ワンオン狙い
2番ホール・338ヤード・パー4
ここは高低差約20ヤードの打ち下ろし。グリーンまではなだらかな下り傾斜が続き、飛距離の出る選手であれば、ワンオンを狙えるホールだ。
ただ、220ヤード地点左右には大きめのクロスバンカーがあり、越えるまでに250ヤードの飛距離を要する。
一般的な女子選手であれば厳しい距離で、間のフェアウェイ幅も20ヤードと狭く、華彩秋良と榎本優花里には難易度の高いホールとなっていた。
「追い風、1メートルくらいかな」
瑠利はティーの芝を少し摘み、風と方向を確認。
どうやら風向きは良好。
このコンデションであればワンオンのチャンスだ。
もちろん全力で振るなどしないが、飛距離は力だけで出せるものではない。
適切なヘッドスピードと、正確に芯を捉える技術。
それが合わさって、小柄な彼女でも飛距離を出せるのである。
瑠利は暫くグリーン方向を眺めたあと、己の意志を確認するかのように、声を出す。
「うん、これは、狙うしかないよね」
彼女の手には1W。
そして、二度三度と素振り。
イメージを確かめ、もう一度、方向を確認。
幸いにも、グリーンの正面は開いていた。
グリーン左のバンカーが正面三分の一くらいまで伸びているが、右はガラ空き。ドローで攻めれば距離も出て、よりチャンスは広がるはずだ。
瑠利はいつもと変わらぬルーティーンから構えに入り、思い切りよくスイング。
バシッと弾かれた打球は高く上がり、追い風にも乗ってぐんぐん伸びていき、グリーンまで届くかに見えた、が……急に失速。
高い打球だっただけにランも短く、グリーンまで20ヤードほどの地点でボールは止まった。
「あれ?」
瑠利は計算違いだと首を傾げる。
もう少し伸びると思っていただけに、この結果は残念だった。
追い風には球を落とす力もあるため、弱くなったところで失速したのだろう。
ただ、ティーからグリーンまで続く長い下り坂を見れば、他にやりようはあったはずだ。
彼女はフォロー風だけを計算に入れて打ったが、地形を利用すれば、もっと簡単に距離が稼げたのである。
「そっかー、もっと低い球でランを出せばよかったんだね」
と、ちょっと反省。
けど、済んだことを気にしていても、意味はない。
挑戦なら、また明日すればいい。
瑠利はグリーン方向を見つめ、頭を切り替える。
ワンオンはできなかったが、もうグリーンは目前だ。
昨日の練習ラウンドでも同じような位置から打っていたので、ここは連続バーディーのチャンスである。
「さてと、次は……」
もうティーショットは済んだので、次は榎本優花里の番。
瑠利はティーを離れ二人を見ると、どこか厳しい表情をしていた。
というのも、彼女たちは瑠利の打球を見て、唖然としていたのである。
ボールはグリーンの手前20ヤード。
だが、それは転がってではなく、ほぼキャリー(空中を飛んだ距離)の距離だ。
ここが打ち下ろしだったというのもあるが、その大飛球を見れば、彼女たちの心を折るには十分すぎた。
続く榎本優花里は右のバンカー。
そして華彩秋良は左のバンカーへ掴まり、結局はどちらも3オン2パットのボギー。
瑠利はアプローチを1メートルに寄せてのバーディーと、2連続バーディーを決めたのだった。
けれど、本当に圧巻だったのは4番ホール。
次の3番ホール・352ヤード・パー4を瑠利は無難にパーで通過し、迎えた4番・153ヤード・パー3。
ここはグリーン前に大きな池があり、景観の美しいホールだ。
ただ、グリーン面は横に長く、縦幅は25ヤードと狭い。
ピンはセンターにあるものの、手前グリーンエッジから12.5ヤードと、選手たちには池が大きなプレッシャーとなる。確実に池を越えるためには135ヤードの飛距離が必要で、警戒しすぎてオーバーさせてしまえばグリーン奥のバンカーへ吸い込まれるという難易度の高いホールだ。
そこで瑠利が手にしたクラブは8アイアン。
華彩秋良と榎本優花里はそれにピクリと反応したが、声には出さずにジッと結果を待つ。
瑠利は上空の風を見て、ピンを見る。
旗は全く揺れておらず、風はないようだ。
「よしっ」
一つ気合を入れて、ルーティーンの流れから構えに入る。
悩むことなんて、何もない。
ただ思い描いた球を打つだけだ。
いつものようにバシッと打ち込んだ球は番手通りに高く上がり、ピンへ一直線だ。
だが、少し大きめであるらしく、そのまま素通りするかに見えた。
ボールの落下地点はピン奥3メートル。そこから1,2回バウンドしたあと、鋭いバックスピンがかかり、ピン横50センチまで戻ってくる。
「ああ、惜しい」
あと、もうちょっとでホールインワンだったと瑠利は悔しがるが、それを目の当たりにした同伴競技者二人の反応は……。
「す、すごい」
榎本優花里は素直に感動したらしく、その打球に見入っていた。
そして華彩秋良も、どうやら同じような反応だ。
「な、なによ。あんなの、もうプロと同じじゃない」
と、ようやく実力の差を認めたのである。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。
一つ補足事項がありまして、それは選手たちのユニフォーム。
全く描写がありませんでした(たぶん……どっかで書いた気もするけど、それでしたらごめんなさい)
ということで、春乃坂学園の試合用ユニフォームは、白地の半袖ポロシャツに、背中にはピンク色で春乃坂学園の文字が書かれています。
そして下は、こちらも白のショートパンツ。
白とピンクで春っぽい雰囲気だと思います。
一方、ライバル校の竜峰学園は白のパンツに深緑色の半袖ポロシャツをイメージしました。
色合わせのセンスがないので、ちょっと心配です。
あと今戦っている鶴都学園は白の半袖ポロシャツに、赤のショートパンツ。
菖蒲学園は紫の半袖ポロシャツに白のショートパンツで、どうでしょう。
この後に描写が出てくる予定は無いのですが、念のためということで。




