第113話 不思議
「ケッケッケ! そんなんじゃ当たらないよーだっ!」
ピエロのゆるふわモンスター。
あっかんべー。
「こんの無礼者があああああッ!」
超チート種族の竜人族。
ブチ切れるの巻。
「やーい! 当ててみろ下手くそー!」
「ふ、ふふ……」
「セリィア」
セリィアは竜人族の巫女さん。
キアキノさんの番の女性、セノキアちゃんのお母さんのお名前です。
「この私のどこが下手だとッ!」
巫女セリィアさん。
お仕置き棒をブンッ! と振り回しますが。
スカッ!
「全部ー! ギャハハハ!」
くるくると空中で横回転するピエロのゆるふわモンスター。
竜人族。
なんか間違ってる気がします。
あと、煽り耐性がかなり低い。
「おのれええええッ!」
「このッこのッこのッ!」
「破壊してやる!」
「殺せえええええッ!」
竜人族の女性陣が。
「やはり懐かしいなキアキノ」
「そうだねファベル」
「昔はこうだったよね」
「こうだったなあ。ジェキりたかったよ」
竜人族の男性陣はブチ切れてる女性陣を見てうんうんと頷き懐かしがっています。
女神はこの男性陣の様子に違和感があってですね、練習ステージでの竜人族の様子をチラッとしたんですよ。
そうしたらですね。
ほぼ同じ光景でした。
ただ男性陣がナビくんに『記念にジェキれないかな?』とか聞いてました。
女性陣はブンブンパキューンと一生懸命なんですが、正直下手っぴです。
そういえば竜人族の女性陣は魔法もかなり大雑把に使う種族だったなと、女神は思い出しました。
男性陣の為に女神も撮影しておきましょう。オート撮影の方はそこまで狙って撮らないので。
「そろそろ教えるか」
「もう夕方だからねえ」
「俺はあの顔にひと目で惚れたんだよなあ」
「懐かしいよな」
女神はパシャリパシャリ。
男性陣がとても懐かしいと大変名残惜しそうなので動画も画像もたくさん撮りました。
女性陣、あとで怒らないといいな、ともちょっと思います。
ブチ切れてる姿なので。
後方で見学をしていた男性陣が動きます。
「ベルゼア」
「なんだファベル!」
苛ついている元女王さまです。
「こうすればいい」
ドガアァァッ!
ファベルさん。蹴りです。
「ギャアアァァァ――ッ!」
ドゴォォンッ!
蹴られたピエロのゆるふわモンスター。
凄い速度で大木にめり込みました。
ファンタジーダンジョンの大木などは破壊不可のオブジェクトのようなものなんですよ。
ヒビが入ったり、こうしてゆるふわモンスターがめり込んだりはしますが、細い枝でも折ったりは不可能です。
大木を折って武器のようにブンブン振り回されると困るので。
「ん?」
元女王さま。
ぽかんとしてます。
「我の蹴りでも本当に生きてるな」
ファベルさんが大木にめり込んでいるピエロのゆるふわモンスターを掴んで、元女王さまのところへ戻って来ました。
「ほらベルゼア。ターゲットはここだ。我が持っておくから殺すといい」
「ファベル……!」
「こんのー! はなせええええッ!」
ピエロのゆるふわモンスターはジタバタしていますが、ファベルさんの拘束は微動だにしません。
元女王さまはそんなファベルさんに惚れ直しているかのように、とても感動をしている乙女のお顔をしています。
「そなたはいつも我を助けてくれる」
「当然だろうベルゼア」
「ファベル……」
イチャイチャ。
「クソううううッ!」
暴れたくてもガッシリ捕まっているピエロのゆるふわモンスター。
ピエロのゆるふわモンスターはターゲットがお尻なのでまるで派手な米俵のように、土正座をしているようにファベルさんに捕まっていて余計に哀れな姿であります。
「ほらセリィア」
「キアキノ……」
どこもかしこも、こんなイチャイチャばかりの光景です。
ピエロのゆるふわモンスターの叫びがあたりに響いていますが、竜人族の親世代の皆さんはイチャイチャしてます。
竜人族は親世代が聖地に来てるんですよね。
「卑怯者ー! 下手くそのくせにー!」
「このッ! 私にまた減らず口を叩いて! キアキノ!」
ただ竜人族の巫女セリィアさんは、ちょっとキレやすいタイプなのかな?
「あーあ」
はあ、もう駄目だよ、とキアキノさんがピエロのゆるふわモンスターを……。
「アギャギャガガガッ」
「……あら? 何故でしょう?」
キアキノさんが、どーぞとばかりにゆるふわモンスターの顔をセリィアさんに向けたんですよ。
そうしたらですね。
セリィアさんがゆるふわモンスターのお口に両手を入れたんです。
スーパーの袋を広げるかのように、お口を上下にグイッと広げるかのように。
ただ、ゆるふわモンスターはターゲットを破壊しないと絶対に倒せないのでお口から引き裂いたり出来ないんですよ。
それに気づいての「……あら?」です。
「こっちも千切れないわ」
「ねえ! 折れもしないよ!」
「なんで? 首も引っこ抜けない」
えー……。
不思議、みたいです。
ゆるふわモンスターたちは「ギャアア!」とか「アガガガ!」とか断末魔のような悲鳴を上げているんですけどね。
「舌も抜けない」
「歯も折れないわ」
「腕も足も取れない」
「「「不思議ね」」」
実験なのかなんなのか。
「お! 目は潰れるぞ!」
竜人族の皆さんは満足するまで素手でいろいろと試してました。
目は視界を奪うという意味で、ゆるふわモンスターたちが強くなると必要なので素手でもダメージを与えられます。倒せはしませんが。
わかります?
