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第143話 不思議な実


 一軒家の焼き鳥屋で愚痴ってスッキリ。


「ママ!」

「よく見なよ。マジカルちゃんだよ」


 マジカルちゃんと軽くお昼寝をしていたら、目ざといマザコン連合のカノンがやって来ました。


「……ならいい。行ってくる」

「気をつけてね。いってらっしゃい」

「うん」


 マザコン連合所属の妖精じゃなければ、ずるいずるいと騒がないお約束です。

 オフクロさんはマザコン連合だけとスキンシップするわけじゃないのでね。

 ルジェタPは撮影に戻ってます。


「んー……」

「おはよう。何か食べていく?」

「んん~……いい。おはよう。またねマミィ」


 起きてすぐに、スッと瞬間移動でいなくなったマジカルちゃん。

 マザコン連合以外の子はこんな感じです。


「ふぅ……」


 寂しいお気持ちが多い日もある。

 カノン族や妖精たちの子ども時代をすっ飛ばして創造したのはわたし。

 贅沢なお悩み。

 そうも言えますな。


 というわけで!

 女神は冒険者島の宿屋を再び見守ります。


「ギュルヴィの負担になるが、マニキュアの実の木も増やして収穫量を増やすか……」


 しょんぼりなファヌアス王。

 ごめんよ。

 もっと売っておくれ。


 というのもね、このマニキュアの実が便利なんだわ。

 マニキュアだけじゃなく、塗料としてもめちゃくちゃ有能なの。

 色も豊富なんだわ。

 何色のマニキュアの実かは、マニキュアの実の見た目で判別出来る。


 カラー印刷とか、ペンに色鉛筆にクレヨン。

 絵の具も作れた。

 今までは女神パワーで創造した塗料を使ってたけどね。

 なるべくジェフクタール人から買い取りをしたいので、足りない分以外はマニキュアの実を使うようにしてます。


 マニキュアの実はひとつが小さいから、百個で一万円クルで買取り。

 手作業で実を収穫をするのよ。

 重さで買取りは、ジェフクタールじゃちょっと……だし、百個で一万クルとしてます。


 マニキュアの実の中身は液体。

 潰れやすい不思議な実でもある。

 不思議な実は一日の収穫量に限界はない。

 ただ終わると急に木が枯れる。

 新しい木を育てなくちゃいけないけど、木が育って実を収穫出来るようになるのも早い。


「ミラクル鞄に入れるのもギュルヴィさまじゃないと駄目か?」

「……いや、そうだね。白鱗の姫巫女の不思議な鞄に触れていいのは白鱗の子だけだったが、もうギュルヴィ以外が入れてもいいか……」


 そういうアレか!

 確かに不思議な実を種類ごとに小袋に入れたとしても、全部ひとりで収納をするのは大変だわ。

 まだまだ子どものギュルヴィくんだし。

 酒の実はだいだい小さいけど、他の不思議な実はゴルフボールくらいの大きさの実もあるし大きいのだと林檎やじゃがいもや、瓜くらいのもある。

 それを沢山鞄に入れるのは大変。

 大きい実はミラクル馬車で運ぶようにアドバイスはしたけど、潰れやすい実はギュルヴィくんのミラクル鞄に収納なんだよね。


「百個で一万円クルだからね」


 めちゃくちゃ高価買取りなのよ?

 マニキュア一本、百均で買ってるようなものなんだよ?


「冒険者ギルドは高く買ってる、けど」


 こじらせた妖精くん。

 退職届を提出したこじらせた妖精くんです。


「一番高く売れるのは酒の実だろ?」

「酒の実を収穫するのは男だろう? それに一日に数個しか買ってくれない」


 あ、そういうアレ?

