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第144話 臨時看守


 癒しの空間。

 宿屋のお部屋には癒しの風が吹いておりました。そよそよ。

 窓は閉め切ってますが。


「姫姉ちゃんどこに行きたい?」

「そうねえ。やっぱりフルーツ狩りかしら。あとは、そうね」


 姉と小さい弟が聖地ガイドの本を見ながらキャッキャですわ。


「スターシール帳も貰わなきゃいけないわ」

「うん。姫姉ちゃんはカップケーキかクレープにする」

「まあ! ありがとうギュルヴィ」


 鱗族、だな……。

 ギュルヴィくんがネフェティ姫のスタースイーツを何にするか決定してらあ……。


「姫姉ちゃんのはいちごで、おれもいちご」

「うれしいわギュルヴィ」


 駄菓子屋さんでも、ファヌアス王の許可はあったんだよね。

 好きに選んでもいいけど、最後に見せなさいって。買うか決めるのはファヌアス王。

 未婚女性でもこうなんだよねえ鱗族。

 それが鱗族の普通なんだよなあ。


 女神うだうだしちゃうわ。

 ネフェティ姫は喜んでファヌアス王に見せに行くし、ギュルヴィくんに決められてもうれしそう。

 わたしだったら『はあ?』って言っちゃうことだから、見ててうだうだしちゃうんだな。

 兄弟的にさ。

 ネフェティ姫とわたし似てるんだよね。

 上に長男のお兄ちゃんがいて、下にはまだ小さい弟がいてさ。

 うちのお兄ちゃんや弟たちとの兄弟関係のように、まあ、兄弟喧嘩とかないし全然違うんだけど。

 つい、考えてうだうだしちゃうわ。


「今のうちに聖地を沢山見なきゃいけないわ」

「そうだね。姫姉ちゃんが妻になったらおれも捕まえるし」


 ですよね!

 それが鱗族。

 これが鱗族。

 見てろよ鱗族!

 女神はル○ェタ氏にもう任せたからな!

 女神が苦手なことは得意な秘書くんにお任せですよ。

 失敗したら、ぎゃおんとオギャるわ。


「動画が沢山あるから心配しなくていいのよ! 私はいつもお部屋にいるもの! 本もおねだりするのよ。私は沢山の御褒美を頂く妻になるの」

「……うん」

「衣料品店の本も素晴らしいわ! お洋服も沢山買って頂くの!」

「うん……」


 ギュルヴィくんがなんとも言えないお顔をして、姉に気を使ってるお返事しかしませんね。

 そんなに鱗族的素晴らしい妻になれそうにないのかなネフェティ姫。

 ギュルヴィくんたちはパラパラとぺージをめくり、本を読んでます。


「ファンタジーダンジョンは何故男性専用じゃないのかしら?」


 お仕置き棒がね。

 それに鱗族女性は一生戦闘禁止なんだよね。

 戦うのは鱗族男性だけの種族でもある。


「他族は、女のひとも戦うから」

「ああ。そうね。そうみたいよね。カノン族も戦うのかしら? 妖精ちゃんは、動画で戦ってたわ」

「カノンも、戦うのかも?」


 ギュルヴィくん、ファンタジーダンジョンの攻略本も買ってました。

 てか、めちゃくちゃ買ってる。

 ミラクル鞄から次々に出てくる。

 魔法書店で目についたの全部買ってる感じだわ。妖精たちのお手伝いダンジョンの本とかも全部買ってる。


「あっ、あった。カノン族も、武器を持って戦うみたいだね……」


 ファンタジーダンジョンの武器の紹介。

 モデル的に女性のカノンのお写真も掲載されてます。

 やだなあ、って感じのギュルヴィくん。


「白のカノンは、大丈夫よね……」


 むむっ。

 考えるネフェティ姫。


「一応聞いてみるよ」


 鱗族的には女性が戦闘するなんて非常識。

 白のカノンは戦わないタイプだからよかったのか?

