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瑠利の帰宅

 練習後、軽くシャワーを浴びた瑠利が練習場へ戻ると、そこには両親の姿があった。


「ああ、ルリちゃん。丁度よかった。御両親が迎えに来ているよ」


「あ、はい……」


 ちょっと、驚いた。そんな感じで両親の姿を見た後、瑠利は少し離れたところで寂しそうにしている陸斗に気づく。


「リクトくん……」


「ルリ姉ちゃん、帰っちゃうの?」


 今にも泣き出しそうな顔で、そう尋ねる陸斗。

 ここまでの時間がとても楽しかったので、別れがつらくなってしまったのだ。


 ただ、それは瑠利も同じ気持ち。

 もっと時間はあると思っていたが、想像よりも両親の到着は早かった。


「うん、そうみたいね。もうお迎えが来ちゃったから。でも、また来週くるから、元気で待ってて」


「うん、わかった」


 陸斗は男の子らしく、涙をぬぐい顔を上げる。


 そして瑠利も、目に薄っすらと涙を浮かべながらも「またね」と一言。


「絶対だよ」


「うん、約束ね」


「じゃあ、待ってる」


 そうして、二人はお別れを済ませるのだった。




 一方、そんな二人の会話を眺める琢磨(瑠利の父)は、娘の成長を微笑ましく思う。


「たった一日で、すっかり仲良くなれたみたいですね」


「ええ、子供同士ですから、打ち解けるのも早いのでしょう。私も妻に先立たれて、息子には寂しい思いをさせてきましたから、ルリちゃんには感謝していますよ」


 互いに我が子を眺めながら、そう感慨深げに話す二人。


 一人っ子の瑠利は、ここでの様子とは違い、我儘に育ってきた。

 それなのに、立派なお姉ちゃんとして振舞っているのだから、その気持ちもわかるというもの。


「そうですか。迷惑を掛けていなければと心配していましたが、杞憂でしたかね」


「ええ、子供はいつの間にか成長しているものですからね。親離れを期待するよりも、まずは私たちが子離れをするべきかもしれませんよ」


「ははは、そうかもしれませんね。子育てとは、難しいものです」


 そう、琢磨と佳斗は語り合う。


 とかく、娘を持つ父親は心配しすぎるきらいがあるものの、それは琢磨とて同じこと。


「娘の見る目は、正しかった……か」


「え、何か言いました?」


「いえ、こちらの事です……」


 その彼の小さな呟きが佳斗に届くことはなかったが、この日を境に彼らの関係性も大きく変わる。

 もう一つ乗り気でなかった琢磨の態度も、今後は積極的に関わってくることになるのだ。


 そして、その様子を見ていた遥(瑠利の母)と美里もクスリと笑い、


「やっと、その気になったみたいね」


「ええ、もうこの流れは変えられませんもの」


「うふふ、神川先生には期待しているわ」


「はい、兄にはしっかりと伝えておきますね」


 と、頼りない男性陣とは違い、話は纏まっているようであった。

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