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3 カイコ村

エデル王国にある自治村は1ヵ所のみ。その村はカイコ村といい、エデルの南側に位置しヒンヌ帝国との国境にもほど近い。

魔物が湧き出る沼とは離れている。

魔物はヒンヌ帝国から派遣されている部隊が担当しているためエデルからも村からも討伐隊は出ない。

エデルの馬の純血種はほとんどこの村出身の馬である。




✿カイコ村にて


倒れていた女の子が運び込まれた。村の長のアビーの家にとりあえず寝かせる。


「聖女......かな」

「いや、沼から離れすぎている。」

「討伐途中で逃げ出したのかもよ?」

「第一に討伐に参加する聖女ならエデル出身だからピンク紫色の髪の毛ではないだろう?エデルにはこの髪色はいない」

「んんん」


「ヒンヌ帝国から逃げてきたとかありえる?」

「ヒンヌ帝国との国境は壁があるだろう?出入口もほぼないから逃げては来られないだろうな。逆にこちらからも行けないだろう?」

「じゃネオセントの人間?」

「あちらの方が豊かだろうからなぁ、エデルに逃げてくる理由がわからん」

「貴族に無理やり嫁がされるのがイヤで逃げ出した?」

「んんん」


ハチワレとノーキンで何度も問答を繰り返す。謎しか残らない。この子は誰なのか。どこから来たのか。どこへ行こうとしたのか。


「だったらさ!」

ハチワレが立ち上がりながら大きな声を出した。そこへ村の長のアビー(♀︎)が水と布と着替えを持って来た。

「こら!ベッドの近くでごちゃごちゃしないの、うるさい!とりあえず体を拭くから男どもは出ていきな!」


「「はーい !!!」」



「ったく」

アビーは女の子の方に向き直る。

「こんなに汚れて傷だらけで可哀想にねぇ。髪の毛なんか血で毛束になってへばりついてるじゃないの」

アビーは涙を浮かべながら呟いた。

どんな理由があるにしろこんな年端もいかない女の子がこんな姿になるなんて。


ボロボロの服を脱がす。エデルでは見ないデザインだ。シンプルではあるがいい布を使っている。靴も品質がいい。足首まである靴?街中ではあまり履かないだろうに。山間部の出身なのだろうか?


頭の傷は深くなかった。だが強く打ったのか腫れがひどい。土埃やこびり付いた血を拭いてから消毒して冷やしてあげよう。

顔、肩、腕、足、内腿。

傷だらけだ。

内腿と膝には内出血もある。


「......まさか」

アビーはごめん、と言いながら太もものつけ根の内側部分を見た。

そこには内出血はない。乱暴されたのであれば抵抗してそこも内出血がひどいはずだ。


(よかった、これだけでもよかった、この子の心はまだ守られる)

また涙があふれる。


さ、体を拭いて手当てをして寝巻きを着せましょうと涙をぬぐっていたら遠くから女性の歌声が聴こえた。


「ミョン〜、今日はやめてって言ったのに!」

ま、でも歌うことがあいつの仕事なら仕方ないか、でも後で文句言わなきゃ!


しかし下手くそだ。いつになったら上達するのだろう。


「ほんと聴いてらんないわ。あの脳みそふわふわクリーム女の歌。」

アビーは下手くそな歌を聴きながら作業を済ませた。












(いた......い)


(あた...まが......いたい)





(歌が......聴こえ...る...)









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