 原稿に響くようなことはしない。

 そんな暇があるなら原稿タイプ。


 一方そのころの臨時看守こじらせた妖精くんは――。


「まだかなあ……」


 暇そうにふよふよ浮いてました。


<やあ>


 メッセージを送信。


「あ、ファヌアス」


 違います。

 うれしそうに自分の妖精用フクフォンを取り出すこじらせた妖精くん。

 いつもは自分のミラクル鞄にフクフォン入れてたのに、今はポッケに入れてました。


 ミラクル鞄にフクフォンを入れてると着信などに気づかないんですよ。

 神界と地上のように、着信などのタイムラグはほぼないんですがね。

 ミラクル鞄にフクフォンを収納すると、着信音やバイブレーション機能には気づけません。

 ジェフクタール人にも同じ説明はしてますが、リアルタイムでやり取りしたいなら、ミラクル鞄ではなくポッケなどに収納してくださいと。

 別アイテムでミラクル鞄に入れてるフクフォンに着信中とお知らせをするアイテムは、もうすぐ販売予定です。


 ちなみにリアルタイム等、神界ネットにジェフクタールのネット環境などもそうですが、時間の概念がない神界と地上で何故こうして普通に問題なく使えているのか。

 女神がネット環境などを創造したときに、思い込んで創造したからです。

 問題ない。

 リアルタイムでやり取り可能などと必死に思い込みました。

 常識など捨てろと。

 これ、創造するとき結構あります。

 少し不思議の方のSFだと思って、女神はやってます。 


「ヒッ」


 フクフォンを確認するとまたヒッて言った。

 まるでホラー体験中のような雰囲気のこじらせた妖精くんが宿屋の廊下にひとり……。


「……」


 女神社長のフクフォンは沈黙。

 お返事がありません。


<やあやあやあ>

「……っ!」


 ビクリと肩を跳ねさせて、青褪めているこじらせた妖精くん。

 フクフォンを持つちっちゃな手が震えてる?

 お返事まだかなー。


 女神はこじらせた妖精くんを放置して、ギュルヴィくんとネフェティ姫を見守ります。


「このお仕置き棒は、男性さまたち買わないのかしら?」

「どうだろ」

「お名前がとてもいいわ。女神さまはお仕置き棒で躾けるのね」

「え?」


 女神も、え? ですわ。

 女神は基本こちょこちょです。

 ゆるふわモンスター、殺さんでお仕置きくらいにして。

 ね?

 みたいな、フクエルの動画の最終回はショッキングペガサスと仲直りがいいよねと、夢があったときに創り上げたファンタジーダンジョン。

 今はもう、ルジェタ監督に土下座する勢いですがね。

 あのころは、ジェフクタール人に少々夢を見てた部分もあったんだよねえ……。


「お仕置き棒で躾けられたら、すぐにいい子になれそうだわ」

「……これなら姫姉ちゃんでも」


 ギュルヴィくんがなんか、希望が見えたおめめをしてます。

 ネフェティ姫そんなに?


「王兄ちゃんが帰ってきたら絶対聞かなきゃ」


 決意。

 力強く頷くギュルヴィくん。

 ネフェティ姫そんなになの?


「お部屋でボトルアクアリウムもいいわ」

「うん。母ちゃんたちにもいいよ」


 ボトルアクアリウムのパンフレット。

 室内で出来る趣味でもあるからか。

 ギュルヴィくん的には鱗族の既婚女性にもいいものだとお話をしてますね。

 脱走が、そんなにあるの? という印象。

 ちょっとリスレイさんの奥さま。

 アイシェさんが気になる。


 けど、女神は鱗族の既婚女性を見守る勇気がないんだよ。


<助けてル○ェえもーん>

<もうしょうがないなあ女神くんは>


 お返事を待ちます。


<本を与えられますが、窓から外を見ているとも、言えはします。男を必死に誘っている、と一目でわかる状態です。鱗族の既婚女性用に対策をしていてよかったですね。飛び出していたかもしれません。窓を何度も壊そうとした形跡もあります。工務店の水色のカノンから伝えさせますよ。地下室を早く改装させます>

<お願いします>

<窓をマジックミラーのようにしていて正解でしたよ。外から彼女が見えていたら破壊行為とは別の意味でも、大騒ぎになっていたかもしれません>


 マジか……。

 そんなレベルなんだ。

 窓を、もう何度も壊そうと?

 んで、外から見えていたらヤバい感じと?

 犯罪者予備軍だわ。

 鱗族の既婚女性対策してなかったら、もう犯罪者ですわ。


「予想以上にヤバい……」


 男に飢えてる感じか。

 長年不満が溜まってる状態として、これ男性陣大丈夫なのかね。

 大丈夫、かな?

 ファヌアス王、ル○ェタ印のアイテムカタログで癒されてたくらいだし。

 完全に発散させてどうにか未婚時代のようになってほしい。

 希望はそこだ。

 妻を満足させないと出られない部屋に閉じ込めたいな……。


 ギュルヴィくんたちだって、お母さんとお出かけもしたいでしょう?

