄ちゃんに見せる。
「これ! すごいの! ダンジョンで見つけてね、鱗ないやつらがいっぱいお喋りしてたんだよ! ひょろひょろのぬすっと女がちゃんとライ王子たちを見てて、作戦どおりで、騙されるかどうかも楽しみで、そしたら別の鱗ないやつが来て、血がみっともない臭い獣はショボイ魔法なんだって! ボロボロのがいい服って、ひょろひょろのぬすっと女たちが集まって笑ってて、隠れてたやつがやっぱりだって! これはあいつらの言葉が全部わかる最高のお宝に違いない! 今に見てろよひょろひょろのぬすっとどもめって! おれが見つけたのと一緒のお宝つけて言ってた!」
「…………爺。ダンジョンに遊びに行った隊を即刻呼び戻せ。巡礼も中止だ」
「はっ!」
「女神の門番は大丈夫でしょう。あの場で雑談はしないはず。いつものように交代してから伝えましょう」
「ああ。他族の前で不用意に口を開くならばダンジョンだ。黒い布を巻いて聖地で必死に、必死にいつもギュルヴィなんて知らないごっこをして誤魔化してきた我らの弱みを他族たちに知られる。急いでくれ」
じぃが王兄ちゃんに一度礼をして、シュシューっと駆けていく。
みんな女神さまの新しい神殿に行くのを楽しみにしてるのに、中止になっちゃうみたい。
今の聖地の話を、あのおっきな女神さまの石像の話を、おれもみんなにしてあげよう。
本当におれと同じ真っ白な石像なんだよって!
そうやっておれが話してるうちに、巡礼に行っておいでって、王兄ちゃんが笑ってくれるはずだから!
おれ上手に聖地のこと話せるよ!
だって何度もこの目で見てきたからね!
「ギュルヴィ。頼みがある。そのお宝を兄ちゃんに貸してくれるかい?」
王兄ちゃんが床に両膝をついて、おれに視線を合わせてくれた。
「いいよ! このお宝はもっとたくさん探さなきゃだめだよ!」
「もっと、たくさんこの宝があるのか」
驚いてる王兄ちゃんに、おれが今朝見た未来のお話をする。
「ある。これはね、みんな持つんだ。女神さまのお宝なんだ!」
「わかった。貸してくれてありがとうギュルヴィ。兄ちゃんはうれしいよ。このお宝と同じものをつけていた鱗ないやつの話を、もう一度聖地の話を兄ちゃんと姉ちゃんにしておくれ」
「いいよ! おれがダンジョンから出たら、一緒のお宝をつけて隠れてた鱗ないやつがいたから、おれも隠れてじーっとして見てたんだ! あ! ダンジョン最初のとこだけだよ行ったの! 冒険者の証が緑色で、子どもの冒険者は最初は一層目だけって女神さまとのお約束なんだ! それで暗くなる前に国に帰らなきゃ冒険者の証は無くなってしまうんだよ! あとみんながだめって言ったら行っちゃいけないのは、おれは白鱗だからどこにでもシュシューっと行っていいし、それからぁ……」
女神さまとのお約束はいっぱいあるから、それも王兄ちゃんたちに話した。
ダンジョンって言ったら王兄ちゃんも姫姉ちゃんもまた泣きそうな目になって、おれをぎゅうううとしたからね。
危ないことはしてないよって話して、頬ずりし合った。
王兄ちゃんのほっぺ鱗はかたーい!
姫姉ちゃんのほっぺ鱗はツルツルでスベスベ!
