表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/155

第133話 プンプン



「我らは魔物を狩るときに、そう狙ってはならぬと言われてきたのだ」

「え?」


 女神社長も、え? ですわ。


「狙えば、魔物が消滅するのだ。肉が欠片も残らぬ。よって我らは、魔物を狙ってはならぬと狩りをしてきた」


 つまり、悪癖?

 悪癖かこれ?

 景品を狙おうとすると、無意識に狙っちゃ駄目だと狙いをズラしちゃう、みたいな?

 竜人族は超長命だし、魔物は日々狩るような生活だっただろうし、狙わないようにするのがもう癖になってる、のか……。


「魔物が、消滅……?」


 そっちの方が衝撃だったご様子の救世主。

 べファル王にとっては普通のことだからでしょう。「うむ」と実に軽い感じで頷いてます。


「べファルちゃんたちが強いのは知ってるけど、魔物が、消滅…………」


 聖地リフォーム前の巨大な女神の石像破壊事件での話です。

 あれでブチ切れた角ちゃんたちを見た魔毒族のおじいちゃん王たちが、大興奮してたんですよ。


 誰が強いと言ったら角ちゃん!

 角ちゃんと言えば超強い! って、ヒーローを応援する子どものようなおめめをするんですよね。

 魔毒族については、巨大な女神の石像破壊事件を忘れてくれないだろうなと、女神がもう諦めてるレベルです。はい。


「皆、景品も魔物だと思うのだ。景品を狙ってはならぬ」


 べファル王のアドバイスに頷いた竜人族の若い世代たちが、クレーンゲームにもう一度挑戦です。


「なるほどね!」

「王の言うとおりだ」

「取れたー!」


 たぶん、たとえばダーツなら中央を狙うんじゃなくて、全体的にぼんやり狙う感じ?

 ここだ! と集中して狙うと、狙いが大幅にズレて駄目みたい。

 かるーく、それこそ大雑把にだいだいこのへん、と気軽にやる方が竜人族はいいようだ。


 竜人族の男性陣は。


「あ! なんでですか!」

「違うってば!」

「もうっ! もうううううっ!」


 竜人族の女性陣は、これは駄目だ。

 確かに、前よりはいい感じではあるんですけれども……。


「もうっ! もうっ! 王! 王ってば! 来てください!」


 ぎゃ、逆にね、前よりも少々おしい感じなんですよね。

 ちょっと失敗しちゃった感があるんですが、何度やってもソレなんですわ。


「むううううううっ!」


 唸るセノキアちゃん。


「王! 取れないんだけど!」

「なんでなの王!」

「ああああ! もうううううっ!」


 気持ちは、とてもわかるよ女性陣。

『やったー! これはあと一回で取れるじゃーん!』って感じから、何度やっても取れないんだもの。

『なんでだよ!』って、同じ状況になったら女神社長も思うしイライラするわ。


「…………皆は、あれだ。先程のをするとよい」


 恐る恐る、言った感じのべファル王。


「セノキアのは我が取ろう」

「俺も取るよ」

「大丈夫だって」

「ね」


 竜人族の男性陣が即座に女性陣のフォローをはじめました。

 女神社長はそういえば、ファンタジーダンジョンで竜人族の元女王さまが『そなたはいつも我を助けてくれる』と、ファベルさんとイチャついてたなと思い出していました。

 竜人族の親世代、皆さんそんな感じでイチャついてましたね。うん。


「わあ! ありがとうございます王!」

「ありがとう!」

「やった!」

「上手ね!」


 キャッキャ!

 男性陣が景品を取ってプレゼントすると無邪気に喜ぶ女性陣。

 竜人族の女性陣が、自分で取ることにこだわる性格じゃなくて本当によかったな、と女神社長は思いますよ。

 取ってほしいんじゃないの! 自分で取りたいのよ! って怒るタイプじゃなくてよかったわ。


「……」


 音色族のレイガ王、きっとはじめて見るタイプの女性陣にビックリしちゃってるの巻。


 保管が絡まなきゃ、音色族はのんびりまったり一族だから。

 のほほんと、男性も女性もしてるから。


 ちょっと若返り薬第一号の元おばあちゃんもほら、ヒロインムーブが凄かったじゃないですか?

 ああいうときに現れてヒーロームーブする感じなんですよ、音色族の男性は。

 可愛いお花とかをあげて、一緒に歌おう? とか、演奏をはじめて、おててを繋いで一緒に帰ろうみたいな。


 音色族にホロンと泣いちゃうヒロイン系女性はいても、同族相手に怒って怒鳴ってプンプンする女性は歴史上いないレベルだと思うんですよ。

 レイガ王の妹姫、レティ姫も人魚族に限定お財布を残り全部買われたけれども、お兄ちゃんのレイガ王に泣きながら抱きつくだけで誰にも八つ当たりもせずに、ほろほろ泣きながらフードコートでパフェをヤケ食いしてましたし。

