春乃坂ゴルフクラブ④
2番ホール・155ヤード・パー3。
ここはティーグランドからグリーンに向かって3メートルほどの打ち上げで、ガードバンカーは右に一つというホールだ。
そしてグリーンの形状は縦に長く、横に短い。
手前から奥まで42ヤード、左右の幅は20ヤードと極端に狭く、右のガードバンカーにつかまった場合、グリーンへ乗せるためには僅か20メートルの幅にしか打てない難しいショットとなる。
ホームラン(ガードバンカーで直打ちして、まともにボールが飛んでしまうこと)一発で、即アウト。
そんな危険を孕んだホールであるが、グリーン正面は開いているので、比較的狙いやすいホールと言えよう。
そこへ、四人がカートで移動してきた。
このホールでの打順は、前のホールでのスコアーが少ない順だ。
1番ホールでバーディーを奪った城野真理香が最初、次に涼花、里桜、瑠利の順で、先程と全く同じである。
プロたち三人は、練習であっても世間話をしながらのお気楽なラウンド。
けれど、さっそく前のホールで出遅れた瑠利は少し違う。
1番ホールを終えたことで余裕ができ、視野も広くなっていた。
先程のミスの理由は、ガードバンカーを怖れて、番手を一つ上げてしまった事。
ゴルフの基本は手前からであり、奥へつけてはダメなのだ。
そう考えれば、やるべきことは一つ。
たとえグリーンに乗らなくても、ボールを手前に止めることが重要なのである。
「よしっ」
と、瑠利は一つ気合を入れた。
このホールもピンポジションは、グリーンのフロントエッジ(手前の縁)から10ヤードほどと、かなり前だ。
ティーマーク横のヤード看板には155ヤードと表示されていても、これはグリーンセンターまでの距離で、実質の距離はピンが前にあるぶん差し引かれ、145ヤードほどであろう。
であれば、上りを考慮しても7アイアンで充分届く距離だ。
瑠利は迷わず7アイアンを手に取り、番手通りに打つと決めていた。
そんな心構えでプロたちのショットを眺めていると、三人とも8アイアンで完璧な球を打つ。
ティーグランドからグリーン面は見えないが、たぶん寄っているのだろうと想像はできた。
「凄い」
それが瑠利の、素直な感想だ。
テレビで見ていてもわからなかったが、目の前で直に体験すると、その凄さは際立っている。
当然のことのようにピンへ絡んでくるショット力は、今の瑠利には無いものである。
「これがプロか……」
まだ、たったの二ホール目ではあったが、瑠利はそのレベルの違いに気づいてしまった。
アマチュアが必死になってパーを取るのに対し、プロは息をするようにバーディを取る。
焦りなんて必要ない。18ホールすべてがバーディチャンスなのだから。
そこに早くも気づいた瑠利は流石であるが、いかんせんまだまだ実力不足。
真似しようたって、一朝一夕で出来ることではないのだ。
長い修練の賜物なのだから、いまの瑠利には無理なのである。
とはいえ、そこで諦めたら終わりであった。
むしろ、こんな機会を与えてくれたプロたちに、彼女は感謝していた。
あの後ろ姿こそ、今後の瑠利が目指すべき姿であり、目標となるのだ。
「ありがとうございます」
「なによ、急に?」
「ルリっちが変」
「マリカさんも、リオも、ルリちゃんに失礼よ。この子、鋭いから、もう気づいたみたいね」
「へへへ」
そうして、ヘニャっと笑った瑠利は、集中力を高めてボールを打つ。
その球は低い角度で飛び出し、3バウンドして転がり、グリーンへ乗った。
「おおっ」
「やるわね」
「ナイスゥ」
それが里桜、真理香、涼花の反応だ。
結局、ここはグリーンが難しかったこともあって、四人ともにパー。
次のホールへと進むのであった。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。
ゴルフ用語全ての解説は無謀すぎるので選びながらですが、最初にこれを済ませておけば後が楽です。
そう信じて補足をしているのですが、その結果、読みにくく感じられているもしれませんが、ご容赦を。