このピエロのゆるふわモンスターたち。
チームで竜人族の前に現れてたんですよね。
それからどんどん仲間を呼んだんです。
一匹で行動している最弱のゆるふわモンスターたちは、あまりに足が速い竜人族に追いつけもしなかったんです。
「トドメだけは武器を使うといい」
「ふむ。こうして倒せばよいのだな」
「気づきませんでした」
あはは。うふふ。
気づかなくて、ちょっと恥ずかしい。
照れちゃう。
そんな雰囲気の女性陣。
女神にはよくわからない照れポイントなどでありました。
元女王さまたちはこうして、ベシベシ! パキューンパキューン! とゆるふわモンスターを退治したのです。
それから、竜人族の本領が発揮されました。
「ほらベルゼア」
「うむ!」
パキューンパキューンパキューンパキューンパキューンパキューンパキューン!
ポンッ!
「はい、セリィア」
「はい!」
ベシッ! ベシッ!
ポンッ!
倒し方はもうわかったとばかりに次々と昔ばなし系のゆるふわモンスターを退治。
そうしてとうとう現れました。
「トイレーット! ペエパアアアア! ダブウウルウウ!」
竜人族の皆さんは、チュートリアルも兼ねた初期ステージを抜けました。
初遭遇はトイレットペーパーダブル、二枚重ねのゆるふわモンスターです!
「おおお! あれはトイレットペーパーではないか!」
「あっちにも何かいるな」
「ミカンジュウウウウスウウウ!」
みかんジュースであります!
「キアキノ! みかんジュースですよ!」
「セノキアが喜ぶね!」
キャッキャ!
あきらかに竜人族の皆さんのテンションが上がっています。
「あっちはぶどうジュースよ!」
「皆、好きに狩れ!」
おう! とペアで行動を開始。
番同士がペアで別行動のようです。
いろんなゆるふわモンスターがいるので、団体行動よりもいいでしょうね。
「ターゲットは背中だベルゼア!」
「わかった!」
ファベルさんに蹴られてペーパーの道を作りながら転がっていく、トイレットペーパーのゆるふわモンスター。
元女王さまはなんとなく壊れそうで怖いという理由でお仕置き棒は使わず、ミラクル銃を使っています。
パキューンパキューン!
「おのれ!」
しかし命中率はあまりよくありません。
「我が持っておこう」
「すまんファベル」
パキューンパキューンパキューンパキューンパキューンパキューンパキューン!
ポンッ!
「やった! ファベル!」
こんな感じの命中率です。
「あははは! よくやったベルゼア! ここはとても楽しいな」
「ああ! この我がちっとも倒せぬ!」
おお。
なるほど。超チート種族ならでは、かも? な感想ですね。
女神メモしとこ。
そのときでした。
「行っくわよおおッ! おばあちゃん!」
「行けええええなっちゃん!」
大型バイク風のミラクル浮遊ボードにニケツしている、魔毒族のナディ奥さまと王のおばあちゃんです。
「ミカンジュウウウウスウウ、ウ?」
ドコーンッ! キキィーッ!
ナディ奥さま。
ミラクル浮遊ボードでゆるふわモンスターを普通に轢きました。からのドリフト。
「せりゃあああああッ!」
王のおばあちゃんの一撃。
ドオオオオオンッ!
ポンッ!
「あははははッ!」
「あははははッ! やったねなっちゃん! 次はミルクとシェイクを探すよ! この辺りはきっと飲み物だよ!」
「ええ! 子どもたちにミルク! わたしたちはバニラシェイクといちごシェイク! 行っくわよおおおおお!」
パラリラパラリラ。
お、おばあちゃん。
お仕置き棒の威力が凄い。
あれかなりカスタムしてるよ、絶対。
「……」
元女王さま。
普通にびっくり仰天だったの巻。
「ほ、本当に壊れぬようだな……」
「あ、ああ……」
そして王のおばあちゃんが全力でお仕置き棒を使っているさまを見て、納得。
でもまだ、ぽかんとしてます。
「私のお仕置き棒と随分違いませんでした?」
「違ったね……」
疑問。
自分のお仕置き棒を見て、不思議そうにしているセリィアさん。
キアキノさんはちょっと半笑いで、何あれ? という感じです。
「あれ何?」
「わかんない」
「なんだったんだ?」
「おーいベルゼアー! ファベルー!」
ざわざわ。
一度バラけた竜人族の皆さんが再び集まって来ています。
よっぽど衝撃だったっぽい。
ナディ奥さまのミラクル浮遊ボードは大型バイク風なので音も大きいんですよ。
ブォンブォンって。
あと王のおばあちゃんの絶対カスタムをしているお仕置き棒の攻撃音。
ベシッ、ではなくドオオオオオンッ! でしたから。
地面も凹んでましたのでね。
こういう凹みも時間経過で元どおりなんですけれども。
竜人族の皆さん、まるで事件の目撃者のようにざわざわとしています。




