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和やかな時間

 前半の9ホールを終えて、カエデはクラブハウスへと戻ってきた。


 途中からリズムを崩したとはいえ、39スコアーは上出来だ。

 足取りも軽く鼻歌まじりの帰還であるが、それを待ち構えていたのは姉の詩穂だった。


「ふ~ん、ずいぶんゴキゲンね」


「あっ、お姉ちゃん。うふふ、まあね」


 姉に会っても、機嫌のよさは変わらない。

 これを見るに、余程いいスコアーだったんだと感じられ、詩穂も少し安堵する。


「その様子なら、いい結果だったのね。で、いくつで周ってきたの?」


「えっとね、39。滅多に出したことのない30台が、ここで出たの」


 いかにも、褒めて褒めてと言わんばかりのカエデであるが、詩穂はむしろ驚いた様子。


「すごいじゃない。まさか、あなたがそんなスコアーで上がってくるなんて、思ってもみなかったわ」


「え……酷いよ、お姉ちゃん」


「あ……ごめん。でも、よく頑張ったね」


「うん、途中で少し崩れちゃったけど、最後パーが取れてよかったよ」


 少し照れながらも、姉にそう説明するカエデ。


 まだ前半を終えたばかりであるが、自信はついた。

 佳斗おじに教えてもらってきたことを忘れずにできれば、十分に戦えると思える結果であったのだ。


 そうして姉妹仲良く歩いていると、インコースのスタート地点に向かう瑠利たちを見つける。

 同伴競技者二人と仲良く話している様子から、誤解が解けたのだろうと察せられた。


「へえ~、仲直りしたんだ」


 カエデはよくあの状態からと感心するが、姉に視線を向けると、なにやら理由を知っていそうだ。


「あ、あれね。実はさっき、鶴都の監督さんが華彩さんを連れて謝りに来たのよ」


「えっ、そうなの?」


「ええ、先に話を聞いていた監督さんが謝りに来ていたんだけど、本人を連れてもう一度だって。でも、彼女はルリちゃんに対抗意識を燃やして散々な結果になったみたいで、目を真っ赤に腫らしていたわね。あちらの監督さんも『いい勉強になっただろう』みたいなことを言っていたから、団体戦は最初から諦めているんでしょう。うちの顧問・章乃先生も『むしろ、ごめんなさい』って、 逆に謝っていたくらいだから問題ないわ。ルリちゃんもあんな感じだから、すぐに打ち解けてね。ああなっているってわけ」


「ふ~ん、そうなんだ」


 カエデは理由を聞いて、納得。

 華彩秋良の態度は問題であったが、同じようなことをしでかした過去を持つ彼女にとっては親近感のわく相手である。


「まあ、あなたの時とおんなじで、ルリちゃんは何とも思ていないのよ。むしろ面白い子だなって言ってたわよ」


「げっ、それだと私もそう思われてたってことよね」


「あ、うん、そうなるんじゃないかな」


「ううう、ルリのやつ……」


「はいはい、それはルリちゃんが悪いんじゃなくて、あなたのせいでしょう。はい、反省」


「ごめ~ん」


 そんな姉妹のやり取りを、楽しそうに眺める者たちがいた。


 もちろん、顧問の東矢章乃と、控えの一年生コンビ早嶋優良と西原紗英の二人。


「相変わらずね、二人は」


「う……、東矢先生」


「先輩は私たちから見ても、面白いですよ」


「うんうん、人気者」


「いや、それって絶対にバカにしてるわよね」


「「ぜんぜん、むしろ尊敬してます」」


「ちょっと、あんたたち、棒読み。それにハモってるし」



 そんな和やかなムードとなったカエデの休憩タイムだが、もちろんこの後、姉から瑠利のスコアーを聞かされ絶句したことは言うまでもない。


 もしかして、そんな差がないんじゃないかなくらいに思っていたカエデであるが、声に出さなくて良かったと、本気で思うのだった。

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