父と子と
ゴールデンウィークも後半に入り、留守にしていた佳斗が戻ってきた。
先週の大内雄介プロの成績は32位タイ。
ツアーの初戦を欠場。二戦目からの出場となった彼にとっては、これが初戦である。
昨年の最終戦以来、約5か月ぶりの実践であるだけに、その結果は覚悟の上であろう。
予選を通っただけで十分、まずまずの成績だった。
というのも、一年を通して長丁場となるツアー競技で、常に上位争いなど出来るはずもない。
徐々に調子を整え、狙いを定めたコースで結果を出す。
それが彼の戦い方なのである。
今週は欠場。
そして来週こそが勝負であった。
☆
「おかえり~」
練習場の受付にいる陸斗が、帰ってきた父を見つけた。
「ただいま、元気にしてたか?」
「うん、いつもより忙しかったから、いっぱいお手伝いしたよ」
そう答える陸斗は、どこか得意気であり、それでいてとても嬉しそうだ。
「そうか、ありがとな」
「いいよ、いいよ。でも、また出ちゃうんでしょう?」
それは不意に襲ってきた不安。でも仕事なら仕方がないと、割り切ってもいた。
「そうだね。今週はゆっくりできるけど、また来週はね」
「わかった。お父さん、頑張ってね」
「ありがとう」
そんな微笑ましい父と子の会話。
陸斗は純粋に、真っすぐに育っていた。
この環境でよくぞ、とも思えるが、それは周りにいる身内の者たちの努力の賜物であろう。
一歩間違えば、ひねくれていてもおかしくない状況なだけに、これは素晴らしいことだった。
美里を始め、詩穂やカエデ、咲緒里が常に幼い従弟を気にかけ、大切に守ってきたからこそであり、そこは佳斗も感謝するところだ。
「あっ、お仕事しなきゃ」
そう言って立ち去る陸斗と入れ替わるように、美里が事務室から出てくる。
「リッくんは、いい子ね」
「ははは、それはみんなのおかげだよ。私一人では、こうはいかなかったからね」
「うふふ、それはそうよ。みんなリッくんが大好きだもの。大切に愛情を注いでいれば、いい子に育つものよ」
「そうだね、ありがとう」
「どういたしまして」
そう話す通り、実質、杏沙が亡くなってからは、美里が母親代わり。
従姉たちも、本当の姉のように接し、寂しさを紛らわせてきた。
けれど……、実際の陸斗は、すごく我慢をしていた。
もちろん、うちに帰れば誰かしらいる。
それは嬉しいことで、可愛がってくれる常連のお客さんでもそうだ。
ただ、夜になれば、一人きり。
父は営業終了まで受付で待機。その後も事務仕事で、寝るのは遅くなってから。
夕食を食べるのも、テレビを見るのも、お風呂に入るのも、この三年間はずっと一人だった。
『でも、お父さんが頑張っているから、僕も頑張らなきゃいけない』
その思いで、ずっと我慢していたのである。
男の子は父の背を見て育つもの。
やはり、重要なのは佳斗の存在なのであった。




