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第142話 愚痴


 冒険者島の宿屋のファミリー向けのお部屋。


 鱗族のネフェティ姫とギュルヴィくんがベッドでスヤスヤとお昼寝をしている中、ファヌアス王がひとり計算をしておりました。

 昔話みたいだなオイ。


 それはさておき。

 ファヌアス王が、爺ことリスレイさんが能天気だの遊んでるだのとムカついてた理由が、なんとなく女神はわかりました。

 ファヌアス王とリスレイさんはテーブルを挟んで、お互いに向かい合う形で座ってるんですけどね。


「それでな王。そのとき思ったんだよ。国のブティックホテルも改装して奇跡の島に持って行こうってさ」


 リスレイさんは禁止ワードは言わなかったけれど、その前後の発言で禁止ワードの意味がなかったのでカットしましたがね。

 いろいろと必死に考えつつ計算をしてるファヌアス王の邪魔でしかないんだわ。


「なあ王。聞けよ」

「聞いてる」

「いつ奇跡の島買えるんだ?」

「うるさいな。まずは聖地に住めるようにするのが先だよ」

「もうよくないか? 先に奇跡の島でも」

「いいわけないだろう? ギュルヴィたちは奇跡の島には行けないようにするんだぞ」

「宿屋でよくないか?」

「よくないね。ふざけるな」

「兄上みたいなこと言うなよ」


 あー、つまんねえ。

 ですよ?

 ファヌアス王がリスレイさんを睨むのもわかります。

 というか、リスレイさんってこういうひとだったんだ、と女神は非常に衝撃を受けております。

 こじらせガイド妖精くんもですが。


「大きな風呂に、女ももっと呼び寄せるか。俺の妻だけじゃなあ……」


 リスレイさんが自分で自分の身体を洗ったのは随分と久しぶりだそうです。

 殿さま生活?

 それに近い感じもするんだよな鱗族男性。


「夫婦ばかり呼ぶなよ」

「俺の孫たちは呼んで、息子夫婦はどれだけ国境に残すか。俺たちに奉仕する女が少ないんだよなあ。ただでさえ国に女が少ないってのに」


 ちらっ。

 こじらせガイド妖精くんがリスレイさんに見られました。

 鱗族はたまたま男女比がそういう世代なだけみたいですね。

 男児の出生率が二世代続けて高い状態。


「今の状態で以前のように女の監視は出来ないよ。ここは聖地だし、夫はもっと厳しく躾けて妻を監視しなければならない」


 ちらっ。

 こじらせガイド妖精くんがファヌアス王さんにチラ見されました。

 それはさておき、という感じでリスレイさんが言いました。


「昼間は地下に閉じ込めよう」


 酷え。

 ナチュラルに扱いが酷いよ鱗族。

 鱗族の既婚女性は犯罪者予備軍だけれども。


「うーん。閉じ込めるなら、それこそ地下を牢屋にしたら?」


 各国、犯罪者なんていません。

 ジェフクタール人が知らない言葉である“牢屋”の説明をするこじらせガイド妖精くん。

 ついでのように、妄想上の刑務所についても語ってます。


「神界には、そんな場所が?」


 冤罪ですファヌアス王。

 ありません。

 薄い本などの中には存在しますが、神界には存在しません。


「違う世界にはあるらしいんだよ」


 ありません。

 どんな世界だよ?

 ディストピアかよ?

