個人戦決勝(佳奈美とカエデ)
翌日、個人戦決勝が始まり、早々に佳奈美とカエデがスタートしていった。
というのも、今回の予選カットラインは83。順位では72位タイまでが予選通過であり、前日のスコアーが82のカエデはギリギリで通ったようなものだ。
そのため、スタートはインコースの三組目。
昨日と同じような時間でのスタートとなった。
そして佳奈美は77というスコアーであったが、順位は33位タイ。
丁度真ん中あたりであったこともあり、まさかのアウトコーストップスタートだった。
おまけにこの組には菖蒲学園の榎本優花里がおり、彼女は二日続けての一組目となったのである。
「また、春乃坂学園と一緒……」
組み合わせ表を見た優花里がそう呟いていたが、悪い意味ではない。
相手は団体戦で争った高校であり、仲良くなった瑠利の先輩となれば、楽しみであったことだろう。
春乃坂学園の強さの秘密を探るべく、彼女は積極的なプレーをした。
そして佳奈美も菖蒲学園が相手ならと、気合を入れる。
初日のスコアーは、共に77だ。
自分たちが全国大会へ進む以上、ここは負けられないと集中力を高めていた。
その結果、どちらも譲らずにスコアーは76。
昨日よりも一打縮めたことでトータルは153(77・76)と、上出来だった。
まだ若い高校生とはいえ、ゴルフはスタミナを要する。
そのため、二日目はスコアーを落とす者が続出する中、一打縮めたことで順位もアップ。
二人は22位タイという結果で、この大会を終えた。
別れ際、「全国大会、頑張ってくださいね」と優花里が言えば、佳奈美も「ありがとう」と笑顔で答える。
そんな爽やかな一幕もあったようだ。
一方、インコース三組目のスタートとなったカエデは、相変わらず調子が良かった。
昨日はその調子の良さでスコアーを崩してしまっていたが、すでに調整は済んでいる。
『コースは、グリーン手前から攻める』
それが鉄則と自分に言い聞かせ、昨日同様パーを積み重ねていった。
「今日は絶対に気を抜かないから」
彼女の頭に浮かぶのは、昨日の嫌な思い出だ。
メンバー中、三人がアンダーでプレーを終え、佳奈美も77スコアーと上出来なスコアーだった。
けれど、彼女自身は……。
もし、自分が70台でプレーを終えていたら、優勝だってあったかもしれない。
そんな思いが強く、おまけに表彰台の壇上で見た風景は、自身の甘さを痛感させられた。
『このままではいけない』
そう思う気持ちは、彼女が一番強かっただろう。
それがいらんプレッシャーになっていないのは、彼女の性格ゆえである。
絶対に敵わないような強大な相手にも向かっていけるその性格は、瑠利相手に何度も勝負を挑む従弟の陸斗とよく似ていた。
その甲斐あって、カエデは二日目を78というスコアーでプレーを終える。
「あれ……」
と、終了後に本人が一番驚いていたのは、プレーに集中していた証拠であろう。
目の前の一打だけを考え、先を見なかったことが功を奏した。
結果、カエデのスコアーはトータル160(82・78)。
順位は35位タイまで盛り返すという、快挙となったのだ。
これは冬の大会で90以上を叩き、あっさり予選落ちしたことを考えれば、恐るべき大飛躍であったと言えるだろう。