 既婚女性状態の母親しか知らないとかさあ。

 ネフェティ姫みたいに、あんな感じで草スキーとかで遊んで欲しいよ。


「少年少女化薬、もう出そうかな」


 一時的な若返り薬系で。

 赤ちゃん化薬や子ども化薬だとギュルヴィくんよりも小さくなっちゃうから、数日間高校生くらいに若返る少年少女化薬。

 若返り薬を飲んで全盛期だと、既婚女性が全盛期らしいんだよ鱗族は。

 だからこれは最終手段だと思ってたけど。

 既婚女性がそんな状態レベルなら、もう出すべきだよなこれは……。


 効果は数日だけど鱗族の既婚女性は少なくとも、今のネフェティ姫のようにはなれるはず。

 そうすれば聖地で遊べる。

 めちゃくちゃ若いお母さんとかおばあちゃんになっちゃうけど、今の状態じゃファヌアス王が言うとおり野放しには絶対に出来ない。


 有料プランでいいか……。

 子ども化薬はトレーニングダンジョンの有料プランで出るお宝なんだよね。

 無料三十分は早急に必要だろう若返り薬系だけなんだ。


「問題はこの情報をどう広めるか……」


 ゲームセンターのひなあられフレームのように急遽追加しかないかなあ。


「あ! カジノの景品に新景品追加って、カジノ内で広告するか。鱗族は大富豪になるし、大富豪はカジノで散財もしてほしいし」


 ということは、お高め設定にしよう。

 最高で、五日間の少年少女化薬?

 あとは三日かな。

 効果が一日だけじゃ短いよ。

 お高くするし、十日間を最高にするか。

 で、ダンジョンの有料プランでは効果が一日のお試し的な少年少女化薬。


 そうしよう!

 子ども化薬は効果が切れたらポンッと元の姿に戻るけど、少年少女化薬は元の年齢の姿と若い姿がブレる感じだよ。

 アワワワ! ヤバい! 効果が切れる! 帰るぞ急げー! と時間の猶予があります。

 鱗族対策です。


「さて、いくらにするか」


 若返り薬よりも高くするか……。

 悩みますな。

 若返り薬がカジノコイン二十万枚。

 定価一千万クル。

 鱗族は今のところ一日で約百万クルの収入。


「ふむ……」


 現状で冒険者ギルドに売ってるだけで、この収入ですよ。

 鉱石族を中心に物産店の収入もえらいこっちゃになるのは確定と言える。

 鉱石族の収入は、ほぼ鱗族の収入になると思われる。


「とんでもない太客が、もうすでにいるんだよな鱗族」


 それも考えると……。

 いやでも、カジノの宮殿はカジノコイン三億枚……。

 百五十億クル。

 宝箱や福引でも宮殿は出るけど。


 オーダーメイドで宮殿を買ったり、改装や増築をしても、鱗族だしな?


 あとは奇跡の島五千万クルに追加でいろいろと買うはず。

 ブティックホテルの移動費用と改装費用。

 毎日十万クル稼いで、鱗国の物産店で酒の実を買って帰る姿も想像出来る。

 家族で、何日かに一個の酒の実くらいだといいけど、毎日ひとり一個買う姿も想像出来る。


「強気にいこう。少年少女化薬の景品を狙うのは鱗族くらいだ」


 聖地はお金を回収しなきゃいかん!

 ル○ェタ印のアイテムのように、鱗族が欲しがる高価な景品にするのだ!


 というわけで!

 カジノに新景品だ!

 十日間少年少女化薬百万枚。

 五日間少年少女化薬五十万枚。

 三日間少年少女化薬三十万枚。

 十日間の少年少女化薬で定価二千五百万クルに決定!

 一日間の少年少女化薬はトレーニングダンジョン有料プランの宝箱から出るよ!

 様子を見て、トレーニングダンジョン以外にも追加するか決めよう。


「新春開店セールが終わってから追加か、もう追加するか……」


 うーん。

 一日間の少年少女化薬はお試し版みたいなものでもあるし、トレーニングダンジョンに先にしれっと追加しよ。


 ところで、こじらせた妖精くんからのお返事がありませんね。

 ちらっ。


「…………」


 フクフォンを両手で持って神妙なお顔のこじらせた妖精くん。

 宿屋などの宿泊施設は防音対策済です。

 リスレイさんの奥さまアイシェさんがお部屋の中で暴れても、外には聞こえません。


「マザコン連合に言おうかな……」


 ちょ!

 そんな対策しないでよ!

 そんなにオフクロさんが嫌なの?

 メッセージ送っただけじゃん!

 うおぉん……!


<ルジェパパえもーん!>

<子離れですよ。ウザ絡みしないで神界から見守るだけにしましょう>


 早すぎるんだよ!

 結局は本人次第だけれども!

 早すぎるの!


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