 地球にはありますが、こじらせガイド妖精くんが思い浮かべてるのは日本の薄い本などだと思います。はい。妄想注意です。


「あのね、その世界には、えーっと」


 妄想上のことをこねくり回して都合よく語るこじらせガイド妖精くん。

 アドバイスも混ざってますね。


「前のように聖地への門や国外に行こうとする女を捕まえればいいってわけじゃないよなあ。部屋から抜け出すことにも重点を置かないと駄目だ」


 鱗族既婚女性。

 独房ならぬ私室からの脱走もそう珍しくはないようです。

 男性たちはわざとある程度逃走させてから捕まえるみたいですね。

 同じ手が通じる。

 そう思わせないと、ガチで逃げられると。

 聖地だと被害者が他族男性。

 国外だと魔物に殺されるからね。

 前は国から出さない、というのが重要だったみたいです。

 既婚女性は聖地にももう行かせない。

 今まではそれで大丈夫だったけど、とお話してます。


「これからはカノン族や妖精たちもいるからね。私たちもいろいろと考え直さないとね」


 すでにこじらせ村の代表たちをキープ状態のファヌアス王。

 なんか言ってます。

 女神は学習能力高えなと思いました。


 そこに魔法とアイテムですわ。

 ル○ェタ印アイテムカタログからも学習してるし……。

 エロ目的にパソコン上達した、とか世代が上になるほどそういう話も聞いたことあるけど、そんな感じだわ。

 未知の世界なのに、自らどんどん進んで勉強している。


「ミラクル家電店の子ども見守りミラクルカメラもよかったよ」

「あ、監視カメラの方がいいよ!」


 こんな風に話せば話すほど、アイデアが出てくるというか。

 こじらせガイド妖精くんが元気です。


「買うものが山程だ……」

「早くしてくれよ」

「少しは手伝ったらどうだい?」

「それは王がやることだろ」


 いやー、自分も本当は手伝ってあげたいんですけどね? 自分部署違うんでサーセン、みたいなリスレイさん。


「……はあ」

「また参考に見てくるのはやっていい」


 楽しいところはやる。

 そんな感じですね。


「私だって実際に見たいよ」

「王にはそんな時間はないだろ。気持ちはわかるけどさ、俺がよく見てくるから安心しろ」

「……もうミラクルくだものグミを食べさせたんだ。爺は自分の妻を見張ってろ」


 リスレイさんの奥さま。

 宿屋に再びチェックインして、ギュルヴィくんとネフェティ姫をこの部屋に連れて行ってから、別室でリスレイさんが奥さまにミラクルくだものグミを食べさせたんですよ。

 ギュルヴィくんが一番状態から、ミラクルくだものグミを食べさせて奥さまを元に戻したんですが、念のため鱗族専用に用意してた別室に即閉じ込められた状態です。


「妖精くんが手伝ってくれるから大丈夫だ」

「え?」


 またもや看守のお仕事に巻き込まれるこじらせガイド妖精くん。

 リスレイさんさっきも言ってましたね。

 ファヌアス王が考えるお顔をしてます。


「実際、今はどうなんだろうね。カノン族や妖精たちは手伝ってくれるのかい?」

「僕はガイド妖精だから、案内やお昼寝をしていないときはお手伝い出来るけど」


 ファヌアス王たち以外、元々案内する気がないこじらせガイド妖精くん。

 こじらせガイド妖精くんを鱗国に連れ帰りたい、となれば一日二万クルの妖精とお友だち契約が必要ですが聖地限定ですからな。

 ファヌアス王たちが案内を必要としていない時間は、こじらせガイド妖精くんは好きに過ごします。元々好きにやってもいますが。


「ガイド妖精はいつまでもガイド妖精のままなのか?」

「ううん。あっ! 僕ガイド妖精もう辞めようかな。聖地で遊ぶ方がいいよね……」


 そりゃ遊んでてもいいけど、ね。

 女神は複雑なお気持ちですよ。


「ちょっと相談するよ」


 妖精用フクフォンを取り出してシュッシュ。

 女神にメッセージか、と思いましたが女神のフクフォンは静かなままです。


「さて、どうしましょうか」


 実はまだ同じお部屋にいました。

 私の背後のソファーに座ってます。

 フクエル裁判チョーたちがお昼寝をしているので、こちらも休憩中のルジェタP。

 アイドル動画のテスト撮影は一時中断しているのであります。

 そんなルジェタPのフクフォンがとても元気ですね。

 何かメッセージが届いてます。

 女神のフクフォンは沈黙。

 メッセージひとつ届きません。


「…………」


 完全に頼られてますわ。

 女神社長ではなく、副社長兼秘書くんの方が頼られてますわ。

 これが裏での協力関係。

 女神には何ひとつメッセージがないとな?

 退職希望なのに?


「ふーん」


 女神には退職届だけが届きました。

 こじらせガイド妖精くんは本日付けで退職をして、こじらせた妖精くんになりました。

 一身上の都合により、とは一体どんな都合でしょうね?


 まあ、いいッスけど。

 これも子離れか……。

 実家から出たら実家にバイバイを告げるタイプなのかな?

 はあ? 忙しいから帰省無理とか、せっかくの休みにわざわざ実家とか帰るわけないじゃん、と言うタイプか?