「それでね、鱗ないそいつらがこそこそダンジョンに行ったから、おれはシュシューっと急いで帰って来たの! 鱗ない王の国は女神のみこころ? を理解せず、えーっと、いっぱい怒って泣いちゃうって、おれたちは聖地で怒ってるのと同じことをしちゃだめ! 怒ってるやつの真似は絶対だめだよ! 泣いちゃうからね! 女神さまのお話をみんなよく聞くんだ! そして聖地は……、いつでもシュシューっと行けるようにしておくんだ! そうしたらおれたちは笑ってる奇跡の王族になって、みんな笑ってる奇跡の国になるんだって!」
王兄ちゃんがおれをひょいっと抱き上げて立ち上がると、王の椅子に戻った。
にやーっとしてる。
姫姉ちゃんもにやーっとしてる。
だからおれもにやーってした。
「おれ、えらいでしょ。また行かなきゃってなったら聖地に行くんだ」
「それは……兄ちゃんに言ってからお話して決めようギュルヴィ。誰かひとりでいいから、お前に着いて行かせておくれ」
「だめだよ。おれは待たない。行かなきゃってなったらおれは神に愛された白鱗の姫巫女さまのようにシュシューっと走らなきゃ絶対だめ。だから、めっ! はやだけど、絶対行くんだ」
「ギュルヴィ……わかっているよ。兄ちゃんたちだって本当は不可能だとわかっているよ。ごめんよ。脱皮するほど心配なんだよ私のギュルヴィ……」
「兄ちゃん好きいい!」
しょんぼり脱皮する王兄ちゃんは嫌だから、おれはまた王兄ちゃんをぎゅうううとした。
「透明化魔法をもっと練習しましょう。白鱗の姫巫女さまの魔法を。私たちももっと練習するわ。ね、ギュルヴィ」
「うん。おれがんばる。父ちゃんたちも脱皮してないでみんなで練習するんだ」
姫姉ちゃんの手がおれの手を卵を温めるように包む。
じっときれいな目でおれを見つめてくるから、おれもしっかりと姫姉ちゃんの目を見て、強く頷いたんだ。
そうしたら、王兄ちゃんの激しいぎゅううう! がきた。
抱き締められ過ぎて苦しい。
「あああギュルヴィ。我らが稀宝我らの至宝可愛いギュルヴィ。我らが白鱗の愛しいギュルヴィ。奇跡に駆け行く気高き白鱗の子。皆がお前の愛らしさに泣いて脱皮を繰り返すけれど、父さまや母さまのようにお前の愛らしさに泣いて脱皮ばかりしないように、兄ちゃんも姉ちゃんももっと頑張るよ。白鱗の可憐な奇跡の声をもっと我らに聞かせておくれ」
「うん! おれもっとお話出来るよ!」
その日、おれはいーっぱいお喋りした。
だんだんとみんなが集まってきて、おれは果実水を飲んでもっともっと聖地でのことを思い出してはお喋りした。
「そう! こういう感じの鱗ないやつらだよ。じぃ上手! ありがとう! とってもそっくりだ!」
じぃはとっても絵が上手!
おれももっと練習しよう!
絵はわかりやすいからね!
「ほっほっほのほ。ありがとうございますギュルヴィさま。昔からどうも匂うという聖地でよく見る他族ですなあ」
「ああ。聖地で顔を出しているという、今はもう珍しい他族たちだ。この鱗ない他族たちは、可愛いギュルヴィの為に今後はもっと警戒するようにせねばな」
おれは王兄ちゃんに頷く。
そう。
おれたちは警戒しなくちゃいけないんだ。
「聖地で鱗ないやつらが鱗ないことをするよ。魔物よりも危ないから、おれはもうしばらくしたら聖地に行っちゃだめなんだ。みんなも気をつけてね」
絶対に。
この未来に巻き込まれちゃ駄目なんだ。
「まさか……。神の怒りを、あの黒雲と轟きで大地が揺れる雷と荒れ狂う暴風、止まぬ大雨を忘れたというのか」
驚いてる王兄ちゃんに、もうちょっと詳しく見えたお話をする。
「んんとねえ、鱗ないやつらは女神さまのお宝を誰かが落とすようにするんだ。だからね、お宝を落とさないように、女神の門に着くまで絶対に守らなきゃいけない。女神さまのお宝は武器じゃないから、小さなお宝だから落としても気づかない。女神さまのお宝を持ってるのも今は聖地ではナイショにしなきゃね」
おれは仲良しの他族に聖地で教えてあげるけどね。本当はもうひとつ、女神さまのお宝を持っているから。
角ちゃんたちもあのお髭の泣き虫さんたちも、もう持ってるかもしれない。
でもこれはみんなにはまだナイショ。
「宝を落とすようにか……」
「魔法かしら……」
王兄ちゃんと姫姉ちゃんがお顔を見合わせて考えてる。
するとじぃが口を開いた。
「他族に傷をつけずに、争わずに、気づかれぬまま奪えば神の裁きはないとの考えでしょうな。ダンジョンから女神の門まで、奪った相手に気づかれなければそれでいい」
「ギュルヴィがいなければ、それは名案だと思うかもしれない。なんと恐ろしいことだ」
「神の怒りに触れずに、ギュルヴィが特別な宝を他族よりも多く手にする、見事な策だと思うかもしれないわ……」
それは、とっても悪い考えだ。
じぃと王兄ちゃんと姫姉ちゃんの言葉をきっかけに、ぶわっと恐い未来が見えた。
恐い、これも未来?