 酒の実は一個十八万クルか八万クルでの買取価格だけど、ワインやリキュールみたいなお料理やお菓子に使える酒の実でも、一日五個のみ買取りにしたのね。

 あとは一日に二個まで買取ります。


 酒の実はマニキュアの実みたいに無制限買取りじゃないのよ。

 マニキュアの実は他にもいろんなことに使えるけど、酒の実の用途はそんなにないから。

 けど、一日に酒の実を少し収穫するだけで左団扇生活なんだよ鱗族は。

 あとは鱗国の物産店で他族に売って、と。

 他族に自分たちで売った方が得だよ、と。


「マニキュアの実ならば収穫したすべてを百個ずつ日々買ってくれる。女たちに日々収穫させなければならない」

「まあ、酒の実と比べるまでもなくマニキュアの実は安価だが」

「それでいい。女たちが調子に乗るからね」


 うわー。

 女性がマニキュアの実の収穫を頑張っても、酒の実は一個で最高十八万クルの買取り価格。

 外に出る収穫作業は短時間だろうし、たぶん追いつけない買取り価格ですわ。

 ほんと刑務所みたい。

 お給料めっちゃ安いイメージ。

 こじらせた妖精くんは何故か納得したように何度も頷いてます。


「いずれは妖精たちを雇う。実の収穫量を本格的に増やすのはそれからでいい。奇跡の国では妖精たちのお手伝いダンジョンから女用にお願いをした依頼を受けるよ」


 はい?

 これは、ル○ェタ氏の仕業だな……。

 ああでも、鱗族には必要なのかなあ。

 既婚女性用に室内単純作業が必要なのかも。

 写経みたいな感じで、鱗族の既婚女性には毎日ノルマがあるんだよ。

 夫と男性さまに今日も感謝します。ありがとうございます。

 みたいな内容を延々と書くの。

 洗脳……とか思うけど、鱗族の既婚女性は私室から逃げるらしいし、なんだろうな?

 ネフェティ姫も脱皮するまで反省は一切してなかったし。

 洗脳されてない、とは言えるんだよね。


 そんなお話し合いと現時点での一日の収入などの見直しや計算をファヌアス王が終わらせたころ、ギュルヴィくんが目覚めました。

 ネフェティ姫はまだ寝てます。


「おはよう王兄ちゃん……じぃ……」

「おはようギュルヴィ」

「おはよう!」

「まだ昼間ですぞギュルヴィさま」

「ん~……」


 寝ぼけてるギュルヴィくん。

 おめめをこしこし。


「果実水がありますじゃ」


 リスレイさんのこの変わりようよ。

 よく考えたら、白鱗の巫女もそうだったもんな。あー、そう考えると鱗族の既婚女性も影で舌を出すタイプなのかもしれない。


「ありがとう。じぃ……」


 まだ眠そうなギュルヴィくん。

 いっぱい遊んだものね。


 そんなこんなで、お顔を洗ったりジュースを飲んだりして、おめめパッチリになったギュルヴィくん。ネフェティ姫も起きて洗顔したりしてます。


「ギュルヴィ」

「なに?」


 ファヌアス王がマニキュアの実などのお話をギュルヴィくんにしてます。

 するとどうでしょう!

 ギュルヴィくんが珍しく嫌そうなお顔になりました。


「やだ」


 おお。

 ギュルヴィくんの珍しい態度です。

 記念撮影な件。

 こういう成長記録は思春期を過ぎてから、本人に見せたくもある。

 今だけだから、一応撮ってるだけだけど。

 これは盗撮でもあるが、女神はそんなの気にしないのだ。

 いざとなったら『わたしは記録記念の女神』とでも名乗る所存です。

 あなたに動画やお写真を授けましょう。

 ジェフクタール人はそれでいいのだ。

 地球人相手なら頼まれてもしないしね。


「嫌?」


 ファヌアス王。

 ギュルヴィくんにビックリ。

 普段どんだけギュルヴィくんがいい子なのか、よくわかる驚愕っぷりです。


「すぐ潰れる実はやだ。おれのミラクル鞄が汚れちゃう」


 ギュルヴィくん!