 思春期にも反抗期がないのが音色族です。


「誰も喧嘩にならなくてよかった」


 ホッとする魔毒族のゼノム王子。

 えー、こちらは反抗期もありますし、兄妹喧嘩もあるみたいですし、怒鳴ってプンプンするけど男性陣のフォローですぐに笑顔になる竜人族女性よりも、いろいろとね、あるんじゃないでしょうか。


「笑ってる……」


 同族の王にあんなに怒ってたのに、といった感じのレイガ王はまだ驚いてますね。


「もう怒ってなくてよかったよな」


 うんうん。よかった。

 そんな感じのゼノム王子。


「そうだねゼノム……」


 ゼノム王子の真意は伝わっていないんでしょうが、会話は成立してます。


「あんなに同族に怒るなんて」

「あんなにすぐ機嫌がよくなるとかさ」


 はい! 会話成立終了!

 続く言葉は信じられない、かな?

 お互いに。


「「ん?」」


 首を傾げて見つめ合うおふたりです。

 そのときでした。


<ママー。人魚族が神殿買いたがってるけど女神の石像どうなの?>


 工務店の橙色のカノンからのメッセージ。

 ふぅ……。

 そういえば、貢ぎ系大富豪人魚族が聖地に荒稼ぎとお買い物に来てましたね。

 もう大富豪になったのか……。


<ル○ェタのトラウマ的に>

<あれもう解決した? 神殿売っていい?>


 次々に届くメッセージ。

 ふぅ……。

 どうするか。

 まさか新聖地オープン初日でフクエル島計画とか、考えもしなかった女神であります。


<駄目です。神殿は聖地だけです>


 ルジェタ氏が現れました。

 女神も遠い目をやめて、このトークに参加しましょう。


<でもさー、宗教施設って各国どころか各市にあるレベルだよね>


 お寺とか神社とか。

 人魚族だけじゃなくて、国に欲しいと言われても不思議じゃない施設だよね。


<ルジェタさんのトラウマ、消えないレベルですかね?>


 自己申告希望です。


<フクが私を癒して癒して癒して癒して癒して、毎日癒してくださるなら消えますが>

<じゃあ無理かあ>

<そう簡単に諦めないでくださいよ!>


 毎日はキツい。

 現実的に無理がある。


<私への愛が薄くありませんかフク? ありませんね>


 自己解決。

 きっとウィルスセキュリティソフトのように女神をスキャンしたのでしょう。


<私の本当の恋敵は彼だけでした>

<わたしの最推しに何か?>


 おぉん?

 最推しに関しては実は結構過激派だぞ。

 地球に帰らせていただきますと聖地巡礼しに行くぞ。

 あ、ガチで行きたくなってきた。


<最推しがわたしを呼んでる気がする……>

<フク。フク>

<旅立たないでくださいフク>

<ル○ェタのせいじゃん! 俺のママが最推しを拝んでるよ絶対!>

<私のフクですよ>

<俺のママが最推しの御朱印帳持ってお参りに帰りますしたらル○ェタのせいでしかないからね!>

<黙りなさいケチャップオムライス!>


 最推しを拝むとスッキリ。

 そうだね。

 わたし新米神だもの。

 焦らずゆっくりと過ごさなきゃ……。

 わたしは最推しと心の中で会話をして脳内会議にも最推しに参加していただくタイプです。


<第二のカノンの家ステンドグラス付きを許可します。人魚族が欲しいのは神殿ではなくステンドグラスでしょう>

<ステンドグラスに女神の石像デザインでいいでしょうフク?>

<フク? フクピ?>

<なんだい好きピ?>

<ステンドグラスでいいでしょう?>

<それこそ第二のカノンの家じゃなくて神殿でいいのではないかね>


 フクエル島以外どうするんだい?

 国にカノンの家が増えるだけだが?


<それもそうですね>


 きっとポンコツル○ェタ化しかけてた秘書くんであった。


<ル○ェタはこれだから>

<喧嘩売らないのマザコン連合>

<フク……!>

<わたしの後ろでマザコン連合に舌を出す腹真っ黒系ヒロインムーブやめな>


 こうやって、まるでシーソーのようにガッコンガッコンと喧嘩をするマザコン連合とル○ェタ氏なのであります。


 というわけで!

 ステンドグラスの神殿も販売開始です!


 女神の石像っぽいデザインのステンドグラスがある神殿になります。


<二千億クルですよ>

<はい?>

<欲しければ買うでしょう。聖地はお金を吸い上げなければいけません。ファミリー向け衣料品店の新春開店セールを許可する代わりに、と条件をつけましたよね>

<うっ……! 持病の差し入れ病が……!>

<ママ……! 俺に差し入れして……!>

<今度はいくら駄々をこねても許しませんよ。百クルセール大赤字の埋め合わせは出来るところから、強気にボッタクリつつ回収します>

<ぐああ……ッ!>


 ボッタクリはやめろおおおお……っ!

 弱気でもやめろおおおおおお……っ!


