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ディボット跡

 同じ組でプレーする二人から、目指すべき高い目標と定められた瑠利。

 その彼女のショットは、後半戦も冴えわたっていた。


 まだ涼し気だった前半と違い、夏の暑い陽射しが降り注ぐ後半。

 スタートホールの10番、11番を簡単に(イージー)パーで通過した瑠利は、榎本優花里がコースなりに攻略した12番ホールで林越えを狙い、見事にフェアウェイをキープ。ピンまで残り60ヤードにつけると、正確なアプローチショットで寄せに成功。あっさりバーディーを奪うと、続く13番のロングも二打でグリーンの手前まで運び、ここも寄せワンを決めてのバーディー。


 勢いのままに次のホールへ進むが、ここで小さな不運に見舞われる。



 

 14番ホール・384ヤード・パー4。


 ここは、やや長めのミドル。

 問題があるとすれば、グリーンまで残り100ヤード地点に立つ、大きな松の木であろう。

 フェアウェイのド真中に立つその木は、ティーショット次第でグリーンを狙えなくするような、邪魔な存在だ。

 安全を期すなら松の木を避けたフェヤウェイを狙うしかないが、右ルートにしろ、左ルートにしろ、両サイドも狭くなっているので、安全地帯は非常に少ない。

 華彩秋良や榎本優花里くらいの飛距離であれば、二打目で松の木越えを狙う方法もあるが、その場合は150ヤード以上の距離が残ることになる。


「攻めるか、刻むか……」


 瑠利は1W(ドライバー)3W(スプーン)のどちらかで迷う。 

 ここまでの調子であれば1Wでも良さそうだが、ミスがあれば一打無駄になる。


「う~ん、どうしよう」


 今は個人戦を兼ねているといっても、団体戦の最中だ。

 無理をしてスコアーを落とせば、チームの順位に響くかもしれない。


 そう考えると、ここは安全に行くのが正解と判断した。


 瑠利の手には3W(スプーン)

 決めたからには迷いはない。


 方向重視で抑え気味に打ち、右ルートで松の木を避けるように飛んだ打球は、推定飛距離225ヤード。

 残りを159ヤードとする。


 続く華彩秋良と榎本優花里のティーショットは210ヤードほどで、残りは175ヤード前後の距離だ。 

 二人とも二打目はウッドでなければ届かず、前方は開いていたので松の木は避けられたが、やはり距離が長い。

 どちらもグリーン方向へは打って行けても、当たりは薄かった。

 結果、グリーン手前20ヤードのラフと、難しいアプローチが残る。

 

 そして、ティーショットを刻んだ瑠利の球は、まさかの不運に見舞われていた。

 

 そう、ディボットだ。

 

 ディボットとはショットの際に削れてしまった芝跡のことで、芝もなくラチと同じで打ちにくい。

 おまけに、これは今日できたものではないため目土が施されており、小さなバンカーのような状況だった。


「アンラッキーね」


 それを見た華彩秋良の言葉通り、これは刻んだからこその結果だ。

 普段通りのショットであれば捕まるはずのないディボットだったが、刻んだことで一般のお客さんたちと同じような飛距離になってしまったのである。


「けっこう難しいわよ、アレ」


「でも、ルリちゃんなら」


 そう心配する二人が見守る中、当の本人はというと、ちょっとだけ困っていた。


「これって、どうやって打つんだろう? 帰ったら師匠に聞かなきゃ」


 と、想定外の事態に戸惑いをみせるも「たぶん、クロスバンカーと同じでいいと思うけど」と、結論づける。

 そして気分転換にペットボトルの水を、ゴクッと一口。

 再度、方角と距離を確認すると、5アイアンを手に取った。


「グリップを短めにして、コンパクトにスイング。うん、こんな感じかな。あとはボールをやや右で構えて、トップ気味に打つと」

 

 そう何度か口にしながら素振りをし、構えに入る。

 このライからボールを上げることは不可能なので、狙うは松の木の右。 


 コンパクトスイングでトップ気味に打ち出された瑠利の第二打は、低空飛行を続け、100ヤードほどで落下。

 そこからランを稼ぎつつグリーンへ向かっていくが、僅かに届かなかった。


「上手く打ったわね」


 華彩秋良はそのショットを見て、感心したようすで瑠利に声を掛ける。

 グリーンまでは届かなかったが、内容自体は完璧だった。


「えへへ、打ち方がわかんなかったから、クロスバンカーと同じにしてみました」


「えっ……」


 けれど、秋良は瑠利のその返答に絶句。


「噓でしょう」


「まあ、ルリちゃんだし……」

 

 ただ、それも今更。

 これまでに驚き過ぎて、もう《《瑠利だから》》で片付けられる術を学びつつある二人であった。




 とはいえ、瑠利の後半戦でのトラブルと呼べるものは、これだけ。 

 このホールで華彩秋良と榎本優花里はスコアーを落とすも、彼女はパーで切り抜けた。


 そして続く15番ホールは315ヤードのパー4。

 距離は短いが、のこり100ヤード付近から急な打ち上げとなっていて、二打目が難しいホールだ。

 けれど、それを瑠利は豪快な一振りで傾斜の途中まで運び、バーディーは取れなかったものの、やすやすとパー。


 更には16番ホール・366ヤード・パー4。


 フェアウエイ右には大きな池があり、左にはバンカーという、ティーショットの落としどころが難しいホール。


 だが、ここでも瑠利は我関せずとばかりにフェアウェイをキープし、残り100ヤードを問題なくグリーンに乗せてのパーと、危なげないプレーを続けていく。


 ちなみに、ここでの華彩秋良はボギー。榎本優花里はパー。


 そうして迎えた17番ホール・165ヤード・パー3。


 ここは高低差30ヤードという強烈な打ち下ろしのショート。

 ピンポジはセンター右に切ってあり、傾斜は右から左であるため、乗せるならセンターが理想であろう。

 ただ、打ち下ろしをどれだけ読むかがカギだ。

 表示では165ヤードであっても、実質は140ヤード前後とみるのが正解。

 それから、警戒すべきは風の向き。平面と比べて滞空時間が長くなることで、僅かな風でも影響を受けるのだ。


「8番かな」


 そこで瑠利の選択したクラブは8アイアン。

 まともに打ったら大きいが、少し押さえて打つつもりなのだろう。

 というのも、お昼近くから若干の風が吹き始めており、ここは右から左への風。

 普段の高いドローボールでは押し負ける危険性があるため、低い球で攻めるのである。


 そうして放たれた瑠利の第一打は、風の影響など全く受けずにグリーンオン。

 ピン横5メートルと距離はあるが、バーディーチャンス。


 続く華彩秋良と榎本優花里は7アイアン。

 ただ、どちらも距離が合わず、風にも流され、グリーン右へ外した。


 結局、終わってみれば、瑠利はパー。

 そして華彩秋良と榎本優花里は、ここでもスコアーを落とした。  

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