 オフクロさんの心にダメージ。

 わたしも忙しいときは実家に帰らなかったこともあるしな……。


「飲みます?」

「別に」

「まあまあ、そう言わずに」


 久しぶりの神界愚痴り場、焼き鳥屋。


「それで、今日はどうしたんです?」


 いるのは変わらずバーテンダーですが。


「兄ちゃん。いい加減、焼き鳥屋の兄ちゃんを目指そうぜ?」


 うぃ〜ヒック。

 兄ちゃん焼き鳥もう一本おくれ、である。


「お客さまがイメージする焼き鳥屋の兄ちゃんの格好からまず似合わないんですよねー」

「頭にタオル巻くだけじゃん。巻きな」

「はい。追加焼けましたよ」

「豆腐ステーキもおくれ」

「はいはい」


 愚痴りつつヤケ食い。

 なんだよー!

 わたしにも相談しろよー!

 退職届が届くだけ。

 寂しいじゃん!

 うち家族経営なんだが?


「うおぉん……」


 控えめだけど、こじらせ村の住人たちと仲良くキャッキャしてた妖精くん。

 差し入れに棒付きキャンディあげたら喜んでたこじらせ村の住人たち。


 思い出にうおぉん。

 早すぎるでしょう?

 うちの子、創造してから体感そんなに経ってないよ?

 せめて神界で体感二十年は経ってからにしようよー!

 うおぉん!


「パピィ。ワタシにも焼き鳥ちょうだい。タレで三本」

「はいはい。いらっしゃいませ」


 マジカルちゃんが神界に帰って来ました。

 一軒家は出入り自由なんですよ。

 ここが! みんなの実家だから!

 マザコン連合には別ルールがありますが。

 神殿建てとけ、なんで一軒家? いつまで一軒家? とか言われたりもしますが。

 みんなの実家なので。


「新緑のカノンは?」

「ワタシの服を作らせてるわ」


 闇の声優マジカルちゃんは一日中ベタベタされるのは嫌いなので、新緑のカノンも大人しく見送ったみたいです。


「マミィに頼まれたレストランの話。だいたいわかったわよ」

「お。なんだった?」


 森の葉族。

 レストランのことどう思ってるの?


「森の葉族はね」

「うん」

「ワタシたちみたいに天使に近いわ」

「は?」


 天使に近い。

 存在的な意味の話ね。

 天上の住人か、地上の住人か。

 天使に近ければほら、トイレ必要ないとか、そりゃそうだろみたいにイメージ出来るじゃん。

 歪みが出ないんだわ。

 神や天使が食べなきゃ死ぬか?

 そんなことないって言える。

 それで当然の存在だから。

 神さまくんは地上の住人にそれをやったから、ジェフクタール人が歪んでるのもあるのね。


「食べないなら食べないで、他の種族よりも大丈夫なんだと思う。レストランに興味がないから、行かないんですって」

「興味がないだけ?」

「そう。シャナノイアたちは新緑のカノンがレストランに行きたいなら行くそうよ。自分たちだけなら行く気がないみたい」

「森の葉族は、食欲よりも性欲ですよ。性欲を満たすために一ヶ月から三ヶ月ベッドの上、ということも普通にあります。何も食べずに」

「はい? 一ヶ月? 三ヶ月も食べなくても平気なの?」

「事前に、冬眠前のように食い溜めするんですよ。それから冬眠のようにベッドの上の住人になります。終わったらまたドカ食いする感じですね。冬眠と違うのは消費カロリーですが、事前の食い溜めで問題ない種族ですよ。ベッドの上でも水分補給はしますし」

「シャナノイアたちが飲み物を飲んでるのは見かけるけど、普段はきっと片手間に軽く食べるくらいよ。ひとくちふたくちで終わるくらい小量よ。新緑のカノンと一緒にお菓子会だと、新緑のカノンが渡せば、いっぱい食べてたわ」


 飲み物。

 甘党な森の葉族の飲み物は、あれは高カロリーだろうけど。

 え?

 森の葉族がレストランを選んだ理由。

 携帯食もあったのに?


「本人の気分と、国のように甘いお茶が飲めないからですよ。魔蟲が寄って来るので」

「魔蟲問題か……」


 森の葉族のあの甘そうなお茶が魔蟲ホイホイなのはわかる。

 けど気分。

 気分もか。

 ほんとにレストランを、おまけで選んだ感が凄いな。


「はい。フクは豆腐ステーキ。マジカルちゃんの焼き鳥も焼けましたよ」

「ありがとよ兄ちゃん」

「ありがとパピィ」


 森の葉族には食事的な意味でも新緑のカノンが重要なんだな……。

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