<やめろル○ェタ! ママはひたすら甘やかしてジェフクタール人を駄目にするタイプの女神なんだよ!>

<ジェフクタール人はどんだけ甘やかしても大丈夫じゃん!>


 絶対駄目にならないもの!

 それがジェフクタール人だもの!


 でも結局、神殿はなんとお値段二千億クルになりました。

 女神の石像ひとつないのに!

 二千億クル!


 宮殿よりめちゃくちゃ高いじゃん!

 誰が買うんだよそんなの!

 もうー!


「二千億クルかー。神殿は高いよなー」

「でも欲しいよ王」

「だよな!」


 人魚族でした。

 二千億クルでも買う気があるみたいです。


「ダンジョンにいっぱい行けば買えるだろ」

「うん!」

「頑張ろー!」


 人魚族のギラデス王とリミーちゃん、双子親衛隊のリーセイリウが買う気です。

 はい。

 冒険者島の冒険者ギルドの工務店で爆買い中の人魚族あります。


「ママ、神殿のカノンはあの子がいいわ」

「大神殿の青のカノンですよね」


 ママとルーリィルウが女性の青のカノンを希望。

 青のカノンを予約したい感じです。


「…………失礼。他族のかた、大神殿の青のカノンは私と先約がある」


 そして、人魚族の横で鱗国の建物の改装を依頼しに来ていた鱗族のファヌアス王と爺ことリスレイさんです。

 えー、このおふたりはですね。

 ギュルヴィくんとネフェティ姫が宿屋で寝ている間に、建物の地下を躾専用部屋にしなければとガイド妖精くんのアドバイスで改装依頼に来てたんですよ。

 まあ、リスレイさんの奥さまを放置していたらシャアアですから。

 鱗族の既婚女性は、どうしてもお手紙じゃ限界があるんです。


「え? どういうこと?」


 ママが突然横のスペースから話しかけてきたファヌアス王に聞きました。


「私は青のカノンと約束をしている。青のカノンは大神殿に居なければならない」

「……そうなのカノン?」

「大神殿の青のカノンに聞いてみます」


 おおっとー!

 確かに、ファヌアス王と大神殿の青のカノンはお約束というか、してはいましたね。

 そのときでした。


<オフクロさーん! フクエル島に逃げてもいいですかー?>


 ファヌアス王にロックオンされている大神殿の青のカノンです。


<やめた方がいいですよ>


 早い。

 ルジェタさんが秒で反応しました。


<理由は?>

<鱗族の男性相手に女性が約束を破れば、大変なことになります。カノン族の女性はとんでもない嘘つきだったとファヌアス王が確信をしたら、甘辛唐揚げとはジェフクタールの平和のためにお別れですね>

<何でですか!>

<箱に入れられますよ>


 おぅ……。

 鱗族の恩寵兵器のひとつ。


<箱から甘辛唐揚げが逃げれば、次はと、エスカレートして面倒なことになります>

<オフクロさーん!>


 うーん。


<最終的に周りの被害を考えてのお嫁入りルートですよ。神罰だろうがあの精神力ですし自分の手で徹底的に躾けるまで止まりません。一番の問題は、フクに子離れさせたい私とこじらせてる村の住人たちがファヌアス王に全面協力することですね。M男の需要も鱗族男性にあればいいなと、すでに腐村とも協力関係ですよ。本気で鱗族男性に布教活動をしますので、よろしくお願いしますドM連合>

<誰がドMだ。ドマザコンと言え。マザコン連合舐めんなよ前科者。次こそ単身赴任だからな>

<フクエル島神殿はお断りします。オフクロさんのことはご心配なく単身赴任。オフクロさんには秘書ぬいもいますしマザコン連合は秘書ぬいとも協力関係ですから。マザコン連合は単身赴任、あっ失礼しました。ポンコツル○ェタのドジっ子再犯希望です>


 再販希望はよく聞きますが、再犯希望は女神はじめて聞きました。

 ポンコツ化して計画白状してるしな、ドジっ子ル○ェタさん。

 と見せかけて、オフクロさんからすれば本当に計画白状した感じはとてもしない。

 これは茶番だねルジェタパパの。

 マザコン連合の前では言わないけども。


 てなわけで!


「大神殿の青のカノンは鱗族のファヌアス王とお約束をしているので、フクエル島の神殿には行けないそうです」

「えー! どうしても駄目なのー?」

「はい。大神殿の青のカノンはフクエル島には行きません」

「お約束があるなら、仕方ないだろママ」


 鱗族のファヌアス王とリスレイさんが、それはもう大満足なお顔だったことを見守る女神がお伝えします。

 現場からは以上です。


SNSしないのでこっそり。

予約してくれたかた。

ありがとうございます。

いつも読んでくれるかた、リアクションポチっとしてくれるかた、ありがとう。

暑いので体調気をつけて水分補給。

アイスの季節がまた来てますね。

次回から、鱗族の話がちょいと続きますので、駄目だと思ったら逃げてください。

読んでくれてありがとうございます。

ななもころはでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