おれにはわからない。
でもこれは恐いやつだ。
おれは必死に王兄ちゃんたちに伝える。
「女神さまは見てるからね! 神さまのように目を閉じて怒ってないんだ。神さまもういないけどね! 女神さまがおれは大好きなんだ! おれはね、いつか女神さまに会うんだ! みんなも会うんだよ! だから鱗ないことは絶対にしないんだ! それに女神さまのお宝はダンジョンにいーっぱいあるんだから! 聖地で使わなきゃただの綺麗な飾りだけどね! 他族はみんな無口だけど、小さい声は耳をすませば聞こえるよ。あと、おれたちはしないけど、近くの国の他族を捕まえて女神さまのお宝を使おうとしてもだめだよ。そういうのはね、女神さまの横にいる怖いのがこっそり怒るから。神さまよりもとんでもなく怖いよ。神さまじゃないけど、神さまも泣いちゃうくらい怖い」
「ギュルヴィ、女神さま、だけではないの?」
姫姉ちゃんに頷く。
恐い。恐いのが見える。止まらない。
おれがどれだけ怖くても、見たくないって強く強く思っても全部見えるんだ。
怖い。怖いよ。
おれはこんな風になりたくない。
王兄ちゃんたちも絶対にこうならないように、おれが、おれが頑張らなきゃ。
どれだけ怖くても、おれは頑張るんだ。
「違うよ。きっとおれしか知らない。本当は怖いのもいるんだ。でもね、知らないことにしなきゃだめ。みんなも口にしちゃだめだよ。女神さまだけを怖いのはまもるんだ。女神さま以外に祈っちゃ絶対にだめ。女神さまのこのお宝は正しく使わなきゃだめなんだ」
ぶるっと体が震えた。
勝手にカチカチとなる歯を止めるように、深く息をする。
大丈夫。絶対に大丈夫。
おれたちは絶対にあんなことはしない。
だから大丈夫。
おれは白鱗の姫巫女さまのように強い子だから、大丈夫なんだ。
「たとえ鱗ない敵に捕まって、どんなに痛くて苦しくてもね、鱗ないやつが女神さまのお宝を使えば怖いのが必ずくる。そうしてね、女神さまのお宝を楽しく使わなかった鱗ない国は、怖いのの罰を王でも巫女でも赤ちゃんでも知ることになる。もう二度としないように、全員に何度も何度もとんでもなく恐ろしい罰があるよ。女神さまは知らないから神の怒りじゃないよ。でもね、それよりも恐ろしい罰があるよ。聖地の鱗ない国の門番が今までに見たことがないほど、とんでもなく苦しみ出すけど毒や怪我じゃないよ。神殿やダンジョンに鱗ないやつはいないから、みんなはその間に神殿やダンジョンに行くといいよ」
「……神が、泣くほどに恐ろしい?」
王兄ちゃんに頷く。
あの神さまは、もう赤ちゃんみたいに泣いて苦しんで何度も何度も許してって叫んでる。
無理だよ。
神さまが、おしさーくるのしんかんっていう薄い本を持っていないから、神さまがお約束を守らないから女神さまが怒るんだ。
だから怖いのが怒ってるんだ。
怖いのは、あのお兄さんは――。
「神は女神さまだけだよ。怖いのの神は女神さまだけだから。王兄ちゃんもみんなもおれも絶対に言っちゃだめ。怖いのは女神さまをまもるだけなんだ。神さまはもういない」
「――わかったよギュルヴィ。皆、決して口に出すな。我らの神は女神さまだけだ」
「「「はっ!」」」
「護るものと呼ぼうか。それでいいかいギュルヴィ?」
「いいよ! 女神さまをまもるだけだから。女神さまが笑わないととんでもなく怖い。信じられないほど恐ろしいよ。おれたちを見てくれる女神さまとは違うから、怖いんだ。でもね、女神さまが笑っていれば、にやーっとしてるんだよ。怖いのは女神さまが大好きなんだ。女神さまも怒ったら怖いけどね。絶対に大丈夫。おれがシュシューっと走るから」
「ギュルヴィ……ああギュルヴィ。我らが白鱗の子ギュルヴィ。お前のおかげで我らはどれほど救われるだろう」
「女神さまは笑顔が大好きだよ! みんな歌おう踊ろう! おれ今日はいっぱい怖かったからみんな笑って! 立って! 踊って!」
王兄ちゃんも姫姉ちゃんもみんなも、にやーっとしてたくさん笑って立ち上がる。
今日はとっても怖かったからみんなで歌おう! みんなで踊ろう!
明日はもっと魔法を練習して、また綺麗なボタンを作ろう。
木を削って丁寧に丁寧に磨いてがんばって作るんだ!
いっぱい出来たら、あのとんでもなく怖い石ころのお兄さんに会えるかもしれないから、怖いけどまた聖地に持って行くんだ。
あとは、躾用の布と紐も持って行きたいな。
王兄ちゃんに女神さまのお宝を返してもらったら、それも忘れずに持って行こう。
神に愛された白鱗の姫巫女さまのように、白鱗のおれは他族の良いものと交換出来るからね!