 あー、そうか。

 鞄に入れたり出したりするときに、注意が必要な実でもあるよなあ。

 マニキュアの実が潰れたらインクが垂れるようなものだし、ギュルヴィくんのミラクル鞄は白。

 そりゃあ、汚したくないし警戒もしちゃうよねえ……。


「別のミラクル鞄を使えば?」

「それなら、いいけど」

「ああっ、不思議な鞄は、ミラクル鞄はひとつだけじゃなかった! 私はなんと愚かな……」


 え? そっち?

 そういう思い込みをしてたの?


「え?」


 これにはこじらせた妖精くんも驚くわ。


「あのような特別な鞄はひとつだけだと……」


 思い込みって怖いね。

 自分のお腰にミラクル鞄。

 すでに装備してるのに。


「王兄ちゃん……また寝てないの……?」


 心配そうなギュルヴィくん。

 ファヌアス王は睡眠不足、ではありそう。


「実は爺がね。酷いんだよ……」


 告げ口!

 告げ口さんじゃないですか!


「またじぃと喧嘩してるの?」


 また。そうか……。


「爺が私に寝るなとね。私もギュルヴィたちのようにお昼寝をしようとしていたら……」 


 ツラそうにファヌアス王がギュルヴィくんに語り出しました。

 リスレイさんは妻の様子を確認しに行ってます。リスレイの居ぬ間にえんやこら。

 ギュルヴィくんの反応が気になる女神。


「うーん……」

「兄の味方になっておくれ」

「王兄ちゃん、今から寝たいの?」

「…………今はもういいかな」


 おめめが冴えちゃってるファヌアス王。


「じぃが夜も王兄ちゃんのお布団を引っ張ったら、おれが言うね」

「ああ。お願いするよギュルヴィ」


 解決しました?

 たぶん……。


「兄ちゃんたちは少し冒険者ギルドに用があるから行って来るよ。アイシェの監視は妖精くんにお願いしたから、ギュルヴィはネフェティを見ててくれるかい?」

「わかった」


 アイシェは爺ことリスレイさんの奥さまのお名前です。


「何かあればフクフォンで。出来るだけ早く戻るからね」

「うん!」


 使命感、なんだろうなあ。

 ギュルヴィくんが力強く頷きました。

 いいタイミングですな。

 ここで女神社長パワーだっ!


「……妖精くん。どうしたんだい?」

「あっ、あー……。あれはガイド妖精の服だったから……」


 私服に着替えるか、その妖精初期装備のシンプル過ぎるお衣装でいなさい。

 女神社長はまるでコメディアンのような大きな蝶ネクタイと案内のタスキ、ガイド妖精の派手なお衣装とお仕事鞄を女神社長パワーで回収しました。


「いつもはその服なのかい?」

「え? ちっ違うよ」


 同情を誘うような妖精の初期装備。

 思わず何かプレゼントをしたくなるほどシンプルな妖精の初期装備。

 ガイド妖精の衣装は派手なコメディアン風なので余計に驚くよね。


「……えっと。あとで着替えるから大丈夫」


 まるでシンプルなワンピース。

 膝丈の裾を押さえて恥ずかしそうにしてるこじらせた妖精くん。


「……ああ。寒くはないかい?」

「平気」


 この後、ファヌアス王はネフェティ姫にもこの部屋から出ないようにと注意をして、宿屋の受付をしているカノンにもお願いをして、リスレイさんと冒険者ギルドに向かいました。


 ネフェティ姫はお着替えしてまたお洋服が変わってました。

 一日に何回着替えるんだろう? という疑問を女神が持つほど、ネフェティ姫はよくお着替えをしています。


「いきなりお着替えさせなくてもいいのに……」


 リスレイさんの奥さま。

 アイシェさんが閉じ込められているお部屋の前で、ふわふわ浮いてる妖精くん。

 オフクロさんに直接言いな。

 こじらせた妖精くんは暇そうでもあるので、メッセージでも送りつけようかな……。


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